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-92- 手動と自動

 暮らしも日々、便利になり、大よそのことは機械化された時代である。たとえば農耕のうこうだが、昭和30年代は後部にY字形のすきをつけた牛が人に急かされるように追われて田畑をたがやしていたのである。耕運機という自動で耕す機械がなかった時代だから、それも必然だったのだろうが、今の時代は便利さが異常なほど多様化して人がずぼら[ルーズ]馴れしてしまい、非常になげかわしい。

 駅前の喫茶店でコーヒーをすすりながら、二人の老人が四方山話よもやまばなしに花を咲かせている。

「どうも最近は、いけませんなぁ~。ええ! いけませんいけません!!」

「なにが、そんなにいけないんですかな?」

「ええ、よくぞ聞いて下さいましたっ! 世の中、すべて自動ですぞっ!」

「ええ、そうです。昔にくらべりゃ、随分ずいぶんと便利になりました…。それが、いけませんかなっ?」

「ええ! いけませんいけませんっ! 便利はいいんですが、どうも便利になり過ぎましたっ!」

「便利になり過ぎた・・とは?」

「手動で出来ることでも自動ですぞっ!」

「ほう! 例えばっ?」

「例えば…そうですな。今朝、私がやっておりましたくさ取りです」

「草取り? …除草ですかなっ?」

「ええ、そうですっ! 私の場合、根から手動でやっつけ、ビ二ール袋ですっ!」

「…ビ二ール袋?」

「はい、中へっ! 数ヶ月で土にもどります…」

「なるほどっ! さしずめ、あたたかい料理ですなっ!」

「…温かい料理?」

「はいっ! 温かい料理! 温かくて美味うまい料理ですなっ! ひとあじ違いますっ!」

「よくぞ言って下さいましたっ! 手動ですなっ!」

「そう! 手動っ! 手間てまをかけたぶん、いい味になりますっ! ははは…」

「ははは…」

 そんな話をしながら、二人は三十分後、自動の列車に乗り、旅立った。^^


                   完

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