-90- いよいよっ!
楽しみにしている人にとって、コトが刻々(こくこく)と迫ってきたとき、いよいよっ! とウキウキするものだ。私はウキウキなどしないっ! と思われる方も、そこはそれ、我慢をしてお聞きいただきたい。
いよいよっ! と感じる期待感の度合いは当然のことながら人によって異なる。ある人は心臓の鼓動が早くなり、ウキウキして手に汗握ることだろう。ところが、そうでもない人の場合、まったく平常時と変わらず、あっ、来たか…くらいの軽さで出された料理を食べるに違いない。この違いを個人差だ! と、ひと言で片づけてしまえばそれまでだが、いよいよっ! という場面が暮らしの中で心に期待感を抱かせるのは事実だろう。
とある二人の男が鰻の専門店へ入った。
「あっ! 定食…」
片方の男が先に口走った。もう一人の男は単品で鰻重を注文しようと思っていたから、出鼻を挫かれた格好だ。自分が知っている店に誘って入ったのだから、面子が潰れた・・という気まずさも残る。
そして、しばらく時が流れた。いよいよっ! と期待して待っていたもう一人の男にとって、出された鰻重は定食のため時間がかかったのか冷めたく、余り美味しく感じられなかった。もう一人の男は、鰻重は単品にかぎるなっ! と、改めて思った。
いよいよっ! という鰻重の期待感は、単品にかぎるっ! ・・というニョロついた鰻のお話である。^^
完




