表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/100

-89- 品種(ひんしゅ)

 暮らしの中で、物にはほかと区別するため、すべてに名が付けられている。動物は無論のことで、植物もまたしかりである。品種ひんしゅと呼ばれ、便宜上べんぎじょう、グループで区分けされている。生物以外の単なる物にも種類別に詳細しょうさいな名前が付けられており、入手しやすくなっている。意味的には同じで、品種といえば品種だ。^^

 春遅はるおそい候である。とある園芸店の店先みせさきで、老いた冬服姿の紳士が立ち止まり、展示てんじされた花鉢はなばちをシゲシゲと見ている。

「どうです! 綺麗きれいに咲いてるでしょ! ひと鉢、どうですっ!?}

 如雨露じょうろを片手に持ち、水遣みずやりに店内から出てきた店主が、元気よく紳士に声をかけた。

「ああ、どうも…。この花は、なんという品種です?」

「ああ! これはチョウゲですっ!」

「? …チョウゲ? どう書くんです?」

「えっ? ああ、それは…どうでしたかね、ははは…」

 店主は分からず、笑ってぼかした。

「品種はダンチョウゲとか聞きました。三日ほど前、入荷にゅうかしたんですよっ! うちの家内かないならくわしいことを知ってると思うんですが…。奥にいるんで、呼びましょうか?」

「いや、結構です…。いやぁ~、それにしても、この白い小花がなんともいきですなっ!」

「ですよねっ!」

 店主は別にどうも感じていなかったが、客あしらいとして話を合わせた。店主は別のことを考えていた。この暑いのに、冬服とはっ! この紳士、どういう品種なんだろう…と。もちろん、そんな失礼なことを口に出来ないから、思うにとどめて、である。たが、ついに、暑さのせいで本音ほんねが出た。

「今日はしますなぁ~!」

 店主はひたいき出した汗を手拭てぬぐいで拭いながら、つぶやくようにらした。

「そうですか? 私は、さほど…」

 それを聞いた店主は、この冷性ひえしょうの紳士、どういう品種なんだろう・? と、益々(ますます)、知りたくなった。

「あの…日本の方ですよねっ?」

「はい、もちろん!」

「…暑くないんですかっ?」

「ああ! この服ですかっ。ははは…、ほらっ!」

 紳士は背広の裏を垣間かいま見せた。背広服の裏には、保冷剤がビッシリと張り詰められていた。

「ああ…」

 店主は、なんだ、ただの同じ品種か…とばちに思った。


                   完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ