-86- 単調(たんちょう)
また、これかっ! と、食事どきの出された惣菜に怒られるご主人もおありなのだろうが、日々の暮らしの中で同じように繰り返される単調なリズムというのは大事なのだ。その平和なサイクルの有難さを、ほとんどの人は気づいていないか、気づいていたとしても、ついつい忘れがちとなり、愚痴るのである。むろん、個人的な悪い癖や生活習慣病・・などという繰り返しは、単調な、いいリズムとは言えないが…。
とある夜間の大学構内である。まだ講義が始まっていないのか、長机が並ぶ講義室内は、勤めに疲れながらも講義を受けようとする二部の学生達でざわついている。ざわつける余力の存在は、若さの所以だ。
「あいつ、また食ってるなぁ~」
「だな…。今日もカップ麺か」
「…蟹崎かっ! ははは…それも同じ机の同じ場所で、だっ!」
「生協食堂で湯を入れて、それでご到着だっ! 飽きもせず、単調だな、あいつ…。明日、先に座ってやれば、どうするだろうなっ?」
悪さを思いついた猿野は、硬柿と投下を意地悪っぼく見ながらそう言った。
「発想がお前らしいっ! 猿野。俺は遠慮しとく…」
「俺も、そういうのは…」
硬柿と投下は、はっきりと辞退した。
「そうかぁ~? 別に悪さをする訳じゃないんだが…。んじゃ、俺がワルになるかっ、ははは…」
次の日の夕方、早めに講義室へ入った猿野は、いつも蟹崎が座る席で講義が始まるのを待った。そして、一時間が経過した頃、学生達が講義に集まりだした。蟹崎も当然、入ってきたが、いつもの席に猿野が座っているのを見て一瞬、躊躇した。が、しかし、次の瞬間、ひと息、大きな深呼吸をすると、席の後部フロアへ、ドッペリと臼のように胡坐をかいて座った。その表情は何事も無かったかのように、である。罰が悪いのは悪さを思いついて座った猿野だ。なにせ、自分の後部下には蟹野が座ってアンパンを頬張っているのである。
「…よ、よかったら」
いつの間にか、悪びれた猿野は蟹崎に弱い声で席を譲っていた。ナントカ合戦の終結である。^^
単調ないい繰り返しは、やがて実を結ぶ訳だ。^^
完




