-84- もう一息(ひといき)
諸事をしていると、つい時間が経つのを忘れてしまい、昼食、夕食になるとか、他の用事をしなければならないことがある。そのやっている事が、もう一息という場合、続けるべきか、ひとまず止めるべきか…で、囲碁のプロ棋士がよく大盤解説されるときに語られる ^^ 悩ましい・・ことになる。一端止められればいいのだが、後ろ髪を引かれる思いになるのは、そのあと何をしたとしても気も漫ろとなり、実に悩ましいのだ。職人さんの場合は、その仕事全体の完成が一つの切り・・となるから、細かなもう一息は軽くなる。ところが個人の場合は、その小事だけだから、ついつい意固地となり、始末が悪い。
とある家庭の昼前の光景である。日曜ということもあり、DIY[do it yourself の略で、自分自身でやること→特に、日曜大工を指すようだ]を朝から庭先で始めた主人は試行錯誤を繰り返しながら、ようやく完成に近づけていた。
「あなたっ! もう、お昼よっ!!」
そこへ、かけなくてもいいのにキッチンから大声をかけたのが妻である。妻は何も主人のDIYを邪魔しようと声をかけた訳ではなかったが、結果的にそうなってしまったのだ。
「ああっ!! もう少しだからっ!」
「ピラフが冷めてしまうわよっ!!」
「ああ、分かった分かった!」
主人が分かった分かった・・と繰り返したのがいけなかった。
「なによっ! 分かった分かったって!! いいなら、私が二人前、食べてしまうからっ!」
予想外の妻の反発である。もう一息・・というところまで完成していたDIYの大石は、エイッ! とばかりに、妻に切断されてしまった。主人は悩ましい立場に立たされた訳だ。これ以上、豚のように太られては堪らん…という気分も少しあったことも事実なのだが…。^^
「すまん、すまんっ!」
後ろ髪を引かれる思いで完成間近のDIYを見ながら主人は庭から消えていった。
もう一息は後ろ髪を引かれ、禿やすくなるのである。^^
完




