-81- 人はどこから来てどこへ行く
ゴーギャンという世界的に名が知られた画家がいる。その作品の中の一枚に、人の存在性を問うような意味深なタイトルの絵画がある。長いから掻い摘んで端折れば、人はどこから来てどこへ行くのか・・といったようなタイトルだ。確かに、人は生まれる前も知らず、死んだあとも知らないまま、否応なく生き、日々を暮らし続けているのである。
夕暮れどき、疲れきって電車に座って家路につく、二人のサラリーマンの会話である。
「先輩、毎日がほんとに嫌になりますねぇ~」
「だな…。帰りの一杯がなけりゃ、やってられん御時世だっ!」
「家の父が言ってましたっ!」
「なんてっ?」
「『人はどこから来てどこへ行くんだろうな』って…」
「確かに…。俺達、どこへ行くんだろうなっ!」
「来たときも知りませんが…」
「ああ…。さっき出た芋の煮っ転がしが、どうしてああ美味いのか? に似た話だ…」
「はあ…」
後輩は、それは少し違うじゃないか…と思ったが、口には出さず、思うに留めた。
「高くなったしなっ!」
「そういやあの店、量も減りましたねぇ~」
「あの芋、どこから来てどこへ行くんだろうなっ!」
「ははは…それは分かってますよ、先輩! 市場から来て、私らのココですっ!」
後輩は背広の腹を指でさし示した。そのとき、電車の車内アナウンスが流れた。
『次はぁ~~竹串ぃ~~。手羽崎線は乗換えとなりますすぅ~~』
聞いた二人は、どこから来てどこへ行くのか・・という当初の話題をすっかり忘れ、焼き鳥も美味いな…と単純に思った。
完




