-80- 冷却(れいきゃく)
暮らしがマンネリ化すると、自然と、とんでもない個人の我侭が噴き出すことになる。その我侭を自制出来るうちはいいのだが、マンネリ化すると適度な緊張感が消え、その我侭をとめることが出来なくなる。すると、どうなるか? 懸命な皆さんなら、よくお分かりのはずである。口に出せば、当然ながら相手の聴覚がその我侭を聞くことになる訳だ。相手にすれば、そんな他人の我侭など聞きたくもない訳で、場合によっては反発されたりして拗れることにもなる。だが一端、拗れて双方が熱くなれば、放っておくことで加熱して喧嘩になる可能性もあり、非常に危うい。この事態を食い止める手段が冷却なのである。冷却といっても、何も温度を下げて冷す・・ということだけではない。冷静になる・・という場合でも使われる言葉だ。
マンネリ化した、とある熟年夫婦の会話である。
「朝には出しといてくれ! と言ったろっ!!」
「あら、そうだった?」
「ったくっ! 俺の話をちゃんと聞いてろっ!」
顔を洗ったばかりの夫は、朝からご立腹である。その怒り具合は、恰も薄くなった頭頂部から湯気が立ち上る感がしないでもない。
「そこまで言うこと、ないでしょ! 頭を冷しなさいよっ!」
「やかましいっ! 冷すのは、お前だっ!!」
そのとき、どういう訳か火災警報器が作動し、天井に設置されたスプリンクラーから噴霧上の水の放水が始まった。ビショ濡れの二人は右往左往して慌てた。そして、口喧嘩のことなどすっかり忘れてしまった。双方、頭を水で冷され、冷却されたのである。
マンネリ化した暮らしの中では、冷却が重要な部分を占めることになる。^^
完




