-79- 暇(ひま)な人
暮らしの中では幾らでも時間が欲しい小忙しい人と、欠伸をしながらボケェ~~として時間を持て余すような暇な人に分かれる。世の中の多くの人は、程度の差こそあれ、ほぼその中ほどを生きている訳だが、完全な右派、左派がいる事実は否定できないだろう。
一人の老人が、することもなく、とある公園のベンチに座り、寛いでいる。それはなにもこの日に限ったことではなく、生活習慣病のように雨の日も風の日も決まった時刻に決まったベンチ・・というのだから、これはもう、表彰物以外の何物でもない。
「おおっ! 今日もやはり、おられましたなっ!」
散歩で通りかかったもう一人の老人が立ち止まり、ベンチの老人に声をかけた。
「はぁ?! ああ、まあ…。日課というよりは、もう、癖ですなっ! ははは…お笑い下さいっ!」
「ご一緒しても構いませんかな?」
「ああ、どうぞどうぞ…」
常連の老人はベンチを少し横へ移動して座り直した。
「お互い、暇ですなぁ~」
通りかかった老人が話題を投げた。ズシッ! とキャッチャーミットが音を出す重くて速い直球である。
「ああ! そうですなぁ~! 暇で暇で…。家じゃ息子の嫁に煙たがられますからなぁ~、ははは…」
常連の老人が内情を吐露し、球を投げ返す。
「確かに…。家もそうです。暇な人は辛いですなぁ~~! 実に辛いっ!」
通りかかった老人は、また重い剛速球を常連の老人のキャッチャーミットへ投げる。言っておくが、むろん、心のグラブへ・・である。
「ご趣味はっ?」
常連の老人は手馴れた仕草でミットへ収まった球を投げ返す。
「ははは…あれば、こんなところ・・いや、失礼! 今時分、来ませんよっ!」
通りかかった老人は、やや受け答えに困り、球の速度を落とす。その球はストンッ! くらいの遅めの速度で、常連の老人のミットへと収まる。
「私もです…。どうです? これから鳥の声が何種類だったか調べる・・というのはっ?」
「ほう! この公園のですかっ?! 面白そうですなっ! 日本野鳥の会のようで…」
「ははは…そんな、いいものではありません。暇な人の会・・くらいですかなっ!」
暇な人は、暇なことを思いつくのである。^^
完




