-68- 糸車(いとぐるま)
電子ゲーム機器で遊べるようになった今日では、[糸車]で遊ぶ・・などと言えば、子供達に、? と訝しがられるか小馬鹿にされるのが落ちだが、売られた遊び道具がなかった時代は、それぞれ工夫して遊び道具を作っていたのである。五寸釘があれば土に突き刺し、[線切り]という遊びが出来た。空き缶があれば[缶蹴り]、石ころ一つあれば土の上へ線を引き[ケンパ]、女子竹を切って[吹き玉・杉の実鉄砲]、竹で[紙鉄砲]・[竹馬]、自転車の車輪があれば転がして[シャーリング]となる。輪ゴムがあれば[ゴム飛び]だが、[糸車]もその輪ゴムを使った遊びの一つだ。市販の糸巻の糸が使われて無くなれば、あとには巻かれていた木製あるいは強化プラスチック製の小物が残る。それに輪ゴム、ボタン、割り箸などで作るのが[糸車]である。
朝から月川は、あ~でもない、こ~でもない…と、輪ゴム、割り箸を弄くっていた。ふと、遠い昔を思い出し、[糸車]を作ってみようと思い立ったからである。というのも、市販の糸が巻かれていた使用後の小物があったからだ。輪ゴムは多くあったから、容易に作れそうに思えた。月川は最初、輪ゴムを小物へ通し、マッチ棒を両側へ付けて転がしてみた。
「? 妙だなぁ~~」
[糸車]は少しも動く気配を見せなかった。そして、月川の壮絶な格闘が始まったのである。
「簡単なようで…」
月川は独りごちた。コトは実に簡単だ…と思えたが、それは甘く、なかなか侮れなかったのである。恰も、関ヶ原の戦いで上田攻めに手古摺り、とうとう関ヶ原には間に合わなかった史実とよく似通っていた。
その後、どうなったのか? むろん、転がるようになった・・とだけは言っておきたい。これも、歴史ずきのお方ならよくご存知の、大津城・謁見が叶った史実に似通っている。読者諸氏は当然、お知りになりたいだろうから、詳細を掻い摘んで申し添えれぱ、ボタン、割り箸がバレーボールの選手のように交代して付けられた・・とだけご報告させて戴きたい。^^
完




