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-49- 文明

 文明が進めば私達の暮らしが快適になるのか? といえば、必ずしもそうではない。むしろ、暮らしにくくなり、以前のあの頃がよかった…と振り返る日々(ひび)が多くなったりする。文明を進めているのは人類だが、地球に息づく他のすべての生物は、ちっとも文明を進めて欲しい・・などとは思っていないはずだ。絶滅種ぜつめつしゅ、絶滅 危惧きぐ種が増えることは彼らにとっていい迷惑! を通り越し、もはや、人類は敵! なのである。文明の進歩は地球生物の現状維持が担保たんぽされたものではならない訳だ。

 社員総数が50名ばかりのとある小さな会社の昼食時間である。課長の薄蕪うすかぶはいつも妻が入れてくれる愛妻弁当のふたけ、いぶかしげにつぶやいた。

「おやっ!? いつものブロッコリーが入っていない…」

「どうされました、課長?」

 間髪かんぱつ入れず、次期、課長代理補佐の昇進がかかった係長の庵沢あんたくが、ご機嫌きげん取りのひと声をかけ、係長席から振り向いた。課長代理補佐は課長代理の下の役職で、その課長代理の上にはもう一つ副課長というポストが職偕制としてかれていた。

「いや、私の好物こうぶつのブロッコリーがね…」

「えっ? ブロッコリー…ですかっ?」

「ああ、ブロッコリー。いつも入れてくれてんだが…。なかったのかな?」

「お好きなら、家庭菜園のプランターでお作りになればいかがですか?」

「ああ、そうだな。そうしよう! 買えば済むという文明には、何か落とし穴があるなっ!」

「はい、確かにそうですね…」

 そのとき、薄蕪の携帯が鳴った。

「んっ? ああ…。あっ! そうだったかっ! いや、うっかりしたよっ! 道理どうりででかい弁当箱だと思ったんだ、ははは…」

 薄蕪は悪びれて携帯を切った。

「課長、いかがされましたっ?」

「私としたことが間違えたよ、ははは…。息子の弁当箱だった」

「ははは…」

 二人は一笑いっしょうした。

 文明は時折り、間違いを与えるようだ。^^


                   完

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