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-46- 家庭冷却化

 近年、地球温暖化の話題が、マスコミでよく取り沙汰ざたされている。温室効果ガスなどで少しずつ地球の気温が上昇している・・という現象らしいが、こうした現象は家庭内でもよく起こっているのである。ただ、家庭の場合は真逆まぎゃくで、次第に冷却化していく・・という性質のものである。正確に言えば、家庭冷却化と呼ばれる悲しげな現象だ。

 初老にさしかかった、とある中年夫婦の会話である。

「こんなんじゃなかったろっ!!」

「なにがよっ!!」

「着替えがなかったら、以前はちゃんと買ってたじゃないかっ!」

「仕方ないでしょ! 以前は以前! 今は年金暮らしなんだから、始末しなくっちゃ!! 家のローンも、まだ10年も残ってんのよっ!」

「それは分かってるさっ! 分かってるけど、これは、いくらなんでも…」

 主人は妻にほころびのがれた下着を突きつけながら愚痴ぐちった。

「私だって我慢がまんしてんだから、それくらい我慢してよっ!」

「下着ぐらい、そんなにしないだろうがっ!」

「ローンの支払いが終わるまでよっ!」

「ほんとかっ!」

「ほんとよっ!」

 どういう訳か、部屋の温度は1℃ばかり下がっていた。家庭冷却化の現象である。以前から、その予兆よちょうは見られたが、息子と娘が結婚して都会で暮らすようになるまではそうでもなかったのだ。だが、ここ最近、家庭冷却化は一層、深刻化を増していたのである。主人が唯一ゆいいつ、楽しみにしていた夕飯のおかずが三品さんぴんから二品にひんに減らされたのも、その一つの現れだった。あと数℃、冷却化が進めば、離婚調停ということもあり得た。

 そのとき、息子夫婦が、幼い子供を伴って、久しぶりに帰宅した。

「父さん、これ、土産みやげだよ…」

「ほう!! 都会にはこんなものがあるのか…」

 家の中は笑声しょうせいあふれ、冷却化現象はたちまちとまった。不思議なことに、家の温度は2℃ばかり、一気に上昇した。

 家族円満は冷却効果ガスを取り払う触媒しょくばいのようだ。^^


                   完


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