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-31- 巻き幅(はば)

 とある大学院の経済学研究所に月代つきしろという風変わりな教授がいた。彼は商品学を教授する一介いっかいの教授だったが、いつの頃からか妙な発想にとりかれ、今では自宅へも帰らず研究所に入りびたっては寝泊ねとまりするまでになっていた。彼が研究する対象とはトイレット・ぺーパーである。彼は過去数十年に渡るトイレット・ぺーパーの材質、形状、価格をひそかにデータ化し、その数値変化のシミュレーションを比較予測することで国力[経済力]の衰微を解き明かそうとしていたのである。

「うむ…。5年前は半径45mmだったものが、今現在は35mmか…。ということはだっ! 単純に考えれば、この5年で35/45=7/9・・ということは…」

 つぶやきながら、月代は右横に置いた電卓のキーを押し始めた。するとその答えは、たちまち液晶文字となって浮かび上がった。0.7777…である。

「77.8%か…。ということはだっ! 5年前より22%以上も減衰していることになる。これはっ、ゆゆしきことだっ! むろん、もう少し詳しく解析かいせきせにゃならんがっ…」

 月代は国の未来をうれい、そうつぶやきながら思わず身震みぶるいした。

「これは、捨て置けんぞっ! さっそく論文化し、学会で発表だっ!」

 月代がソワソワし出したそのとき、現れたのが助手の日下くさかである。

「どうかしたんですかっ、先生! バタバタされて…」

「ああ、日下君か…。私は、こうはしちゃいられんのだっ! 午後の講義は君が代講してくれっ!」

「ええっ! 僕がですかっ!」

 やってきた思わぬチャンスに、日下は思わず北叟笑ほくそえんだ。そして、加えた。

「そうそう! 先生、研究室のトイレット・ぺーパー、切れてたんで、立て替えて買っときましたっ!」

 日下は片手を月代の前へ突き出し、代金を催促さいそくした。

「それそれ! その巻きはばなんだよっ、君っ!!」

「えっ?」

 日下は意味が分らず、いぶかしげに月代を見た。

 国力の衰微すいびは分りやすいところにひそんでいるようだ。^^


                   完

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