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-20- 能ある鷹(たか)

 ことわざに、━ 能ある鷹は爪を隠す ━ というのがある。だが、今の世の中では通用しないのだ。どちらかといえば、━ 能ある鷹は爪をぐ ━ と言い直した方がいい時代なのかも知れない。

「いつもご精が出ますね、今釜いまがまさん…。私はこれで…」

 労働基準法36条の協定を組合が結んだことで残業の時間が延長され、今釜はいつも帰宅する時間より遅くまで残業していた。いつもなら切りをつけて多少、遅くなっても、6時迄には社を出ていたのである。それが、この日はすでに7時を回っていた。

「ああ、方丈ほうじょうさんでしたか。ははは…そんな訳でもないんですがね」

 今釜はニッコリ笑ってぼかしたが、それはていのよいカムフラージュ[偽装工作]で、能ある鷹の今釜は、ひそかに爪を研いでいたのである。というのも、二日後に内示される人事異動で今釜は課長代理から課長補佐への昇格のうわさが社内で広がっていたのだ。当然、その話は今釜の耳にも入る訳で、爪を研ぐ・・と、まあ、こうなる訳だ。今釜の隣りのデスクに座る多岐田たきだも、そんな今釜を援護えんごする訳でもないのだろうが、早々と帰宅していた。

 そして、運命の二日後となった。

「今釜さん、ちょっと…」

 課長の葦刈あしかりが今釜を課長席へ呼び出した。今釜としては、ヨッシャ! 気分である。

「実は…」

「はいっ!」

「課長補佐なんだがね…。王田おうだ君に決まったよ。君は、このまま、よろしく頼むよ…」

「そうでしたか。分かりました…」

 今釜は使用後から使用前にもどったような気落ちした声でつぶやいた。

「いや~悪いねっ!」

「いいえ…」

 そう口にした今釜だったが、内心では、ほんとに悪い噂だっ!! と怒れていた。今釜以上に爪を研いでいた能ある鷹の王田に今釜は破れ去ったのである。これが世に有名でない、能ある鷹の話である。 


                   完

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