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-14- 竹の子

 とある町に、竹の子と渾名あだなされる風変わりな中年男がいた。医者でもなく、竹の子好きという訳でもなかったが、なぜか町内の者はその男をそう呼んだ。理由は至って簡単で、病的な寒がり男だったからである。真夏の40℃にもなろうかという灼熱しゃくねつの日中でもガタガタ・・とふるえ、着膨きぶくれするほど何枚も衣類を身にまとわないと暮らせない大層な寒がり男だったが、その寒がり体質をのぞけば、どこにでもいそうな普通のサラリーマンでもあった。

 朝の6時過ぎだが、夏場で外は日中の明るさである。隣のうどん屋の主人が、男の家に入ってきた。

「竹の子さん、熱いうどん、もってきてやったよっ!」

「ありがとうごさいます。食べてから出勤しますので、そこんとこへ置いといて下さい…」

 男の朝食は、うどん屋に毎朝、出前してもらう天麩羅うどんだった。

「暑くねぇ~のかい、あんた?」

「ちっとも…。むしろ、寒いくらいですよっ」

「変わってるねっ、あんたっ!」

「はあ、どうもすいません…」

「いや、別に悪かぁ~ないんだがねっ。少し不憫ふびんに思えてさぁ~。風呂や洗濯は、難儀なこったろうねぇ~。一枚一枚、がさなくちゃなんないだろっ?」

「ええ。それは、まあ…」

「ははは…、やっぱり竹の子だよ、あんたっ。役場じゃ困ってんだろっ?」

「いや、それが…。上手うまい具合に…」

「どこだい?」

「外回りの徴収係で…」

「ははは…、こりゃ、いいやっ! 汗は出ないんだろっ?」

「はいっ! 快適、そのものですっ!」

 世の中には変わったこんな竹の子な人もいるのだから、人の暮らしは面白い。


                   完

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