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-12- 電話

 今の時代、生活する上で、電話は必需品となっている。が、しかし!、が、しかし! である。思わず首をひねりたくなるような事例を紹介してみよう。

 立花は、どこにでもいるような普通の老人である。定年退職して10年、今では細々と年金生活をする、しがない独居老人だった。家族はすでに他界し、今では唯一の楽しみが近くの弁当屋で美味うまいから買う魚フライ弁当というのだから、わびしい暮らしを髣髴ほうふつとさせる老人であった。

 とあるひまな日、その立花が、故障した電化製品を修理に出そうと、メーカーへ電話をかけた。それも、カップ麺に熱湯を注いだ直後である。

『電化ショップの総合商社、ピカリでございます。本日はお問い合わせをいただき、誠に有難うございます。商品に関するお問い合わせは[1]を、商品の修理に関するお問い合わせは[2]を、その他のお問い合わせは[3]をお押しください。なお、音声メッセージの途中でも可能でございます』

 音声メッセージが流れ、静かに最後まで聞いた立花は、聞き終えた直後、なんだっ、途中でもいいのかっ! と、おこりながらダイヤルの[2]を押した。

『パソコン・周辺機器の修理に関するお問い合わせは[1]を、携帯電話・スマートフォンに関するお問い合わせは[2]を、生活家電の修理に関するお問い合わせは[3]を、その他の…』

「くそっ! [3]かっ! [1]にしろ、[1]にっ!」

 立花はイラッ! として、音声メッセージの途中で[3]を押した。

『調理用品の修理に関するお問い合わせは[1]を、家事用品の修理に関するお問い合わせは[2]を、空調・季節関連の…』

「馬鹿野郎! [2]に決まってるだろうがっ!」

 立花は決まっていないのに激昂げっこうし、やはり途中でダイヤルの[2]を押した。

『洗濯機・掃除機の修理に関するお問い合わせは[1]を、布団乾燥機の修理に関するお問い合わせは[2]」を、掃除機の修理に関する…』

「[3]かっ! 梃子摺てこずらせやがってっ!」

 立花はいか心頭しんとうに発し、憶測おくそくで[3]を押した・・と言いたいところだが、怒りで手が震え、下のダイヤル[6]を押してしまった。

『最初に戻る場合は[0]をお押し下さい』

 それを聞いた途端、立花はガチャリ! と受話器を置き、電話を切った。フタを開けると、カップ麺は伸び切り、しかも冷えていた。

 電話は迅速じんそくにコトを運んだり連絡を取るための用具であり、時間がかかったり、楽しむ用具ではないはずなのだが…。^^


                   完

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