-100- 黒々(くろぐろ)しい
知っているのに知ったかぶりをする人がいるが、こういう手合いを白々(しらじら)しい人という。暮らしの中では仕方がない場合も多々あるが、まあ出来れば避けたい所作だ。逆に、包み隠さず知っていることを真っ正直に言う人はどうなんだろうか? ということになるが、白々しいの反対だから、黒々(くろぐろ)しいと例えられるのではないか…と思える。色彩的に言えば、黒は白に比べて悪い意味で使われがちだが、こういう逆の場合で使うこともある訳だ。^^
とある仲のよい近所の老人二人が、とあるうどん屋でバッタリと出食わした。
「おお、あんたも…」
「いや、そういうあんたも…」
なんとも、白々しい二人の会話が始まった。
「かけ、かい?」
「ああ、まあ…。あんたも?」
「んっ? ああ、まあ…」
すると、注文もしないのに、うどん屋の主人が、かけうどんを二杯、運んできた。この主人も二人と仲がよかった。
「ほれ、いつものだよ…」
「…」「…」
二人は置かれたかけうどんを無言で食べ始めた。腹が減っていたのである。その食べ方は素直で黒々しかった。食べ終え、白々しく小銭を支払おうとしたとき、主人が止めた。
「いいよ、いいよ…」
二人は、そう言われることを分かっていたのだが、一応、支払う振りをしたのである。
「いつも、すまないねぇ~」
二人は黒々しく素直に礼を言って店から立ち去った。
日々の暮らしの中では、白々しく生きるより、出来れば黒々しく生きたいものである。^^
完




