表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cafe エトワル  作者: 犬飼 蘭
4/6

第4話


カランカランー……


ドアの鈴を鳴らしながら、彼女が入ってきた。


彼女は濡れていた。

突然の雨に濡れたのだろうか?

だけど、それだけではないような……。

よくよく見ると、彼女の頬を濡らしていたのは、雨ではなかった。


「いらっしゃい。突然の雨ですから……よかったら使って下さい。」

「ありがとうございます。」


そう言って、彼女にタオルを渡す。


「にゃーー」


彼女が拭き終える頃に、雪が彼女にすり寄る。


「ふふっ。なぁに?甘えん坊さんね?」


彼女の見せた笑顔があまりにも切なく、儚げで………


「……今日はこんな天気で、お客様も貴女しかいません。よかったら、少し話を聞いてもらえないでしょうか?」


「………??はい…いいですよ?」


彼女は、急な私の申し出に混乱しながらも、返事をしてくれた。が、私は勢いで言ってしまっていた為、話す内容を決めていない。何を話せばいいんだ??焦る……。このまま、勢いか……。



「私の話を聞いて下さるお礼です。この珈琲はサービスですよ。」


そう言って、彼女にいつもの珈琲を渡す。

私はゆっくりと語りだす。


「…ある男がいました。その男は30歳代で、初恋を知ります。30年近く生きていて、恋心を知らない、寂しい人。身体の関係の女性はいましたが、心から愛することはできませんでした。ですが、ある日彼は恋に落ちます。可愛らしい女性。猫に優しく笑いかける女性です。その姿に彼は心を奪われます。」


彼女は黙って聞いている。


「ですが、名前も年齢も知らない人です。見た目からして、彼女は20歳代。年下の女性。声もかけられず見守るばかり。彼女の笑顔が見られれば充分だと……。ですがある日、いつものカフェに来た彼女の瞳からは、涙が流れていました。彼は戸惑います。いつも笑顔の彼女に何があったのかと……。

教えて頂けませんか?貴女の笑顔を曇らせている原因を……。貴女の力になりたいのです。愛しい人の笑顔を守りたい…。」


「えっ……?」


彼女は驚いた表情でこちらを見ている。


「…マスター?……マスターが私を……?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ