epilogue
リザとの別れからしばらく経ったある日、いつものメンバーで遊びに出掛けていた。
「リザさんと別れてしばらくなるけど、今ごろボクの事を恋しがっているだろうなー」
『それはない』
「一人くらい同意しろよ!」
坂田が泣きながら抗議する。
「セナ兄は寂しくないのー?」
美奈がからかうように聞いてくる。
「……寂しくねーよ」
正直な気持ちを言うのも癪なので否定する。
「またまた、強がっちゃってー」
「……くっ」
反論できない自分が悲しい。
「まぁでもあれからは平和よね。大した化け物もでないし」
遙がペンダントを見る。
「いやもう平和が一番だろ。……あんな思いはもうコリゴリだ……」
竜との戦い以来、腕輪の力は一度も使ってはない。
だが、腕輪はまだ腕に嵌ったままだ。元の世界に帰る前にリザは言った。
自分があの浮遊空間を元に戻しても、この世界とあちらの世界は、まだどこかで結ばれているので、この腕輪も遙の宝珠も消える事はない、と。
――いつかまた、あの竜のような怪物が現れるのだろうか。
あの竜が倒された事は世界中の話題となり、竜を倒した正体不明の者たちを、
「勇者」などと称し、賞賛しているようだったが、俺はもちろん、遙もそんな事はどうでもよかった。
俺たちはそんな称号や、賞賛を受けたいが為に戦ったわけではない。
それに、命を懸けてまで守りたかったものは
――すでに目の前にある。
横に並んで歩いている遙も、仲間たちの後ろ姿を楽しそうに眺めている。
「そう? また怪物が出てきたら、今度こそボクが、コテンパンにやっつけて、全世界的にモッテモテになるのにな~」
……どうやらこいつは、俺と遙とは考え方が違うらしい……。
「学校では噂のヒーローになったけど、相変わらずの扱いではないですか」
「うるさいよ!」
その時、未来が道の先に何かを見つけたように立ち止まる。
「……ねぇ、アレ何かな?」
その先を見ると、何か人間大の生き物が立っていた。
「……もしかして、また化け物?!」
遙が身構える。
「こ、こっちに来るみたいだよ……」
未来が恐怖で震える。
「よ、よし! セナ、出番だ!」
「今度はお前がやっつけるんじゃなかったのか……」
「待って! アレって……」
美奈が、腕輪を発動しようとした俺を制止する。
「ふむ。どこかで見たような気がしますな」
近付くにつれ、化け物の姿が見えてくる。それは鳥の宇宙人みたいな生物だった。
……なんだこのブサイクな化け物は。
とりあえず、まったく強そうには見えなかったが、確かにどこか見覚えがある。
「あ! 遊園地でリザ姉ちゃんに上げた!」
未来の言葉で思い出した。
「……もしかして、これが、リザが昔飼ってたとかいう生き物か……?」
リザが飼っていたのと同じヤツかどうかはわからないが、確かに遊園地で見た、あのブサイクなキャラクターにそっくりだった。
「ど、どうする……とりあえず襲ってくる気配はないみたいだけど……」
遙が戸惑った顔で、横から話しかけてくる。
「ど、どうするって……もしリザのペットだったら攻撃するワケにはいかないだろ……」
「グェ!」
突然、その生き物が、奇妙な鳴き声を上げ、長い舌で未来の顔をペロリと舐める。
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
泣きそうな顔で未来が身震いする。
「グェ♪」
未来を気に入ったのか、嬉しそうな顔(?)で未来に抱き付こうとする異次元生物。
「た、たたたすけてえぇぇぇセナ兄ちゃ―――ん!!」
未来が泣きながら後ろに回ってきて、背中にしがみ付いた。
「おっのれー!! ミクミクのラブリーエンジェルなフェイスを舐めるとは不届き・千万!!」
憤怒に満ちた目で、デーヴが異次元生物の前に立つ。
「グエ♪」
今度はそのデーヴの顔をベロリと舐める。男でもお構いなしかよ。
「ギョエエエエエ―――――――ッ!!」
デーヴが身の毛もよだつような叫び声を上げる。
そしてブサイクなその生き物は、その長い舌でデーヴの身体をグルグル巻きにして、自分の方へと引き寄せた。
「お、お助けえええええええええ――――――!!」
「グヘエエへエエー♪」
「デ、デーヴが食われる……!!」
坂田が叫び声を上げる。
「い、いや、単に抱き付いて喜んでるだけみたいだぞ……」
「ど、どうするのセナ……?」
「ど、どうするって……!? ……とりあえず逃げるぞ!」
デーヴを置いて俺たちは走り出した。
「えっえええ――――――!? そ、そんな! 待って! って、よすでゴワス! そこは! ダメって!! アッ―――――――――!!」
Fin
一つの物語を完結させる事がこんなに難しいものだとは思ってもみませんでしたが、
おかげ様で完結まで持っていく事ができました。ありがとうございます。
皆様が素敵な作品に出会い、また作り上げれますように。




