beautiful morning
「うっ……」
朝になって目が覚める。何か変な夢でも見ていたのか、体がだるい。
確かに昨日は悪夢のような日だった事には違いないが、それとは別の夢だった気がする。だが思い出せなかった。
(まぁいい。とりあえずアイツを起こしに行くか)
別の寝室で寝ているリザの事を思い出し、身体を起こす。
体を横に向けると、そのリザがすぐ隣にいた。
「うおおあわっ!!」
ゴン!
いきなりの出来事に驚き飛びのき、後頭部を壁にぶつけてしまう。
「お目覚めになられましたか」
何気ない顔でリザが尋ねる。
「お、お目覚めになられたじゃねえ! な、なんでお前がこの部屋にいるんだよ! というか、今何をしようとしていた?!」
「うなされていたようですので、目覚めの口付けを」
「な、な、な……」
混乱し絶句しながらも、ついリザの端正な顔にある唇に目が行く。
「な、なんだそれ!? お前の世界の風習かよっ!?」
「いえ。この世界では眠りの呪いを解くには口付けが必要であると」
「眠れる森の美女かよ! それはおとぎ話だ! しかも男女の立場が逆だ!!」
「という事は私が眠っている時に、セナさんが私の唇を奪われるのが正しいのですね……もしかするとそれ以上の事も……」
白い肌を赤らめたリザが恥かしそうに腕で身を隠す。
「奪うかーっ!! 勝手に話を発展させるのもやめろおぉぉぉー!」
頭をかかえ、ブンブンと(妄想を)振り払う。
(な、なんなんだこのラブコメチックな展開は……)
リア充ではないが爆発してしまいそうだった。
ふと机の上にある時計に目がいく。
デジタルの電子盤は8時を示していた。
「ゲッ、もうこんな時間かよ!」
「どうなさいました?」
「学校だよ! 学校に行く時間!」
ベットから飛び降り、制服に着替える為に服を脱ぎ始め……
ふと横に立つリザを見る。
「……何をしている?」
「お着替えを手伝おうと思いまして」
「悪いな。じゃあズボンを脱がせてくれ」
「はい」
「……って、そんな事できるかあああーっ!! いいから! とりあえず部屋から出ていってくれ!」
バンっ!
リザを押して部屋の外に出し、ドアを閉める。
「ああ、もう! 昨日といい今日といい、なんて日だよっ!」
急いで着替えを終え、ドアを開ける。
リザはまだ部屋の外にいたが、話してる暇もなく、そのまま玄関へと走った。
あたわたと靴を履いていると、リザがやってきた。
「セナさん。私はどのようにしておけばよろしいでしょうか?」
従順な兵士のようにリザが立ったまま支持を待つ。
「あー、えーっと、とりあえず留守番しててくれ! 夕方前には戻るから!」
「承知しました。お任せ下さい」
そう言うと、リザは一礼して頭を下げた。
「ああ頼む! じゃあ行ってくる! 鍵閉めも頼むな!
家にある物は適当に食べて、使ってくれていいから!」
返事も聞かずに俺はドアを開け、勢いよく外に飛び出していった。