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theme park

テーマパークに行く当日、階段を降りると、玄関でリザが既に待機していた。


「早いな、準備はもういいのか」


「はい。大丈夫です」


待ち合わせは駅前でという事だったが、今から出れば十分間に合う。

靴を履いて家のドアを開けると、遥と未来が立っていた。


「おはよーセナ兄ちゃん、リザ姉ちゃん」


未来が手を振って挨拶してくる。


「おはようございます。ハルカさん、ミクさん」


「おはようリザさん」


未来は水色のワンピースを着て、清楚な外国のお嬢様といった感じの服装をしている。

遙は白のシフォンチュニックと青のホットパンツを着ている。スラッとした体型の遙に、長い素足を出す

タイプのファッションはよく似合っていた。


「どうしたんだ? 待ち合わせは駅じゃなかったか」


「いいじゃない。家が近いんだから」


少しムスッとした顔で遙が答える。


「そうだよ~せっかくだから一緒に歩いていこうよー」


「そうか。まぁじゃあ行くか」


「うん。ねえリザ姉ちゃん、手つないでもいい?」


「はい。どうぞ」


未来に手を差し出すリザ。未来が嬉しそうにリザの手を握ると、今度は遥の方を向いて、


「じゃあ遥姉ちゃんもね」


と言って遥の手を握る。


「ちょっと未来……」


「えへへ」


遥が一瞬抗議の声を上げたが、未来の嬉しそうな顔を見て、苦笑する。


「未来、俺は?」


「ごめんねーセナ兄ちゃん、手は2本しかないんだよー」


何この疎外感。


「よろしければ私の手をどうぞ」


リザが余った手を差し出してくる。それと同時に、遙と未来の動きが止まる。

差し出された手を見ながら、4人で手をつないで歩いてる所を想像した。

……………。あまり絵にならなかった……。


「……いい。一人で歩く」


「そうですか」


大して気にした様子もなく、リザが手を引く。

むう……何か惜しい事をしただろうか?


「ねえ、早く行こうよー」


未来が皆を急かす。


「あぁ。行こうぜ。美奈たちを待たせると悪い」


嬉しそうに歩き出す未来。少し恥ずかしそうな顔の遥。いつもと変わらぬ表情のリザ。

 三者三様、見た目も性格もバラバラだが、こうして見ると、仲のいい姉妹みたいだな。


 後ろから三人の美少女を見ているのも悪い気はしなかったが、道行く人たちがそんな俺を不審な目で見る事だけが気になった。


駅に着くと、坂田兄妹とデーヴが先に来ていた。


美奈はグレーのスウェットパーカーに黒のミニスカートとニーソックス、というような、小学生にしては少し背伸びした感じのギャルっぽい恰好をしていた。


坂田はジーパンにブルーのジャケット、デーヴは、赤いチェックのシャツにグレーのスラックス……それと「萌杉」と書かれたTシャツを着ていた。


「なんだ。みんな来ないなーと思ったら、一緒に来てたのかよ」


坂田が腰に手を当てて、少し不満そうな顔をする。


「おはようございます。サカタさん、デーヴさん、ミナさん」


「おお。リザさん。今日もお美しい!」


「リザさんマジ女神」


「おはよーリザさん」


 三人がリザにそれぞれ挨拶をする。


「まぁ挨拶はこれくらいにしていざ行かん約束の地へ」


「そうそう。早くしないと電車が行っちゃうよ」


 デーヴと坂田に急かされて、仲間たちは駅の改札へと向かった。


 遊園地に着くと、年少組の美奈と未来が早速はしゃぎ回って、最初は二人の好きな絶叫系アトラクションを回っていたが、坂田とデーヴが根を上げ始めたので、メリーゴーランドやコーヒーカップなどの定番のアトラクションを回り、今は観覧車に乗っている。


「どうだ? 実際に来てみて」


横に座っているリザに話しかけた。


「そうですね。みなさん本当に楽しそうです」


観覧車の窓から外の景色を見下ろして、リザが答える。

しかしそれは、どこか自分とは違うものを見るような、そんな目だった。


……周りの人間じゃなく、コイツ自身は楽しんでいるのだろうか。

その事が少し気になった。


観覧車を降り、次のアトラクションへ向かう途中、ギフトショップに目が留まった美奈と未来が店の中に入っていったので、他の仲間もその後に続く。

各自で店内を見回っていると、リザがじっと何かを見ているのに気付いた。


何を見ているのだろう、と後ろからのぞいてみると、それは、目は左右逆方向を見た、鳥か宇宙人かはわからないような姿のヘンな生き物のキーホルダーだった。


口からはよだれを垂らしていて、どうみても薬でラリってるようにしか見えない。


(……なんだこのブサイクな生き物は……しかし、)


「欲しいのか?」


とりあえず聞いてみる事にした。


「いえ。ただ、私が自分の世界にいた頃に、飼っていた生き物に似ていたものですから」


「………………(どんなペットだよ……)」


その奇妙な生き物のキーホルダーを掴み上げてみる。


うおっ、こんなのが1200円もするのかよ! 


(だけど、こいつがこんなに何かに目を奪われるなんて珍しいからな……)


「……せっかくだから買ってこうぜ」


「え、でも……」


「いいんだよ。この国にはおみやげっていう、旅先で物を買うしきたりがあるんだよ」


そう言ってレジの方へ向かおうとすると、坂田に行く手をはばまれた。

いつの間にか、他の仲間たちも坂田の周りに集まっている。


「抜け駆けはよくないなぁぁ~~セナ」


「一人だけいい所を見せようなど不埒千万。まっこと許さんぜよ」


「まったくアンタってヤツは」


「セナ兄ズルいよ!」


「そうだよー! 今日はみんなでリザ姉ちゃんをもてなす日なんだから」


おまえら……見てたんなら、声くらいかけろよ。

まぁ後ろからリザを覗いていた自分に言えた義理じゃないが。


「ハァ、わかったよ。一人200円な」


皆、ニッと笑うと小銭を渡してくる。それを受け取り、レジに行って会計を済ませてきた。


「ほらリザ。みんなからだ。受け取ってくれ」


 丁寧にラッピングしてもらった品物を渡す。


「…………。ありがとうございます。大事にします」


両手で受け取り、しばらくの間、受け取った品をじっと見つめるリザ。

皆もそれを見て満足げに笑う。


「さぁ、そろそろ次のアトラクションに行こうよ! 次は超絶叫フリーフォールに乗ろう! 高さ200

メートルから、一気に地上に落下するんだって!」


「に、200メートルぅー!? み、美奈殿、今回、小生は遠慮してもよろしいでしょうかな?」


「だめ~早く行こうよーデーヴ兄ちゃん!」


デーヴの巨体を後押しする未来。


「お、おたすけ――!!」


未来と美奈に押されながら、デーヴが店の外に押し出されていく。

黒髪と金髪、二人の美少女に取り囲まれるなど、男なら喜びそうなシチュエーションだったが、デーヴの顔は恐怖で引きつっていた。

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