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for my childhood friend

翌日、通常通り授業は行われるとの連絡が学校からあり、いつものように登校した。

机に座っていると、これまたいつものように坂田とデーヴがやってくる。


「あれ、どうしたの。寝てないなんて珍しいね」


「まるでいつも俺が寝ているような言い方だな」


「いや、アンタいつも寝てるじゃん!」


「……今日はちょっと用事があるんだよ」


 そう言ってる間に、教室の扉が開いて、田沼たちが姿を現す。

教室のあちこちからウンザリしたような声が聞こえるが、相変わらず気にした様子もなく、田沼たちはズカズカと教室に入ってくる。


「藤上さーん、昨日は大丈夫だった~?」


笑顔で遥に近付く田沼たちの行く手をさえぎるように、俺は田沼たちの前に立ちふさがった。


「な、何……?」


予想外の行動に田沼が動揺する。教室でもざわめきが起こり始めた。


「……どけよ、通れないだろ」


佐川が嫌そうな顔をしながらも、田沼と代わるように前に出る。


「いや、悪いが、もう遥には近付かないでくれるか」


ざわめきが強くなり、教室のみんなが口々に話し合う。

……俺がこんな面倒臭い事をするなんてな。


自分でも信じられないし、仲間もそうだろう。別に今まで遙に告白しにきた連中の邪魔をした事なんて一度もなかった。むしろ応援さえしていた時もある。

だが、コイツらだけはどうしても許せなかった。


「セ、セナ……?」


後ろから、遥の戸惑う声が聞こえてくる。


「ハァ? どういう事だよ。なんでお前にそんな事言われなくちゃならねーんだよ。俺らが誰と話そうが俺らの勝手だろ? 違うか? あ?」


身長差を優位に見せるように、バスケ部の佐川が威圧的に見下ろしてくる。


「あぁ。お前らが誰と話そうが自由だ。だが遙はダメだ」


「だから、何でお前が俺らに指図するんだって、言ってんだろうが!」


ダンッ!! 佐川が床を踏み叩く。


「……オイ」


「貴様……」


殺気立った声で、後ろから坂田とデーヴがやってくるが、手で二人を制する。


「あのさぁ~佐川も言ってるけど、君に何の権利があってそんな事言えるわけ? 君って、藤上さんの何なワケ?  彼氏? 彼氏ならわかるけど、付き合いが長いってだけの、友達なんでしょ? ただの友達に、そんな権利なんてないと思うんだけど、どうかな? 違う?」


 まくし立てるように、田沼が言葉を並べ上げる。


「……あぁ。彼氏なんかじゃない。だけど俺は遙にとんでもねー恩がある。だから、お前らみたいな人間に遙を渡すわけにはいかねーな」


穏便に済ますつもりだったが、コイツらの言動や態度に段々腹が立ってきて、田沼の目を射抜くように睨みつけた。


「な、なんだよ。僕らの一体、何が悪いって言うんだよ……」


やや気圧されながらも、田沼が尋ねてくる。


「わからねーのか?」


「だから何だって聞いてんだろ!!」


 苛立った佐川が大声を出す。


「……お前ら、昨日、体育館で遙の隣りに座ってたよな?」


「………………!」


おそらくこれから何を言われるのか、わかったのだろう。佐川たちの表情が曇る。


「それでどうして遙が倒れてた時に、お前らがいなかったんだ?」


問い詰めるように佐川の前に近付く。佐川は目を逸らして後ずさるが、逃がすまいと佐川に詰め寄った。


「お前ら遙の事が好きなんだろ? 好きな女なら身体張ってでも守ってやれよ。好きな女を守りもしねーで自分たちだけ逃げていくお前らに、遙に近付く資格があると思ってんのか?

あぁ? なぁ?! オイ! 黙ってね―で、何とか答えろよ!!」


その時、激高に反応するように腕輪から発せられた力場の波が、教室全体に広がった。


「うわっ!」「なにこれっ!?」


クラスメートたちが驚いて声を上げた。

佐川たちは怯えたような顔をこちらに向けている。


「セナ!」


遙の呼び掛けで我に返る。

マズった……まさかこんなので発動するとは思わなかった。

怒りと興奮を落ち着かせるように、大きく息を吸って吐く。


「な、なんだったんだ今の?」「さぁ、地震じゃない……?」


口々にささめき合うクラスメートたち。


「…………言いたい事はそれだけだ。……悪かったな、怒鳴ったりして」


佐川たちは何も答えず、ただバツの悪そうな顔をして下を向く。

坂田とデーヴも何も言わず、級友たちのヒソヒソと話す声だけが聞こえてくる。


何とも言えない微妙な空気が教室に流れる。

その時、教室の入口からやたら体のデカい上級生が、4人ほど、ドスドスと猛牛の群れのように入ってきた。


なんだ、と見ると、昨日の化け物に向かって行った学園の猛者たちだった。

……デカい。皆、佐川より縦も横も一回り以上は大きい。

猛者たちは何故かこっちに向かってくる。


…………えっ、俺に用なのか……?


見上げるような巨漢たちが目の前に並ぶ。

佐川なんかとは比べ物にならない威圧感だ。

教室の連中も固唾をのんで見守る中、猛者たちが一斉に頭を下げて礼をしてきた。


「な、なにを……?」


驚いて思わず後ろに飛び退いた。


「昨日、助けて貰った事の礼を述べに来た」


猛者たちの中でも頭一つ抜けて背の高い、ゴリラのような顔の大男が顔を上げて言う。


「助けた……?」


「ああ。昨日、あの化け物を我々が取り押さえようとしたが、難なく吹き飛ばされてしまった所を、君が我が身も顧みず飛び出して、助けにきてくれたではないか」


……いや、アンタらじゃなく、遙を助けようとしただけだが……。


「その感謝と敬意を込めて、我が校の武闘派連盟を代表して、我々が礼を述べに来た!

 一同礼! 押し忍ぶと書いて押忍ッ!!」


怖っっっ! 

何だよ……武闘派連盟って。そんな恐ろしげな組織があったのか、この学校……。


「しかし、人は見かけによらんとは言うが、その身体で大したものだな……」


ゴリラ男が、ジロジロと身体を見てくる。


「うむ、あのタックル。是非、ウチのレスリング部に欲しい。どうだ君、ウチに来ないか?」


「オイオイ、あのスピードと身体能力なら、我がバスケ部にも欲しい」


「いや、あの体格差を物ともしない勇気と度胸。柔道部にこそふさわしい」


「いやいや、我が空手部に」


 猛者たちが、勝手に争奪戦を始める。教室の連中も、ざわざわと騒ぎ出す。


――天堂が……? そんなスゴいやつだったのか? でも確かそんな噂が……


教室のあちこちから、そんな声が聞こえてくる。


(……なんだこの展開? マズい……マズいぞ。)


田沼たちの事は仕方ないとしても、こんな連中がやってくるなんて、完全に想定外だ。

平穏な学園生活が、音を立てて崩れ始めようとしているのを感じる。


何より、こんな化け物みたいな先輩がいる部活に入るなんて、真っ平ご免だった。

――何かこの窮地を乗り越える手段は……


「や、やだなあ~センパイたち。あの時駆けつけたのは、俺じゃなくてこの漢です」


後ろに立っていた坂田を前に突きだした。


「ちょっ!」


(静かにしろ。ヒーローになれるチャンスだぞ)


(何っ?!)


「うん? 彼が?」


「確かにあの混乱の中では、見間違えたという可能性もあるが……」


「しかし、人は見かけによらんというが、コイツは見た目以上にヘタレっぽい気が……」


漢鑑定士たちがジロジロと、坂田を舐め回すように見る。


「ふ、フフ……そうです。ボクがみんなのピンチを救ったヒーローです!」


足をガクガクと震わせながら、坂田が胸を張る。

オオーッ、という声がクラスから上がり、坂田が両手を上げてそれに応える。


「ふむ。まぁいいだろう。そろそろ授業も始まるしな。今はこれくらいにしておこう。

ところで――」


ゴリラのようなバスケ部の先輩が、くるりと後ろを振り返って佐川を見る。

自分より一回り半はデカい先輩から見据えられ、ビクっと震える佐川。


「お前はこんな所で何をやっとるんだ? 確かここはお前のクラスじゃないハズだが」


「い、いえ、そのあの……」


「そっちの二人にも見覚えがあるな。お前ら確か、サッカー部とテニス部の一年だろう」


レスラーのような体格をした柔道部の先輩に声を掛けられ、震えあがる田沼と鈴木。


「噂で、三人集まって女生徒たちに声を掛けまくってる不埒な一年がいると聞いたが、まさかお前たちじゃあるまいな?」


ゴリラを筆頭に、学園の猛者たちが田沼たちの周りに集まって取り囲む。


「ひ、ひぃぃぃぃ、ち、違いま……」


 佐川が情けない声で否定しようとするが、それは坂田によって遮られた。


「いえ、先輩方。そいつらで間違いありません。ウチのクラスの女子にもしょっちゅう声を掛けに来て、迷惑してるんですよ~~」


ニヤっと、したり顔で笑いながら田沼たちを指差して、坂田が先輩方に告発した。

それを見たクラスの男子連中も、ここぞとばかりに、


そうだ! そうです! 迷惑してます! という声が上がる。


『なぁぁぁにぃぃぃ―――――!?』


学園最強と呼ばれる先輩たちに睨まれ、悲鳴を上げて震え上がる三人。


「佐川……お前そんな事してる暇があったのか……。

そうか……俺のシゴキがまだまだ足らんという証拠だな。そうだな? あ? ウホ?」


ゴリラが佐川にグイっと顔を近づける。


「ひっ!」


「そっちのサッカー部とテニス部も、主将の岡田と松岡に伝えておかねばならんな。

いや、顧問陣にも連絡しておくか」


「うむ。幸い皆、我々の同志だ。この際みっちりとした指導をしておこう」


『ひぃぃぃ』


身体を寄せ合いながら、田沼たちの顔がみるみる内に青ざめていく。


「ではコイツらは、我々が引き取るとしよう。邪魔をしたな諸君! それでは失礼する!」


先輩たちは一礼をし、田沼たちを連行して教室を出ていった。

猛者たちの男気と清々しさに、クラス中の男子から拍手が巻き起こる。


そんな中、俺は何事もなかったかのように、しれっと自分の席に戻って拍手をしていた。

先輩たちの強烈すぎるインパクトのおかげで、田沼たちとの諍いの話題は消えてしまい、その後、その事がクラスの話題に上がる事はなかった。



――なお後日談だが、学園を救った影のヒーローは坂田という事になった。

無論、その噂を流しまくったのは俺だったが。


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