werewolf
「風の……宝珠 ……ゼレアス?」
青白い光を放ち続ける宝玉の前で、遙が不思議そうな顔でその名を呼び返す。
遥の言葉に応えるかのように、宝玉は光を点滅させた。
「その宝珠を手に取って下さい。きっと私たちに力を貸してくれるはずです」
「う、うん。わかった……」
リザの呼びかけにうなずき、遙が宝珠を手に取る。
刹那、光と風が放たれ、遙の首にペンダントのようなものが巻かれた。
「それは大気と風を司る神の神具です。風をイメージして、その宝珠に込めてみて下さい」
「わ、わかった。やってみる」
リザの言葉に従い、遙が何かを念じるようにペンダントを握り締める。
すると、その手の中から光があふれ出し、遙の方から風が吹き荒れ始めた。
遙が両腕を人狼に向け突き出すと、突風が横殴りに人狼に襲い掛かった。
「なんだこの風は!」
吹き止まぬ風に、人狼が両腕で顔を覆う。
「なめるなよ! 風ぐらいで俺を止められると思ったか!」
横に跳んで風の直撃を避け、人狼が再び遥に向かう。
「氷矢雨」
突如、人狼の周りに数十もの氷の矢が現れ、一気に人狼に向かって飛ぶ。
「グゥゥッ……!」
再び両腕で顔を覆いながらも、全身に氷の矢を受け、人狼が苦悶の声を上げる。
「私がいる事も忘れてもらっては困ります」
氷のような瞳でリザが獣人を見据える。
「貴様……!!」
煮えたぎるような憎悪の目をリザに向ける人狼。
だがその刹那、俺の刃が人狼の背中に突き刺さった。
「ガ……ッ!」
「悪いな。隙だらけだったもんで」
人狼の注意が自分からそれたのを見て、氷に覆われたその身体に剣を突き立てた。
まだ腹は痛むが、遙とリザが時間を稼いでくれたおかげで、動けるくらいには回復した。
「き、貴様……!」
人狼が爪を振るってくるが、それが届くより早く、剣を抜いて離れる。
「許さんぞ、貴様ら……」
怒りに燃える人狼を、遙の放った突風が再び襲う。
「ぐっ……!」
風に吹き飛ばされまいと、獣人が身を屈めて踏み止まる。
「雷光槍」
リザが今度は一本の長い電撃を放ち、人狼の身体を貫いた。
「ガアァァッ!!」
電撃を喰らい、人狼の身体が跳ね上がる。
――動きが止まった!
今が好機と、剣を握り締めて獣人の横を駆け抜け、その左腕を切り飛ばした。
「グアアア――――――ッ!!」
左腕を切断され、人狼が絶叫を上げる。
「どうする? まだやるのか?」
人狼に剣を向け、降伏を促す。
「クソッ!!」
分が悪い事を悟ったのか、落ちた腕を持って獣人は高く跳び上がり、体育館の窓ガラスを突き破って……そのまま逃げていった。
「……終わった……のか……」
人狼の破った窓を見つめながら、両手の剣を下した。




