相殺さ、うそ!?
お待たせしました!
「はっ!?」
「何がしたいのか」
「あっ私だ、今度は決めてきたよっ!」
『抱擁』
「うわっ前より強いの使ってきた! でも!」
目が死んでいる方のキーナは対人では厄介な魔法、抱擁を使った。火属性の魔法で、着弾地点又は着弾魔法の術者に纏わりつく魔法である。防御魔法で受けた場合、その魔力が切れるまで防御し続けなければならないため戦闘で何より重要な時間というリソースを奪われるのだ。
キーナはそれを回避。弾速は遅いし(比較的)、初弾なので回避は容易だった。
「せっかく魔法があるんだし、使い倒したいの! あの星の本で!」
今回も力の差は歴然だ。しかし、それを覆すかのような光、それがキーナから溢れ出し……
「これが『自己顕現』……」
皮表紙に星が散りばめられた本。バサバサと頁が捲られるが、中身は白紙である。それが浮いている。
……目が死んでいる方のキーナの目の前に。
「ってお前が使うんかい!」
『魔導蒐集家』
「魔導蒐集家……一体どんな効果が……」
キーナは目の死んだキーナの様子をじっと伺う。
じっと伺っている。
さらにじっと伺った。
しかし なにも おこらなかった!
「……来ないならこっちから行くんだから!『造地!」
キーナは十分に準備を施した最下級魔法『造地』にて地面を隆起させた。そしてゆっくりと目の死んだキーナを地面の壁で挟み込む。
「動かないなら私の勝ちなんだからね!」
ゴゴゴ……と万力のように潰し始める。目の死んだキーナはまだ立ったままだ。本を浮かべてはいるが、全く動かない。
そして土の万力が目の死んだキーナに触れようとした時、それは忽然と姿を消した。
「……へ?」
『増地・頁2解放『増地』
今度は、キーナの周囲に土の万力が生み出された。四方を囲んでおり、逃げられない。
「避けられない!? ど、どうすれば…」
万力なのでゆっくりと迫って来て時間に余裕はある……が、周囲全てに壁があり、万力だけに回避という選択肢は真っ先に潰された。
「詰んだ……ッ! ……詰んだ? あっ!」
それは、ミヤフィと一緒にリタの授業を受けていた時のこと。
『これは学校でも習いますが、魔力や魔法には属性が8つありますね。『炎』『氷』『大空』『大地』の基本四属性、『光』『闇』『聖』『邪』の発展四属性。属性が重要視される理由、それは……』
「相殺によって、魔法効果の無効化が可能。こと戦闘においては、回避不可能な魔法を打ち消せるから……」
それは、キーナは知らないことだったが、ミヤフィとリタの『邪属性禁呪・超自爆』の聖属性魔力による相殺、そして、こちらは知っているが、ミヤフィによる、同一魔導器械内部の対称属性相殺による魔法不発動問題解消。そう、魔法の現場では多く起きている現象だった。
対人魔法戦闘はろくにやったことのないキーナだが、改めて基本に立ちかえることができた。万力なので時間があったからであろう。
そうと決まれば、大空属性の魔法で一点突破するだけである。
「大空属性最下級魔法……灯り吹け、『風流』」
キーナの手のひらに黒と紫が1:9でマーブル状に混ざり合った光球が発生した。詠唱付きで放たれたそれは、固有魔力を核にして、周囲の純粋魔力を高効率で大空属性魔力へ変換していた。
最下級魔法は構造が単純な分だけ、容易に属性魔力を生成することができる。そしてキーナは属性の強度をなるべく高めた。魔力相殺を起こす際は、同じ量なら強度が高いほうが圧勝する。更に、相殺の際の減衰も少なくなる。
……ただしキーナはその辺りの理論を熟知しているわけではなく、何となく行ったにすぎない。これは野生の動物でも身についている本能的なものだからだ。
「行け!!!」
キーナは光球を投げた。これが突き抜ければ目の死んだキーナに当たり、そのタイミングで爆発させられる筈である。
光球は土の壁に当たり……バンッ!!!
「やった! そこだっ!」
ビュオオオオオオ!!! 風が爆発して、キーナの意識はホワイトアウトした。
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