自己顕現のために 第一回
お待たせしました。
キーナはリタと共に魔導学校に来ていた。ウィンカイル魔導学校は魔導学校だけあって、魔法の試し撃ちができる施設は完備している。
射撃場のような的当て設備や、壁と地面を耐魔法加工された広場、決闘用の舞台、魔力回復用の瞑想部屋、魔力トレーニング用の魔力回復補助施設など、一通りの施設が揃っていた。
「リタさんお休みなのにありがとうございます! それで、自己顕現の修行って何をするんですか?」
「魔法の修行は基本的に実践や瞑想、魔力強化と多岐にわたりますが・・・」
「ますが・・・?」
「まずは自分探しをしてもらいます。軽度睡眠付与」
「へ? ふぅぁ・・・」
キーナはリタの手によって眠りに落ちた。軽度の睡眠魔法はメイドの嗜みだそうだ。主人が眠れないときに、そして・・・
「(曲者を拘束するため。)さて、キーナさんを修行場所へ・・・」
キーナはリタに運ばれ、リタの研究室に運ばれた。
一方ミヤフィが何をしているのかというと・・・
「はあ・・・ぜぇ・・・はぁ・・・」
「走れオラァ! 根性見せろ!」
「軍って根性主義なんですね!!」
「当たり前だオラァ! 最後にものをいうのは根性だ! 走れウジ虫!」
「イェッサー! ぜぇ・・・はぁ・・・」
歩兵中隊で身体作りをしているミヤフィ。ひたすらランニングをしていた。
当然、魔力による横着は禁止されている(基礎トレ中の魔力使用は横着と見做される)ので、無限のランニングや筋トレがミヤフィを待っていた。
研究方面で進歩はない気がするが……ミヤフィの運動機能は着実に回復しているようだ。
キーナが次に意識を取り戻したのは湖のほとりだった。
「ここどこ…?」
平原に湖しかない。
とにかく他にできることがないので、キーナは湖に近づく。湖は風光明媚…というか、とにかく水面に一切の乱れがなく、まるで凍っているかのようだった。
「鏡みたい…あ、顔も綺麗に映るね」
"What do you want?"
「へ?」
エルデ古語「ディビド」を話したのは誰か。
「うわ私が喋った!?」
"Show me me"
身体に纏わりつく水を全身で撫でるような動きで水面に映ったキーナが手を突き出す。その手は水面に近づいてきて、キーナを掴もうとするかのように、水面を貫通してきた。
「ひぃ! なにこれ! 私が出てきた!」
表情のないキーナがキーナに向かって歩いてくる。キーナは既に10歩くらい後退りしていた。
表情のないキーナは数歩歩いた後、空手の構えをとった。
キーナはその構えの圧に押され、体制が乱れてしまう。
その隙に表情のないキーナは表情を変えぬまま滑らかな足運びでキーナに肉薄し、顔面に正拳突きを放つ。
「ひょ……え!」
キーナはかろうじて反応が間に合い、ギリギリのところで直撃を回避した。しかしすでに間合いに入っているので、鉄槌、前蹴りと連撃を入られてしまった。鉄槌は何とか躱したものの、体勢を低く崩していたキーナは前蹴りを胸に食らい後ろに吹き飛んでしまった。
「っぐ……んぁっ!」
"Is that all?"
「……いきなりなにすんのさっ! 私っ!」
"Show me me"
「何言ってるのかわからないよ!『造地』!」
キーナは習ったばかりの最下級魔法『造地』を用いて手から檜の棒を出した。
大地属性最下級魔法・造地は大地由来のもの、すなわち、土、金属、石、そして植物などを指定地点に生み出す魔法である。しかし生み出せる体積はどれだけ魔力を注いでも成人男性の頭の大きさ程。しかし詠唱はトーチの二音で済む簡易さのため日常生活はもちろん、意外と実戦でも使われることが多い。
"torch"
表情のないキーナもまた、最下級魔法を唱えた。ただし属性は大空。発動地点を起点に、好きな方向へ風を出せるプラズマを出す魔法だ。右手をピストルの形にして、人差し指の先にプラズマを待機させている。最下級とはいえ、至近距離なら人が数メートルは吹き飛ぶ衝撃を出すことができる。
「話す気がないなら! はああああ!」
ギリギリまで風を撃たなかった表情のないキーナはキーナに肉薄され、左肩へ突きを繰り出される……が、木の棒へ風弾を放った。
ドパァン! と大きな音がし、木の棒と風が対称属性の相殺効果で相殺された。注がれた魔力量はキーナはそのまま肩パンをかましたものの、少し遠い間合いで一度伸びきった腕である。軽く当たる程度にとどまり、逆に掴まれて一本背負いの要領で投げ飛ばされた。
衝撃で呼吸ができなくなり、酸素を求めて口が大きく開く。
"torch"
表情のないキーナは氷属性最下級魔法冷却にて追い討ちをかけた。手をキーナの口元に近づける。
キーナの全力に近い魔力を注がれたその魔法はキーナがやっと吸いはじめた空気を凍らせ、そしてキーナの肺は絶対零度に近い温度により冷やされ、凍りついた。
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