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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
1章 加速器のビームの向こうで
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三歳の誕生日・午後

 意識があって、体が自由に動くのに粗相をしてしまった。顔がとっても赤くなってしまうほど恥ずかしい思いをしたが。まあ誰にも見られてないし、大丈夫だよね!だよね・・・?

 僕は何に言い訳をしているのだろうか。




 これまでの事から考えるに、明らかに身体の能力をオーバーしてしまう行動に対して制限がかかる、または明らかに"普通"ではない行動の意思に対して"普通"の行動をする意思を強制するというのが身体の強制力の正体で、どうやら性別意識にも関わってくる物らしい。


 おかげで女性になっていることに今まで気づかなかった。

・・・流石にこれ以上制限されている行動はないと思う。

微分積分の演算は、この世界に来て身体のスペックを確かめる為にしたことの一つだ。結果から言えば、出来た。

 しかし、一歳六ヶ月位まではその結果を口に出す(・・・・)ことができなかった。

 そのことで、身体の強制力に社会的不自然を抑える力があることに気付いた。

 一歳で数を扱う奴がどこにいるよ?逆に一歳六ヶ月から数を扱う奴がこの世界には普通にいるってことになるのだが。


 で、幼くして性別に気付くことは社会的に不自然だということだろう。








 いつの間にやら太陽はお空のてっぺんに差し掛かっている。朝の霧も晴れ、この街にしては珍しく冬に晴天な今日は、ぽかぽか陽気で気持ちいい。

 粗相を片づけた後、読書に勤しんでいると天窓の日差しが気づかぬうちに背中に当たっていた。


 カランカランと、呼び鈴が鳴る。

 我が家の玄関には神社の鈴のように呼び鈴がついている。来客のサインだ。この世界では神社スタイルが一般的らしいが、玄関に鈴が吊るしてある光景は中々にシュールだ。


 ママがはーいと言いつつ玄関に向かうのに着いて行く。体が小さいと歩幅の分足が遅くなっていて追いつけない。ママに置いてかれたが、玄関で僕を待っていてくれた。


「遅かったわねミヤフィちゃん。早く出ないから・・・メイドさん帰っちゃった」

「・・・え、嘘?」

 そんな・・・折角メイドさんが来てくれたのに帰っちゃったのか?しかも僕のせいで・・・?





「・・・そのとおり、それは真っ赤な嘘でございますよ。ミヤフィお嬢様」


 絶望に沈む僕を救う様に、ドアを開けつつ人が入ってくる。後光が差して見えるぞ。これが・・・

「メイドさんか・・・」


 その姿はまさしくメイド。

 よく手入れのされた皮靴に、黒地のワンピースを覆う質素な白いエプロンが美しい。見ると作業着であることを思い出させるが、気品を感じさせる白い被り物。なんて言うんだっけ。プラムだったかな?

 異世界で初めて地球にもある服装を見つけて何だか嬉しい。

 キラキラした視線で観察する。所々に入った刺繍がアクセントになり、雰囲気を引き締めている。すっかりママへの不満は消えてしまっていた。


 それからしばらく鑑賞した後、驚きが冷めて振り向くと、ママは怪訝そうな顔をしている。


「ママどうしたの?」


「ミヤフィちゃん、メイドさんを見たことがあるの?」

なんだかとっても理解が早かったような気がするわ、それに食い入るように見ていたし。と仰る。

 確かに、メイドさんを初見でメイドさんだと気付き、服装に顔を輝かせる三歳児はいないだろうな。どう言い繕おうか。


 困っているとメイドさんがママに耳打ちをする。

(・・・奥様、ミヤフィ様はメイド服の魅力に取り憑かれたのではないでしょうか。小さな女の子には時々そういう事があると聞きます。あくまでも洗練された従者の服装ですから)

(・・・そうね、女の子なら服に興味はあるわね)


 下手くそな耳打ちだ。丸聞こえだよ。しかし誤解してくれたのはありがたい。

前世ではメイド系グラビアで○×た事もあるので、輝きにそういう意味も入っていたことは否定出来ないからだ。


 元のきっちりした姿勢に戻ったメイドさんがこちらを向き直す。凛々しい。

 対してママは考え事が無くなりスッキリしている。清々しい。


「さて、それじゃあ、取り敢えず中に入って自己紹介と行きましょうか」


 僕たちは客間に向かった。

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