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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
3章 魔力の奔流に流されて 
59/66

なんですかあなた達は!?

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「何ですかあなた達は!?」


 朝の教室。今日も家から歩いて登校したミヤフィは自分のクラスの教室……の前の廊下が上級生に占拠されているのを目の当たりにした。

「ミヤフィちゃんだ!」「いたぞ!」「可愛いー!」「本当に4歳なんだ……」「優勝おめでとう!」「優勝の秘訣は?」「勇者って本当?」


 ミヤフィが集団を見つけた時、集団もまたミヤフィを見つけていた。

 ミヤフィ、リタ、キーナは集団に殺到される。

「本当に一体何なんだ!」


 当然の疑問。誰しも朝っぱらから上級生に取り囲まれていい気にはならない。ただでさえミヤフィは4歳児で、それはもうものすっごい身長差なのだ。


「「ダーッハッハーッッ!!」」


 そんな疑問に回答者が現れた。石と木造りの廊下の朝日の側からだ。

「なんだかんだと訊かれたら?」

「答えてあげるが新聞部の情け」

「学園のニュースを広めるため」

「学園の秩序を操るため」

「愛と真実の記事を貫く」

「キューティーウィットな取材役」

「セイエー!」

「エーク!」

「校舎を駆ける新聞部の二人にはァ!」

「ホワイトアーティクル・真っ白な記事が待ってるぜゼ!」

「なーんてワン!」



 










 最初に意識を取り戻したのはキーナだった。

「ジェット団じゃん!!!!!!!!」

「エクセリア先輩!? 何やってんですか!?」

 次に目覚めたのはミヤフィ。リタも意識を取り戻す。

「まさか……あれは『ニホン』の代表的アニメーション作品『ポシェットクリーチャー』に登場する悪役、『ミヤモト』と『ササキ』そして喋るポシェクリの『ヌワン』のモノマネでは!?」


 ちなみに他の上級生は「あーあ、また始まったよ」などと言って帰っていった。この二人が出てくると場が滅茶苦茶になるのだろうか。

 そんなことは全く気付かないミヤフィ一行。セイエー(?)とエクセリアのクセが強すぎたせいである。

「何で…エクセリア先輩がそれやってるんだよ!」

「あれ……何で知ってるような素振りを……あっ、やべ」

「せっかくイケメンだったのに!?」

「ミヤフィ、そっちなの……?」

 キーナも気付いていたようだ。エクセリアは、転生者か召喚者であると。

「……で、何でジェット団のモノマネしてるんですか」

 ミヤフィにジト目で見つめられたエクセリアは狼狽する。殺されるんじゃなかろうか。

「えっ、えっとね……場を和ませようと思って」

「じ、自分で考えたんだよ! 新聞部は嫌われがちだから、好感度アップ作戦さ!」

「嘘ですね。目が泳ぎまくってますよ。しかもエルデの人まで巻き込んでるし…」

「彼は召喚術士なんだ。ポシェクリの話したら流れでこうなっちゃって」


 ミヤフィは難聴ではない。エクセリアの動揺は、バッチリ察知していた。冷たい目でしばらく見られたエクセリアは観念したようで、とぼとぼと話し出した。


「好感度アップだけは本当だよ」

「それが……ジェット団のパクリだと?」

「ウス」


 顔を青くしながらエクセリアを問いただすミヤフィ。そう。超絶イケメンの完璧超人だと思っていたエクセリアがポシェクリオタクだったのである。

 ミヤフィの中でポシェクリのオタクといえば、年中レートマッチに潜ったり、ポシェクリバトルの対戦相手が強いポシェクリを使っているだけで『何ぞこの厨チィ!』とキレ散らかしたり、あんなに可愛いデザインのポシェクリを「遺伝子値のため」などと捕まえては捨てを繰り返す、ゲームとはいえ気の狂った人間達なのである。

 天才と周囲に思われるまで理数系学問を学び続けたミヤフィとどっちが「やべー奴」かの結果は見えているのだが……


 しかもあのギャグ口上を真面目にやり始めたのだ。そう。一応本人達の弁を信じるのならば、「ジェット団口上は「真面目にやっている」のである。


「(誰も知らないからと言って、あれを真面目にやっちゃうんだ……)き、教室に入らせていただきます」


 口からエクトプラズムを出すミヤフィ。エルデでの人生、人族は長くて70年。三四半世紀の恋も冷める瞬間であった。ポシェクリ愛は買うが……恋愛は無理。気力が尽きて、トボトボと教室に入ろうとするミヤフィをエクセリアが呼び止めた。


「何故君が朝っぱらから先輩に囲まれたのか、知りたくはないかい?」

 ミヤフィは一応ピクッと反応した。


「はいはい、魔法器械コンペティション優勝でしょー?」

「急に扱いが雑になったね……まあアレやったらみんなそうなるから仕方ない。君への注目は、魔法器械コンペティション優勝だけに収まらない。何故なら…」

「ふむ」

「対称属性の同時または同調発動が可能な魔法器械は……望まれていたものの前人未到、世界初の大発明だからだよ!」

「へーそうなんだー。へ、へー」

「そうなのですね。ミヤフィ様、やったじゃないですか」

「特に……そうだな。今度取材させてくれるなら、特別に教えてあげよう」

「ミヤフィ、取材だって! いいな〜! 有名人だよ!」

「っし、仕方ないですね〜」

 キーナからの押しに弱いミヤフィ。

「よし。軍事用途に需要があるみたいだよ。逆に宗教によっては、禁止されているものもあるんだとか。急ぎの俄調べだから、何故禁止なのかはわからないけどね」

「そうなんですね〜」

 ヤベェ〜! と心の中で叫ぶミヤフィ。魔法器械の開発で、宗教の禁を破ることになろうとは思いもしなかった。地球ですら教義の押し付け合いで戦争があるのに、より闘争が身近なエルデだと……拉致されて拷問の上殺害など平気でありそうな気がする。


 エクセリアは説明を続けた。

「そして……うん。取材させてくれるから大サービスなんだけども。我々がジェット団口上をやっても残った彼ら。この行列は全部キミへのスカウトだ」

「本当!?」

「ミヤフィ様、早速有名エンジニアですね!」

「20人くらいですか。多いですね!」

「ちなみに報酬額の大きい順に並べてあるよ。代わりに取材費タダね」

「マジか! エクセリア先輩、超見直しました!」

 目に輝きが戻るミヤフィ。ラブコメ感は相変わらずゼロだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 メカニカルエンジニアを目指すミヤフィは報酬に弱い。間接的に。


「では一人目」

「ミヤフィさん、僕と一緒に楽器を作りませんかッ!」

「いきなりですね!? お名前は?」

「ポール=フェンエフィーと言います。マシュロ宮廷楽団にも楽器を製作している『フェンエフィー楽器工房』の長男です! 僕があなたと一緒に手掛けたいことは、楽器製作です! 詳細な内容は伏せますが、簡単に。人が持てる大きさの、新規一般人向け楽器です。どうしても、対称属性の技術が必要です。協力していただけたらまずはこれを。後は利益が出た分から一定割合で」

 ドン!

「わぁお」

「100万ポフはありそうですね」

 音を立てて置かれる金貨袋。周囲がざわつく。早速大物が来たな、と。報酬額じゃとても叶わない。お金持ってくればよかった、と。


 そしてミヤフィは、別のことに頭を悩ませていた。

「リタさん、全員分の会話内容をメモしてもらっていいですか?」

「はい。ミヤフィ様なら技術的なことは覚えていそうですが、条件が複雑になりそうですからね。それに、この人数」

 後ろにはずらーーーーーーーーっと人が並んでいる。どうにか足切りしなくては。


「はい次の人」


 ざわっ……

 次は出てきただけでざわついた。黒フードだ。一同は暗殺者か何かかと思った。

「報酬額で負けたか……あれだけ出すとは本気だな……さて、我々は『賢人会』。受託金は50万ポフ。完成したら追加で150万ポフ。そして賢人会への加入資格。その魔力操作能力を見込んで、魔石加工をお願いしたい。用途は賢人会の総長が使用する魔法器械、いや、世界を変える可能性がある故、魔導具と言ってもいいだろう。理論と設計図、材料はあるのだが、誰も加工できないのだ」

「ほう……あの賢人会が」

「知っているんですかリタさん?」

森人族(エルフ)が運営する研究機関です。簡単に言うならば、教育機能のない大学のようなものでしょうか」

「日々研究に没頭できる環境を用意している」

「ふむ……」




「却下で。それ理論が合ってる保障あります? それに加工だけだとしても、ワンオフ品で200万ポフは安すぎます。無駄な時間はごめんです」

「んなっ!?」

「それに、私は基礎研究は進んでしません。必要がある時だけ。ですので賢人会への所属も結構です」

「……ミヤフィ様、それはいくらなんでも突っぱねすぎであるのでは?」

()()()()()んですよ? 知らないんですか? しかも難しそうだし。絶対修正あるでしょ? 1000万ポフは持ってきてください」


 ミヤフィは立ち上がって叫んだ。

「後ろの方々はこれ以下の報酬額なんですよね? 単品の人は帰ってください!」

「賢人会の肩書を拒んだこと、後悔するぞ!」

 後の人間は舌打ちやため息など、落胆を見せて去った。


 2人だけ残った。一人目の男は学外の人間らしかった。

「『星降街(スターダストシティ)』町役場 結界課のエメラインです。申し訳ありませんが、我々の依頼もワンオフで。しかし、この列は()()()()()()報酬額順なんです。報酬額は前金で100万ポフ、完成で5000万ポフ。今ここにキャッシュはありませんが、役所なので受注が決まってからしか持ち出せなくて。内容は設置型の魔法器械。街の結界用のコア魔石を開発です。詳細な仕様は……ここでは言えませんが」


「なるほど。動力用ですか。報酬額も申し分ないですね。もう一人からも話を聞きますのでここで待っててください」


 足切りするには惜しいと思ったミヤフィは、エメラインではない方の男に声をかけた。長いローブを身に纏っていて、なんだか今にでも旅に出られそうな装いだ。

「では次の方」

「……はい。私も役所の者でして。内容は魔法兵器の開発。報酬は……完成時に20億ポフ」


「「「20億ゥ!?」」」

「へ、へぇ〜、兵器とは、何に使うんですか?」

「一撃で大型魔物を倒したいとき、又は魔物が手に負えない時に、『なりふり構わず』滅ぼしたい時に使います。中央を守る最終フェイルセーフ手段として」


「やばそう。」

「大型魔物が出たという話は存じ上げませんが?」

「備えが大事だということは魔法器械技師ならば理解していると思いますが」

「ふむ。一理あります。ではそれを置く場所は?」


 条件がいいのでこの開発依頼を受けようかと思っていたミヤフィ。


「神聖ミリシア王国・首都『ミラキン』」

「手前ェどの面下げて来やがったァ!?」


 あろうことか、親の仇の国である。

 ミヤフィは即時『理識る闇の絶対聖布(アカシック・マント)』を装備し、リタはナイフとお盆を抜いた。男は微動だにしなかったが、話し出した。


「おっと、ここで戦うつもりはありません。ですが、交渉は決裂。次は焼け野原でお会いしましょう。勇者サマ」


 言い終わった瞬間、男の姿が掻き消える。

「転移!? あの一瞬で?」「ミリシアだってよ!」「勇者って大変なんだな」「魔法器械コンペティションから戦争がはじまりそうなんだが」「ミヤフィちゃんかわいい」「ミリシアって仮想敵国じゃん!」「歴史の一幕を見た気がする」


「くそっ!」

「ミヤフィ様。はしたないですよ……!」

 リタに注意されるミヤフィ。キーナはミヤフィの両親とは会ったことがないので、同情はするがいまいち同じ温度感にはなり切れていなかった。

「ミヤフィ。依頼はどうするの……?」

「あっそうだ。キーナ、ありがとう。帰った人に集中しててもいいことないしね。助かる」


 ミヤフィは一度深呼吸すると、どの案件を受けるか告げた。

「フェンエフィーさんの楽器開発を受けようと思います。放課後、相談しましょう」

 ひとまず、この場はお開きとなった。

「インタビューよろしくな!」

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