第一クエストクリア!
お久しぶりです。
魔法機械コンペティションが終わって、夜。優勝はミヤフィだったが、準優勝はフェリージカラクの【フラワー・フェリーチェ1号】だった。3位は〈魔導具店ララ〉の長男ラランディ。光属性魔法〈陰幻影〉を誰でも発動できて、幻影の動きが魔法器械使用者と同じとなる魔法器械である。しかもペンダントサイズに小型化されており、隠密行動などに使えそうだ。
「いやーこれ、基本四属性魔法匣。これをマシュロに献上すれば第一クエストはクリアですね!」
「そうですね、マシュロへの亡命の条件は有用な魔法器械を開発することと有事の際の戦力参加でしたから。既に変質魔力事件やスタンピードの解決も行っていますから、戦力参加の実績は認められると思います」
ミヤフィとリタが神聖ミリシア国からマシュロ共栄国入国の際、そして中で交わした契約は、『冒険者として必要な時の戦力供与』『有用な魔法器械の開発』だった。対称属性の同時発動魔法器械はこれからの魔法器械の歴史を変えるものとなるだろうことがほぼ確実なので、
「ミヤフィ、これでマシュロ国民だね! 追い出されずに済みそう!」
「まあパスポートやらは無いし、戸籍も微妙だしね。貴族しか詳細な戸籍はないみたいだし、元からこっそりしてれば大丈夫だったんだよね。オダワラと戦ってたとして、入国せずに帰ったフリしてもう一回入るとか……まあ、追い出される心配はないよね」
「はい♪ 研究室メイド道も極められますし、何よりご主人様一家を受け入れてくれた国です。それにミヤフィ様もお可愛いですし! まだまだお仕えさせていただきます♪
「とはいえオダワラみたいな刺客が今後も送られてくるかもしれないし、油断はしない様にしないと。それこそ、ケインさん、くっころちゃんやエクセリア先輩にも危害が及ぶかもしれない。冒険者稼業も続けたいし、街の外にいる間だけでも常に『理識る闇の絶対聖布』を起動できてたら安心なんだけど……」
「ダメだよ!」
「ミヤフィ様、それはダメです。あれは起動するだけで大量の魔力を扱います。足がせっかく良くなってきたのに……しばらくは刻印でも使わないでください」
「そうだよ! リタさんがどれだけ心配してると思ってるの! 勿論私も」
キーナとリタはミヤフィに顔をグッと近づけて釘を刺した。
「…ありがとう。キーナ、リタさん。マントは本当にヤバい時だけにします」
「「いーえ。ふふっ」」
ハモらせて互いに笑顔を交わすリタとキーナ。
「なんだか二人で仲良くなってない? ハブですか!? 私、省かれてんの!?」
「「いーえ」」
◆
「総長! 大変です!」
「なに一体どうしたの。君が慌てちゃって。珍しい」
「魔法器械コンペティションで遂に我々が求めていた物が!」
「何ィ! 見つかったのか! 方法が!
「魔石内部への刻印……それによる魔石内部空間の分割……我が結社長年の悲願が叶う時が来たんですよ!」
「あぁ……遂に来たのか……我々ではどうしても辿り着けなかった森人族の極地……〈賢者〉への道は、今開かれた!」
◆
「へぇ〜あの〈勇者〉のミヤフィちゃんが魔法器械コンペティション優勝か……! どれどれ……対称属性の同時発動!? 大空と大地も……発動してる! これなら行けるかもしれない!」
今は家にいるから連絡できないが、週明けにでもミヤフィに教えを乞おうとしている少年。
「父さん、これ見て!」
「ん。なんだポール。フェンエフィー式ピアノはお前にはまだ早……これは! 早速教えて貰ってこい! 100万ポフまで出していい!」
「えぇ、そんなに!」
「この技術さえあれば宮廷御用達だ! お釣りが来るぞ! そしてお前は楽器職人としてさらなる進化を遂げるだろう!」
「……すごいと思ったけどそんなに……! 分かったよ! 協力してもらえるように掛け合ってみる! それに彼女、すごく型破りだ!」
「そうか……それは、先代勇者様が言うなら『ロック』ってやつだな」
「『ロック』……かっこいい言葉だね!」
◆
「ダールグリュンが!? この技術は!」
「左様でございます。〈無限魔力〉への第一歩かと」
「オダワラ、そして暗部までもやられ……捨て置くべきかと放っておいたが、監視は付けて置いて損は無かった。マシュロを滅ぼしてでも手に入れろ」
「御意に」
「やはり勇者ミヤフィはミシリアの……いやミラディアの脅威だ。裏禁忌、発明は禁止である対称属性を完成させるとは……いや、生み出したのは我々ではない」
◆
各勢力が『基本四属性魔法匣』を狙っているなんて全く知る由のないミヤフィ一行の部屋。
早速、闖入者が現れた。何かを狙っているのだろうか、武器を持っている。力士が持つと武器になるものだ。
闖入者は《《武器》》を掲げて、こう言った。
「ミヤフィ、魔法器械コンペで優勝したんだって? おめでとう! 酒持ってきたぞ!」
「ケインさん、果実酒なんか持ち込んじゃって……ここ一応学生の家なんですけど」
「でも綺麗なメイドさんの家でもあるだろ……? リタっち、一緒に飲まない?」
「メイド道は主人の命令以外の飲酒はご法度です」
ぷいっっとそっぽを向くリタ。しかし最初に銘柄を見ていたのか、チラチラと果実酒を見ている。
「ミヤフィちゃん」
「リタさん、ケイン兄さんに付き合ってください」
「み、ミヤフィ様! め、命令というならしょうがないですねぇ~」
「(絶対お酒好きでしょリタさん……)」
「仕方ないですから、今から食事を作りますね~! 折角の《《いいもの》》ですし……メニューはお楽しみです」
「ミヤフィ、これ冷やせないか?」
「氷属性も使えるからって人使いが荒いなぁ。まあリタさん嬉しそうだし良いですよ」
「冷えた果実酒は最高だってもんよ。あんがとさん! あ、一応レンモン水も持って来たぜ。5歳だもんな」
30分後。果実酒とレンモン水が冷えたころ合いにリタ渾身のおつまみ(食べ盛りの子供も満足)が完成した。
「これは地鳥の軟骨の手羽先!? こっちはキノコパスタ!? 魔大豆のカリカリ揚げ!? こっちは……サラダだ。 そしてなんだこのヤカンは!?」
「リタさん、魔大豆は好きですけどこれ統一感が無さすぎないですか!?」
「リタさん、これ重たくないですか!?」
「この組み合わせが最高なんです。ささ、頂きましょう。今日はお酒が入りますので、『星銀食器類』は使わずに普通の銀食器類です」
「「「「母なる大地に祈りを」」」」
「かぁ〜この一杯が最高だー!」
「ミヤフィ、おっさんくせぇぞ……ほい、魔導器械屋ダールグリュンの跡継ぎに乾杯」
「乾杯」
「……知ってたんですか?」
「……いや、皆がキミらのこと勇者っていうじゃん。ちょっと調べさせてもらった。そしたら皆ミラディアから来たって言うの。オダワラも倒したんだって? そりゃあ変質魔力やスタンピードだって問題にならないわな。こうしてキミらと話してるのも後ろめたい気がしなくもないな」
「全部調べてる……」
「ケインは私達のことをどう思っているのですか?」
リタがケインに訊く。その雰囲気は少しだけ鋭かった。
「そ、そりゃあもちろん、力を当てにしてる。冒険者としてはな! それと……」
ケインがリタからチラチラと目を逸らし、少し狼狽えた。ミヤフィとキーナは察した。ここは煽るしかないっ!
「「それと?」」
「リ……皆とは仲良くしたいと……思ってる……」
「(ヘタレたな)」
「(ヘタレたね)」
「へぇ〜ケインさんありがとう! 私もケインさんは頼りにしてるよ! ねえキーナ!」
「うん! 何しろリタさんが信頼してる人だから! もう愛称の呼び捨てだもんね!」
リタが爆発した。
「な、なななななな、何を仰るかと思えばミヤフィしゃま、ケイン、さんとはそのような親しい仲ではあ、ありませんよ?」
リタさん顔が真っ赤だぞ〜とキーナと笑い合うミヤフィ。それに噛みまくりである。女子校卒か何かか?
「……(ショボーン)」
ケインはリタに仲良くないと言われてショックを受けている。ヘタレなければいいのにと苦笑いするキーナ。先が思いやられる二人組だ。
「ミ、ミヤフィは好きな男の子とかいないのか? 学校行ってるんだろ?」
ケインがミヤフィに反撃する。ケインとリタはお互いに一目惚れ……だと思うが、ミヤフィの一目惚れといえば……
「ああ、エクセリア=スパリアー先輩ね。かっこいいんだよ!」
あれ? 意外と普通の反応だな?とケインは思った。絶対恥ずかしがってキャッ!となると思っていたのに。
「学食で会ったんだけどね? まずカッコイイの!顔が! ウィンカイルの制服って、かなり気位の高いパーティとか式典にも着ていけそうな感じなんだけど、制服にというか逆に制服が着られちゃってるんじゃないかって思うくらいかっこいいんだよ! そして声もいい! やーあんなイケメンがいるとはマシュロには本当に恐れ入ったよ〜云々」
「まさかミヤフィが面食いだったとは私も知らなかったよね〜。まあ身体は4歳くらいだから、そんなもんかもしれないですね」
「子供恐るべし、ですね」
その後、恋バナやケインのクエスト談義で夜は更けていった。
そして翌週。ミヤフィは魔導器械コンペティションの優勝とはどういうことか思い知ることとなる。
次回、ミヤフィがアレを作ります!
感想、ブクマお待ちしております!




