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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
3章 魔力の奔流に流されて 
56/66

魔法器械コンペティション

ステイホーム後半戦の助けになればと頑張りました。魔法器械コンペの結果や如何に。

 ミヤフィが魔法器械を完成させて一週間。待ちに待ったこの日がやってきた。

 ウィンカイル魔導学園の魔法器械コンペティションが始まろうとしていた。ミヤフィが持ってきた魔法器械には大きな布が張られていた。まるで車のような大きさである。布の裾から黒染めの鉄がチラリと顔を見せ、新品の回転機械のような光沢を放っている。


 ちなみに製作開始からはリタとキーナにも何を作っているかは見せていない。材料の調達費用の話だけして、後は当日のお楽しみだと隠し通してきたのだ。

「こんなに大きいの、どこから持ってきたんだろう……」

「鍛冶用の鉄鉱石を買っていたのは分かったのですが……いったいどうやって加工したのでしょうか……」


 中庭に張られている天幕の下には、生徒から教師まで、それぞれが自分のブースを持ち、机の上に魔導具を乗せているが……地面に石を置きその上にスライムクッションのマウント(ここ一月、何故かスライム素材が値下がりしている)で魔法器械を設置しているのはミヤフィだけだ。


(やっぱり視線感じるなぁ……流石に大きかったか。まあ注目を集めればそれだけ優勝も近づくというものだね)


 ミヤフィはフンスと解説のための心の準備を整えた。


「それでは第173回ウィンカイル魔導学校 魔法器械コンペティションを開催します!」

 わぁ~っっと歓声が上がる。そして全員が一斉に魔法器械のヴェールを取り払った。ミヤフィはほかの人が製作した魔法器械にも興味津々だ。


「ひとまず隣の人のを見てみよう……」


エントリーNo.20 フェリージカラク

「大地属性上級魔法〈花咲か妖精(フラワートルマリン)〉の発動が出来る魔法器械【フラワー・フェリーチェ1号】」


「すっごい! 魔力を流すだけで魔法発動できるなんてらくちんですね!」

「あっ……ありがとう。あなたの魔法器械は……大きいのね。これは……箱? 筒?」

「どういう魔導具かはお客さんが来た時のお楽しみでおねがいします! 隣なので説明は聞こえると思います」

「うん、そうね。でもその……名前はなんていうのかしら。何をするものなのか……本当に分からない」

 そうでしょうそうでしょう……と言いかけたところで、ミヤフィに対して見学者が殺到した。

「早く説明してくれー」

「なんだこのでっかいの!」

「何をする魔法器械なんだ!?」


 やれやれ、とその魔動器械の前に立ったミヤフィは解説を始めた。観客は息を呑む。


「これは……川がなくて水車を設置できない場所でも動力を得られる魔法器械【魔法水車(マナ・ヴァサーミュ)】です」


 エルデ初の魔力式原動機である。


「「「「?????」」」」


「……あれ? 反応薄くない?」


 皆は首を傾げて固まっている。

「……水車って?」

「やっぱりこの世界って水車無いの。水車が無ければ回転を利用した道具も無いんだ……。じゃあ小麦ってどうやって小麦粉にしてるんですか?」


「そりゃあ……めちゃくちゃ大きな樽の中に小麦と石を入れて、大空属性上級魔法〈逆巻く竜巻(デス・トルネード)〉を皆で打ち込んでんだよ。そんなことも知らなかったのか?」

「大空属性魔法使いは高級取りだぞ〜?」


「うわすごいのか凄くないのかわからない方法!? そのやり方だと砕けた石が混ざるんじゃないですか?」


「石で小麦を砕いた後、大地属性初級魔法〈振動波(クエイク)〉で揺すって分離してるんさ。ふすまは上に、石が下に行くだろ?」


「いや行くけどさ! 何もかも魔法かよ! いや比重で分離してる辺り微妙に科学的!?」


「竜巻で済むんだから小麦を砕く器械いらないんじゃない?」

「いらんよな」

「いやいるでしょ! 考えてみてくださいよ!」

「うーんいらんかな」


 収集がつかなくなってきたところに来訪者。

「ミヤフィ君のブースは賑やかだねぇ。一体何を作ったのかねぇ? 解説して欲しいねぇ」


「ニンジ教授!」

「ニンジ先生!」


「よーしそれじゃあ解説しますね!!!!」

「皆よく聞くようにねぇ。きっとねぇ、この魔法器械は『必要とされている』のではなく『新しい必要を創る』ものだからねぇ」


 ニンジ教授の援護射撃に感謝しながらミヤフィは解説を始めた。


「この魔法器械、色々特徴がありますがの最大の特徴はなんと言っても『魔力さえあれば誰でも使える』点にあります。皆さんはウィンカイルの学生だから魔法は使えて当たり前ですが、上級魔法が何故上級魔法と呼ばれるか、今一度思い出してください。魔力量、魔圧、魔法の処理能力、詠唱の知識、魔力操作。この全てが高レベルじゃあないと〈逆巻く竜巻(デス・トルネード)〉なんて使えませんよ!」


「うーんたしかに。辺境の村じゃあ製粉はまだ手でやってるとこもあるらしいって聞いたなぁ」


「そう。そこでこの魔法器械です。魔法器械、いや魔法陣の最大の特徴、それは『一定魔力を流さないと効果を発揮しない、又は壊れてしまう』という点。それを防ぐために魔法器械には魔力調整の魔法陣が組み込まれている。魔法の制御なんて必要ありません。魔力を流すだけで誰でも製粉できるようになる。それがこの『魔力水車(マナ・ヴァサーミュ)』なのです」


「なるほどな。でも、その丸い棒が回るだけでどうやって製粉ができるんだ?」


 ミヤフィはほくそ笑んだ。デモンストレーション用の石臼と殻付きで保存されていた小麦を取り出す。


「そう来ると思って石臼も用意しておきましたよ! ここをこう連結して、これで回転が臼に伝わります。臼のここに小麦を入れれば……砕けた小麦が出てくる。本当は『魔力水車(マナ・ヴァサーミュ)』を複数台用意するけども、今回は石臼を外してこの容器を連結します。容器は回転中心から少しずれているので回すと振動します。このように。容器が振動して身と殻に分かれて…まあこれは〈振動波(クエイク)〉でも出来ますね。こちらは魔力を流しておけば勝手に振動するので出力調整とかは要らないんですけど」


「す……すげぇ! 今までは魔法の発動が出来る魔法器械ばっかりで、精々が〈水球(トーチ)〉を使った水洗トイレとか炎属性魔力のオーブンだったが、こんなに応用が効くとは……!」


「回転すると言うだけでこんなに凄いのか……一体何の魔法で動いているんだ」


「きっと複雑な魔法陣で動いてんだべ」

「んだんだ〜」

「田舎か! でもきっと上級魔法だな! 動いてるからな、大空属性上級魔法〈逆巻く竜巻(デス・トルネード)〉を使ってるって言われても不思議じゃないわ!」


 『上級魔法』と言われた瞬間ビクッとするミヤフィ。

「……やっぱり言わないとダメですよね。こいつ……実は……」


「「「「「「「実は……?」」」」」」


「氷属性初級魔法〈水球(トーチ)〉です」


「「「「「「トーチィ!?!?!?!?」」」」」」


「初級魔法じゃんかよー! でもすげぇ!」

「なーんだ、オリジナル魔法じゃないんだ。魔法器械としてはB級か」

「でも役に立つな。金賞はともかく独創賞は貰えんじゃないの?」

「あー魔法器械コンペじゃなかったら優勝かもなぁ」


 口々にアイデアを惜しむ一同。何故なら魔法器械コンペティションは魔法を発動するための器械の出来栄えを競うもので、例えば隣の魔法器械【フラワー・フェリーチェ1号】などが高得点となる。上級魔法を発動できる魔法機械は多いが、【フラワー・フェリーチェ1号】は超高効率なのである。

 ……少々大きいので取り回しに難はあるが。


「いやー、どうしても動力《《機械》》を作ってみたかったのでつい出しちゃったんですけど、やっぱりそんな評価ですよねー。うん知ってた。魔法器械コンペティションの募集要項にも書いてたもん。いいよアプリケーション付きで誰かに売り込むしかなくなってきたなぁ……」


「流石にミヤフィ君でもねぇ〜。魔法発動体としての魔法器械の高みはまだ早かったねぇ」


 お空を見上げるミヤフィ。結構気合を入れて作ったので精気が抜けていた。


「ミヤフィ口から魂が出てる!?!?」

「キーナさん、お任せください!」


 リタが押し込んだ。


「はっ!? さっきまで見えてた私の顔は!?」


「私が戻しました。ミヤフィ様、これで終わりですか? 小麦を挽くだけで? 地球にはもっと素晴らしい使い方がありましたよね?」


「……だって自動石臼が受け入れられなかったら工作機械だって……」


「ミヤフィ様、この世界には車輪位しか回転機械が無いのです。エア教授からもらった魔石、結構凸凹してましたよね?」


「確かに魔法陣を理解したのはいいけど、凸凹してて彫刻は難しかったなぁ……あ、そうか! この世界の加工技術ってそんなもんか!」


 ありがとうリタさーん! と言いながらミヤフィは走り出した。

 

 数十分後、ミヤフィは槍を何本かと鉄のインゴットと魔石を持って帰ってきた。


「さて、機械加工を始めますか!」

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