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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
3章 魔力の奔流に流されて 
54/66

エクセリアから見たミヤフィ

どーもー。一瞬だけ視点がエクセリアパイセンに移りますね。

学園編、魔道具コンペティションの部です。

 午後の授業が始まって、先生が板書を初めた。思考に余裕ができたエクセリア=スパリアーはミヤフィのことを思い出していた。


 凄い幼女と会った。どう見ても4、5歳辺りなのに、この世界では最先端の従者「メイド」を連れた「勇者」だ。


「俺が子供の頃なんて鼻垂れ小僧だったぞ……!? 何だアレ!? 俺があんなに召使いどもに言っても全く理解されなかったメイドを連れているだと!? 羨ましい……!」


 エクセリアはかつて通っていた街を思い出した。大通りを挟んで連立する電子機器店、ゲーセン、レトロゲーム屋、コスパ重視系飲食店。大通りは休日には歩行者天国となり、写真を撮ったり斜め横断したり。そして裏通りに入ればケバブや安売りPCショップ、そして……


「メイドカフェ……あそこに行こうとして、ホコ天感覚で道路に出たらスポーツカーに轢かれたんだよな……今となっては懐かしい。確か代休だったんだよな……」


 そして、()()()()()()()と出会い、強力なステータスとスキルを貰った。さらにはイケメンになった。


 彼が手に入れたスキルは『鑑定』『特技再使用時間短縮』『位階向上速度上昇』の三つだった。


 彼には、この世界の人間すべての『ステータス』が見える。


 転生した直後、視界に広がった〈メニュー〉や〈インベントリ〉〈スキル〉の窓。この世界は、レベルとステータスに支配された世界だと、彼は確信した。


 実際そうだった。最初は1だった自分のレベルも現在47。知り合った中で最も高いのが歴戦の戦士であるヒュドリィ戦士長ですらレベル26止まりなのだ。初めて会った頃からレベル差のステータスのおかげで戦士長には負けたことがないし、攻撃力だけで言えば、現在は転生直後の100倍のダメージを出せるようになっている。

 


「(真名ミヤフィ=ダールグリュン。色々な情報がブロックされたが……HPと体力は年相応、レベル3の平均水準だったのに、なんだあのMP量と魔法力の値は……?)」


 表示されたステータスは以下の通りだった。

名:ミヤフィ(真名:ミヤフィ=ダールグリュン)

年齢:4

職業:勇者

HP:52

MP:99407

体力:27

魔法力:26790

装備:制服、(勇者の???)

スキル:???

 はみ出している。この世界の人間からは。なんだあの気が狂ったようなステータスは。


 装備欄はなんらかの力で秘匿されているし、そもそもレベル100でもこの魔力系ステータスの1/100程度だろう。


「敵対するのは絶対に不味い……勇者ってあんな化け物ばっかりなのか……!?」



 勇者の力そのものも恐ろしいものだが、そんなバケモノの勇者が戦う「種族の危機」とは何なのかと、戦々恐々としながら一クラスを終えた頃には、精神的にかなり疲れていた。




 放課後。


「魔道具作るぞー! 先生に質問に行くぞー!」


「おー!」


 ミヤフィとキーナは職員室へと向かっていた。この学校の先生は必ず研究室を持っているのだが(ちなみに新任のリタも含めて)放課後は一先ず職員室に集合してから研究室に行くことになっている。


 教師終礼が終わるタイミングで向かったのでリタは先んじて職員室にいる。ミヤフィは産まれたての子鹿のような足つきで何とか歩いている……が、リハビリのためなので仕方ない。


「お疲れ様でしたー」


 職員室にたどり着くと丁度終礼が終わっていた。机間のスペースはそれほど広くないのだが、リタが忍者のような体捌きでミヤフィを抱きかかえた。


「リタさんの動きが見えなかったんですが!?」

「いつか見えるようになりますよ。魔道具の先生へ質問でしたよね。ニンジ先生!」


「はーい? ニンジ先生でーす!」


「私、ミヤフィって言います! 新入生なんですが、魔道具コンペに出たいんです!」


「ほう、小さいのにいい心がけだよね……よく見ると、君が噂の新入生なのよね。何を聞きたいのかな?」


「じつは……魔道具の作り方を全く知らないので、初歩から教えて欲しいんです!」


 ニンジ先生は一瞬きょとんとして尋ねた。

「何も知らない所からじゃあ……間に合わないんじゃないのよ? 1か月で……」


「だとしても、です! お願いします!」


「そう言って結局諦めた子ばかりなのよね……ならなら、この課題をやってみるのよ」


 コン! とニンジ先生が置いたのは、一粒の透き通った石だった。


「この石は魔力を溜め込む性質があるのよ。そしてこの紙に書かれているのは魔法陣。これをこの魔石に彫刻して魔法発動体にすること。それが授業の条件なのよ」


 魔法陣は複雑な形状であるだけでなく、どうやら"書き順"があるようだった。濃さの違いで木墨の塗り順が何となく分かるものだったのだ。


「分かりました。挑戦します」


「口ではなんとでも言えるのね。それが出来てから授業を始めるのよ。遅くなればなるほど制作期間は短くなる。それを心に刻むのよ。勿論出来なければ正課での授業を待つことになるのね」


「アドバイスありがとうございます。では、失礼します」


「精々頑張るのよ」


 ミヤフィは早速自室に帰り始めた。







 ……リタに抱えられて。

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