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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
3章 魔力の奔流に流されて 
50/66

文系苦手ガール

お久しぶりです。遅筆の極みおじさんです。タイトルが詐欺くさかったので変えてみました☆



 リタさんが・・・キレた!? いや、泣いている!? なんだこれ!?


「ミヤフィ様はこれから人族の危機を救う重要な方なんです! そんな人の病気が治せないだなんて、冗談も程々にしてください! これまでも、こんなちみっこい子供が受けてはいけない悲しい事ばかりで、これからも・・・」


 リタさんが泣き、喚いている。しかし、いつもは物静かな人が取り乱したときのギャップもまた、ユチローには、いや、医学には通じないだろう。


「・・・ミス・リタ。世の中には『どうしようもないこと』というものがあります。申し訳ないが、今回がそれだ。恐らく治せる人など一人もいない。成長痛みたいなものだからだ」


 現象があって、そこに解があるとは限らない。解がないことが証明される事だってある。世の中なんてそんなものだ。でも、ほとんど時間は経っていないけれど、これ以上見てられない。


「ですけどっ! そこを何とかす――」

「リタさん」


 泣きわめくリタさんはこっちを向いた。向かせた。

「癇癪を起こした子供みたいですよ。落ち着いて。キーナもユチロー先生もびっくりしているじゃないですか。まだ万策尽きている訳じゃないんですし、とりあえず話は最後まで聞きましょうよ」

「・・・難しい言葉をしってるんでずね、ズズッ、ぞんなの教えましたっげ」

「教養の一端です」



「グズッ……」

「リタさん、ハンカチだよ。はい……うぇ」


 キーナがハンカチを渡して、リタさんが鼻をかんだ。渡しておいてうぇって言ったよこの娘。私も言うけど。

 私のことでリタさんが泣いてくれるのはありがたいし、気持ちもわからなくはないような気がするので後で甘えておこうとは思うんだけれど、先に聞きたいことが。

「先生」

「はい」

「さっき『成長痛みたいなもの』って言いましたよね。どういうことでしょうか?」


「もちろん、年齢にそぐわない大量の魔力使用で体が『運動神経』よりも『魔法神経』を優先した結果だと思われる、という意味です。この世界に『神経』何て言葉はありませんけど、診察の結果身体の不調ではなかったのと、勘です。さっきの魔法、前より調子が良かったのではないですか? 魔法に向いている身体になっているんですよ。まあこれから体が成長すれば、同じ量の魔力を使っても恐らく大丈夫? だとは予測できますが・・・しかし、しばらくは魔法を控えた方が良いことは確かです。あと身体もできる範囲で動かしてください。リハビリです。完全に動かない訳ではないですよね」


「なるほど・・・魔法を控えて、運動しろ、ね。でも私って魔法が使えないと足遅いポンコツだし・・・」


リタさんに抱えてもらわないと変質魔力事件も解決できなかったし。昔はパルクールとかやってたけど、この身体足遅いから。


「以上診察終了。・・・足遅いとか知らんわ。走れ。ここからは転移者仲間として話すけど、せっかくだし今から鍛えるというのはどうだ? 子供だから運動神経も魔法神経もバランスよくやればこんなことには多分ならないぞ。とりあえずこんなお達しが来てて・・・学校に行って体育で運動すれば良い。ほら、これだよこれ」


 そういって魔方陣封がしてある封筒を開けて先生が差し出したのは、一枚の紙。それも上質なやつ。勝手に開けていいのか?


「なになに・・・勇者殿とキーナ殿がウィンカイル魔導学校に通う場合、特例特待生として入学金、授業料免除、図書館の初段免許免除につき、是非入学ください? ただし勇者殿は在学中に有用な魔法器械を一つ考案し、権利を学校に譲渡すること・・・?」


 交換条件みたいになってて借りにならないのは素晴らしい気がする。


「君らがここに来るかもと思って上官が置いていった。攻撃から街を救った恩賞の代わりらしい」


 完全に勇者というよりは魔導具ダールグリュンの娘として見られている文面だ。いやそれよりも。

「今までの努力はなんだったんだ」

「うんうんこれもまた人生経験だね」


そういえば私たち幼児向けアニメのリバイバル放送が流行った世代だったなこの後がんばって歩きながら学校に向かった。




 という経緯で学校に通い始めて全然早くないが早一時間である。この身体はまだ半刻以上の授業に集中できないようで、六分の五刻の時間がある算術の授業のうち半刻を過ぎてから五分間だけボーッとしてしまった。内容が計算ドリルをやって最後に文章題を解説しただけなので退屈なのもあるだろう。その後は集中できて、休み時間を迎えていた。先生はどこかにいったので、授業ごとに先生が変わる高校のような様式らしい。


 そういうわけで、先生がいないことを良いことに私とリタさんはそれぞれクラスメイトに囲まれていた。

「本当に四歳なの~?」

「はい! 四歳です」

「大人っぽい」

「私よりけいご使えてるーすごーい!」

「本当に四歳なの?」

「実は作者もうやむやみたいでやっぱり五歳だそうです」

「へーむずかしいんだね」

 そんな下らない会話から始まった質問攻めタイム。ほとんどがこんなのだったけど、印象に残った質問がいくつかあった。


「ミヤフィちゃんのお父さんってあの『魔道具ダールグリュン』のオーナーなの?」

「そうみたいだよ。パパの遺したリュックの中身は全部魔道具だったんだ。でも使い方が意味不明なのばっかりで・・・使えるのは一杯売れたから、きっとコレクションだったんだよ」

「すご・・・い? こんど見せて!」

「いいよ」


「勇者だって本当?」

「そうみたいだよ。嘘が吐けない羽ペンを持ったら勝手に書いたんだ」

私がそう言うと突然教室のドアから眼鏡風魔道具を着けた人が現れて言った。

「その話知ってるよ! 人族は滅亡の危機なんだって!」

「「「な・・・なんやってー!?」


「足が動かないの?」

「魔法の使いすぎなんだって」

「「え゛」」

「皆には関係ない病気みたいだからそんなに心配しなくても大丈夫だよ。でも暫く魔法はあんまり使わない様にって言われた」

「へ~」



 印象に残っていたのはこの三つで、後はよくある質問ばかりだった。疲れたー。

 そこに畳み掛け、止めの国語の授業だった。やばい。これはやばい。文系科目は苦手なんだ。絶対寝ちゃう。

「お早う。はーいじゃあ席について・・・なんだこの固まり」

 先生が来たようだ。こっちを見て人だかりの理由が理解できないらしい。

 先生が教壇に立った途端、鐘が鳴った。タイミング完璧か。ああなんだか眠気が。家ではあんなに本読んでたのにね、眠・・・


「今日は新しいところからだー。教科書五十七頁の「迸れ情熱の「パトス」」を開いて。じゃあ・・・お、転校生だ。ミヤフィさん? 立って読んでくれよな~」


 あ、当たった。眠くてもそういうのは分かるから五十七頁を開いてっと。

「迸れ情熱の「パトス」。作者、オーサム=ビガザイー」

 何かエロいタイトルだな・・・笑いそう。

「パトスは怒りを通り越して、その場に突っ立った。女王様は暴虐の限りを尽くす悪女だ。昨日もまた五人も骨が抜かれたらしい。王都へ買い物に来たパトスは酒場の噂話で聞いた。この国の女王様は一日に五人の生け贄を選んでは骨を抜いて行くと人夫達が密かに言っていた」

「はいそこまで。結構読めるじゃないか。文学も行ける口か? 次はエルゼ=フローリア。続き~」

「はい。パトスは王城に乗り込むと、謁見の間に・・・」


 そして朗読は続き、一段落を読み終わったところで恒例のあれが始まった。

「じゃあここの「酒場の噂話で聞いた」という部分で作者が言いたかったことはなんだ? じゃあ誰に当てるか・・・転校生には初回サービスしないとな。なあ皆?」

皆コクコクと頷いていた。嘘、マジ!? わからないよそんなの!

「・・・分かりま・・・ハッ!?」

分かった、分かったぞ!

「『主人公のパトスは成人であり、街に着くなり酒場に通うろくでなしだった』」

「いや違うだろ」

 ・・・国語は苦手だ。

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