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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
1章 加速器のビームの向こうで
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身体の強制力

「ミヤフィちゃんお腹いっぱいでおねむさんね〜」


今僕は生後三日の赤ちゃんな訳ですが、さっきまできちんと赤ちゃんしてました。いまは、あれ何をしてたんだっけ?

・・・ねむい。ねよ。






半年ほどして。目が開くようになって、この世界の言葉も聞き取れるようになった頃。新しい身体について分かったことがあった。


 意識は身体に引っ張られる。

 どんなに意識がはっきりしていようと、赤ちゃんの内は赤ちゃんらしい行動になってしまう。それは生理的欲求、つまり食欲、睡眠欲、排泄欲等が満たされない時と赤ちゃんが絶対にしないような行動をしようとすると起こる。例えば立ち上がろうとしたり、意味のある言葉を喋ろうとしたり、思考能力の限界を超えたり。特に生まれてすぐはとても酷かった。論理的思考力の全面封印だ。体が上手く動かないというのではなく、行動の意思が勝手に無かったことになってしまう。つまり。


「あーうー キャッキャ」

 今僕は紙とペンをください。後生ですから。と言おうとした。だが出てくるのは子供らしい可愛い笑顔と(自称)可愛い声だけだった。

「お腹減ったんでちゅかー?それにしてもミヤフィちゃんはかわいいでちゅねー。ママがおっぱいあげましょうねー」

 はあ、ママに抱っこされると安心するなー。この世界での母親は銀髪で背中まで伸びる髪に紫の優しそうなお目目をしている。身長は父親より五センチほど低いだろうか。

 父親は一緒に部屋に訪ねてくる友人らしき人々から平凡平凡言われてるので多分中肉中背なのだろう。前世と同じくチビではなさそうなのでホッとした。

 今は思考能力は制限されていないらしい。条件はあるけど。積分がいつも通りに出来た。ただし日本語でだが。

 ここの言語は英語に似ているっぽい。だがまだ日常会話程度しか覚えていないのでここの言葉で積分は出来ない。





 あ、もう限界。お腹すいた。

 思考のし過ぎも強制行動の対象で、無理矢理休憩させられる。疲れるんだろうね。こうなれば最早打つ手は無く、身体が勝手にお腹空いたよー。と泣き始めるのだった。


「はいはい、ミヤフィちゃんお腹空いたのねー?ほーらママのーー」


 もちろん今は女性の胸はご飯としてしか見れない。そしてご飯(前世ではご褒美)を食べ終わったら眠くなった。もちろん強制的におやすみだ。







 そんな日々を繰り返して。僕は二歳になった。もう言葉は話せる。

 赤ちゃん強制は一歳までで終わった。簡単な言葉が喋れるようになったのは一歳二週間ごろで、このころにはもう言葉は覚えていたのだから、当然疑問に思った。

 そしてある日。

「ママー、おほんー」

 文字を覚えるために本を読んでもらおうと「ママー、お本読んでー」と言おうとしたとき、閃いた。自分で本を取りに行こうとして、立ってしまおうと。あわよくば走ってしまおうと思った。

「あらー、ミヤフィちゃん、偉いのねー。お本、読んであげますねー」

 ママの透き通るような声が返事をくれる。母親って安心するものなんだなと改めて思った。

「とるー」

「あら、どれがいいの?」

 そしてよれよれと赤ちゃんにしては強く立ち上がって、走ろうとした矢先、それは起こった。

 てちてちてち・・・

 あれ、走れない!? どうしてだ!? 身体が走ろうともしない――!? それに――

 ――うん、うまく歩けてるな。

「(な、何!? 走ろうとしたことが無かったことに!?)」

 ということがあった。そのあと寝てしまったので時間が開いてから考えることになったが、どうも年齢のせいだと考えていたことは何らかのよく分からない強制力のせいだと考えて、身体の行動を強制することからこれを身体の強制力と適当に名づけてみた。


 よくよく考えると、今までは急に考えることが変わる事がよくあった。積分を考えていたらいつの間にかフーリエ展開とか不確定性原理とか考えていた時もあった。部屋の外を見ていたらウサギを目で追っていたと思ったら部屋の中をはいはいしていたとか。集中力も封印されていたようだ。

 かつて友人には変態だと言われたけど、学問ができないのは大いなる苦痛である。

乳母さんは居ません。

お父さんは普通な感じの人ですが・・・


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