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異世界の運動方程式  作者: 見開き7頁
二章 魔力の奔流の入り口にて
20/66

vsオダワラ(3)

毎度お待たせしております。

これからテスト期間でしてもっと遅くなりそうです。


用語解説します。

地球ではコリオリの力の影響で物体は真下に落ちません(手抜き説明)

軌道エレベーターの建設でも邪魔になる力なんだとか。


 いきなり現れた狂人達と戦いになった。これでどこかの機関の「部隊」なのだからその機関はさぞおかしい所に違いない。

 パパが啖呵を切るとリタさんが左、ママが右に散って行って、敵も同じように散って行く。考えることが同じだったのか、都合良く別れてくれたようだ。

「とりあえず、馬車から離れるぞ」

 パパが言った。私は魔力が上手く扱えるからといって戦えるわけではないけど、馬車の近くで戦えない事くらいは何とか判る。壊されるから。頷いて、正面から来る敵の方へ歩き出す。

 相対する敵は二人。あちらもゆっくり歩いて来る。一人が口の悪い眼鏡男子でもう一人がさっきの魔圧の人だ。さっきの言いようからするとかなりの手練らしい。

 そう言えば、さっき魔圧に何か凄いものを感じたような気がする。強者のオーラ的な。

 ・・・張り合ってもせんなきことだね。

「で、どうやって戦うの? 私、魔法は使えないよ」

 魔力は自由自在だけど。

「なに、簡単さ。固有魔力を使えばいいんだ。『二つ』、あるんだろ?」

「いや、そうは言うけど・・・」

「じゃあまず収束からやってみなさい」

「・・・うん?」

 固有魔力を出す。何となく収束と領域の使い方が分かった。どうして分かったのだろうか? 分からなかったがとりあえず魔力を収束させてみた。純粋魔力と同じようにまずは身体の外に出す。そして掌の上の一点に収束。色のついた魔力が一点に集中し始めた。

「次は領域だ。今扱ってるその魔力を使いなさい」

 今度は領域か。言われた通り、とりあえず球形の領域にしてみよう。領域を決めて魔力を動かすと、一点に集まっていた魔力が一瞬にして球形にまんべんなく広がった。うん、綺麗だ。


「・・・うん。そうだそうだ。どっちも出来るな? じゃあまずは魔力をたくさん収束して貯めてみろ」

「・・・はあ?」

「いいから、ほら、貯めてる間は守るから!」

 理由を聞きたかったんだけど。

飼い狼()が手品で餌を隠されたような顔するな。見ろ、敵が来てるぞ? やるんだ」

 既に敵との距離はさっきの半分位になっていた。やるしかないか。

「・・・うん」


 固有魔力を生成した側から収束させる。こうなるならあらかじめ固有魔力を作っておけばよかった。

 全力で作って少しして、量が多くなってくると魔力が一点に集中しなくなった。さっきは無視できるレベルだったコリオリの力が作用し始めたのだ。

 その力の影響で軌道がずれて、掌の上に太陽と幾つもの彗星が出来始める。自画自賛になるけど、ほんのり紫がかって綺麗だと思う。形がロマンチックだ。

 

 中々一点に集まらずに難儀していると、彗星の様になっている所がそれぞれ集まり出した。ついには地球を中心として周る月のようなものが掌のうえに出来上がった。


「なら後はこれを中心に持ってくる!」

 月を中心に持っていくようにすると、地球とくっついて収束が終わった。二つをくっつけるだけなら楽チンだね。掌の上には家で使っていた量とは比べものにならない量の魔力が収束されている。家ではダメージになるような量は使えなかったから、限界まで魔力を出すのは、魔力に目覚めたあの時以来だ。あの時は気絶したけど、今は一気に出せる限界が総量を超えないからそうはいかない。

 べ、別に瞬間魔力量が増えてない訳じゃないんだからね?


「パパ、次はどうすればーー」

 収束だけじゃ何も出来ない。収束したのはいいけどその先に出来ることがないのだ。収束しろと言ったのはパパなので、この後どうするかも考えているはずだ。

 そう思って右を見たが、そこにパパは居なかった。


「前か!」

 パパはすでに戦っていた。口を出せる状況じゃない。魔法で壁を作ったり炎を出したりして敵を二人同時に牽制している。互いに魔法を撃ち合っているので遠距離タイプに近距離タイプが接近してゲームオーバーとなってはいない。だけど流石に二対一、パパは時々攻撃するものの、防戦を強いられている。

「火よ、彼を焼き執拗なりて、我の意に沿え、『抱擁(エンブレス)』! 行けっ! ッ!! 我を守れ、『障壁』!!」


 魔法の詠唱で次の指示どころではないようだ。攻撃してすぐ防御を繰り返していた。だったら次にやる事は自分で決めなくてはいけない!

 今しないといけないのは戦闘に勝つこと。負ければ死ぬ。勝っても死なないとは限らない。そうさせないためにはパパ一人で戦わせてはいけない。私を守るために受けなくていい攻撃も守っているのか、かなり疲れているからだ。


 それなら、戦闘に参加して攻撃しなければならない。

 どう攻撃するのか・・・身体は、まだ幼くて無理。なら。

「この魔力をどうするか・・・これで魔力ダメージを与えればいいんだよね?」

 攻撃手段として手っ取り早いのは魔法にする事か。でも魔法知らない。そこでやっている戦闘では何か魔法陣的なものが光っているけど、それも知らない。


「だめじゃん!」

 魔法は全く使えない。今できることは何だろうか。右手には超高密度の魔力。得意なことは体外での魔力操作。


「・・・これを敵にぶつければいいのか!」

 パパの炎の魔法も敵の氷の魔法も発射してぶつけないと効果がないみたいだし、逆にただの魔力でもぶつければいいんじゃないかという仮説。経験則だけど最悪魔圧でダメージを受けることもあるんだし、魔力でもいけるでしょ!


 どの様に攻撃するかだけど、今戦場(いくさば)には遠距離タイプしかいない。つまり近距離攻撃をすればいい。今こそパルクールで鍛えた運動性を活かす時よ。昔は人ごみを避けたりステージパフォーマンスでしか役に立たなかったけど、今なら魔法を軽く避けることが出来るのではないだろうか。見た所弾速はエアガンの半分位だし。うん余裕だ。


「形は・・・使いやすく、剣かな?」

 『領域』を木刀の形になるようにしてみた。収束していた魔力がよく見知った反りのある剣の形になる。中では魔力が均一に広がっている。それでもかなり固そうだし、魔力密度は高い。パパには悪いけど、さっきの火の魔法なんかは余裕で切れそうだ。


 再び戦場(いくさば)を見ると。

「弱いです。正直余裕ですね・・・親がこんな状況でも戦えないクズ娘を守る意味があるんですか? ボロボロの魔道具屋さん? 逃げようと思いません?」

 膝をついたパパに話しかけるメガネ。パパはローブが所々破けている。壁が破られたか、防御し損ねたのか。

「くっ・・・娘はまだ教育が追いついていないんだ、魔法は使えん。ほっとけよ」

 ギラギラと敵を殺さんとばかりに睨みつけるパパ。あらやだかっこいい。


 私はそのパパの背後に隠れる。

「大丈夫だからな・・・パパの後ろに隠れてなさい」

「私も戦う」

「なんでだ」

「このままじゃパパ、負けちゃう」

 パパは子供の私を護ろうとしてくれるようだけど、既にボロボロで、これ以上二対一の状況を続けるわけにもいかない。

「それに、早くこいつらを倒して他を助けに行かないと・・・。パパ、この剣で私も戦うよ」

 最後だけ小声で言った。出来れば初撃は不意打ちが望ましく、私に攻撃の意思があると敵にバレるのは良くないからだ。え、不意打ちなんて男気が無い? やだなあ、今の私はクワト・・女の子ですよ?

 男気なんていらないのだ、はっはっは。


「ミヤフィ、その剣は・・・いや、剣なのか?」

 前を見ながらも、切っ先を見て目を見開くパパ。

「よく教えられずに領域のうまい使い方を考えたものだ。僕はあれを投げて領域で爆発させてくれればと思ったんだけど、そっちもいいな。だが剣? でいいのか? それを使うという事は近接戦闘をするということだ、小さなお前には危ない。やめるんだ!」


 パパは不安そうな顔をする。喋りながらも魔法をきっちり防御して、時折詠唱しない魔法を撃っている。

 メガネの攻撃は風と電撃が混ざったもののようで、障壁にぶつかる度パチパチ言っている。口の悪い魔圧の人は魔力を含んだ氷を飛ばしてきて、氷が当たるとほんの少し障壁を作る魔力の動きがどろっとしているような気がする。そういう効果なのか。

 私が出るのも危ないけど、このまま任せていてもジリ貧だ。だから。


「大丈夫、大っきいのに合わせて行くよ!」

 さっきからメガネからの風の攻撃が止んでいるので、次に来るのは大技だろう。それを防いで反撃、そして攻撃するのは口の悪い方だ!

 大技を出した後、すぐには魔法を撃てないはずだから、カウンターに横入りされる危険性が減る。それに私がもう一人を抑える間にパパが無防備なメガネを狙えばいいしね。


 瞬間、大きな魔圧が発生する。ドッと身体にプレッシャーが走り、私達はメガネに注目した。

 大技が来た!

「・・・混沌の徒となりて、彼に襲え、我の意の中で渦巻け逆巻け、『透明風槌(インヴィジブル・エア)』!」

 詠唱を終えると、魔力がメガネの杖の前に集まり、透明な塊となってこちらに走って来た。

 見えないけれどそこを中心に魔圧が高まっているので球の場所が分かる。速度も速くない。これは何がしたい技なのか分からないな。当たらないでしょ。


「・・・いや、『空気』が集まって魔法の『爆弾』になっている!」

「クウキ? バクダン? よく分かりませんが、避ければ馬車に当てますよ?」

「卑怯だぞ!」

 とは言うが初めから避ける気なんてない。

 どんどん圧力を高めていく魔力球。この爆発をまともに受けたら死ぬだろうな。

 だけど私はそれに刀を突き刺す。

「ミヤフィ!」


 魔力球が爆発し、土煙が上がった。

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