僕はソラ二号、幸せな猫なのです。
やあ、僕はソラ二号。
右の耳は短くて太く、左耳は長四角。左右で大きさの違う目。手足も長さが不揃い。
みゆちゃんが初めて編んだマフラーの模様。
「ソレ、お前ン家の猫? ヘッタクソ!」
お隣の魚屋さんの息子、チビ太がぶっきらぼうに僕を揶揄う。
みゆちゃんは悔しくて泣いたけど、結局僕は解かれないで大事にされた。
「ママー、ソラニゴウがよごれたー」
「アラアラ、ジュース零しちゃったのね~」
「おい、ゆきな。ソラ二号ドドメ色になっちまったじゃねェか……って痛ェな、みゆき!」
「チビ太、あなたが珈琲零したのがそもそもの原因でしょう?」
「アレは初デートの緊張でだな、……って、チビ太ゆうな! 今百八十あるんだぜ!?」
みゆちゃんも一児の母、言い返せるくらい強くなった。
チビ太は高校生になってから粘り強くみゆちゃんにアプローチをし、今ではみゆちゃんの旦那様。
珈琲染みを隠してカバンにリメイクされた僕は、今は娘のゆきなちゃんのお気に入り。
「シミ落ちるかしら……そうだ、ゆきな、可愛いアップリケ付けない?」
「ゆきな、ちょうちょがいい!」
太陽や花のアップリケもあるし、今度は蝶が仲間入りするらしい。
賑やかになるなあ。
僕は、幸せなカバン猫だ。