第一章まとめ
内容はリメイク前と変わっておりません
目覚めるとそこは部屋であった。自室ではない。ただの真っ白な空間であった。
俺の名前は稲妻 司郎 17歳高校生だ。受験ももう近いこのごろ気分転換にもと外へ出たのが運の尽きであった。信号を渡っている途中、信号無視をして車と衝突したのだ。そこまでで俺の記憶は終わっている。ならばここは病院なのだろうか、いや違う。なぜならこの部屋には出口が存在しなかったからだ。
俺がここはどこなのだろうと考えているとどこから落ちてきたのか1冊の本が目の前に落ちてきた。なんとなくその本を読まなくてはいけないような気がしてその本を開けてみると丁寧な字で短く説明のようなものが書かれていた。
『この本を手にするときあなたは地球では既に死んでいます』
それだけ書いてあり、他にはなにも書かれていなかった。なんていう説明文なんだ。この説明だけではなにも分からないし、ここが地球ではないようではないか。そう考えると本に新たな文字が浮かびあがってきた。
『YES,ここは地球ではなく、違う次元にある星です』
この本はどうやら思ったことに対して回答をしてくれるようだ。なら……なぜ俺はここにいる?
『Answer,通常ならば死後、虚無の空間に投げ出されることになりますがこの世界の神があなたの魂を引き抜きました』
なぜ俺を?
『Answer,神はとても暇でした。なので、この世界を面白くしようとあなたを転生させました』
なんて神だ、暇だからって……。俺はどうすればいい?
『Answer,この世界にダンジョンを作り襲い来るもの達を倒してください。また、この世界で死ねばあなたは通常と同じように虚無空間に投げ出されます』
なるほど。つまりこの世界でダンジョンを作り襲ってくるものは倒せということか、なかなかおもしろそうじゃないか。せっかくの二度目の人生は楽しまなくては損だからな。
「よし、分かった。俺にとって必要だと思われることをすべて表示してくれ」
『了解しました』
そう本から音声が発せられると本の中にどんどん文字が書かれていく。俺はその膨大な文字の量に圧倒されながら、
「ま、まあやりながら覚えていけばいいな。うん、そうしよう」
と独り言を発した。
『まずは初期設定を行ってください』
そう本が言うと目の前にウィンドウが出てきた。えーと、はじめは性別か……。まあそのまま男でいいだろう。と思ったが自分が女になったときの姿が少しだけ見てみたくなり、こういうのって選択したほうの容姿が決定をしていなくても見れたはずと考え、一度女を選択してみた。しかし、そのただ思いつきで俺は人生最大の後悔をすることになった。女をタッチした瞬間、本が、
『次の設定に移ります』
……え?え?
「ちょっと待て!決定なんかにしてないぞ!」
と言ったが本は反応を全くしなかった。どうやら一度選択したものはその場で決定しもう変えられないらしい。俺がその場でうずくまって後悔をしていると本が『次の設定をしてください』と急かしてくる。
その後、俺が決まってしまったものはしょうがないと思うことができるようになるまで、小一時間かかった。
俺は開き直って次の設定をする。種族を設定してくださいか……。人間だけ選べなくなっている。俺は人間以外でどの種族がいいと聞かれても全く分からなかったのでランダムにした。
次の設定である。ダンジョンの発生させる位置を決めるそうだ。人が少ないところは初期に得られる特典が少ないが、大都市の近くなど危険な場所ほど得られる特典が多いようだ。俺はどうするか悩んだ。あまり近すぎると危険すぎるし、あまりに人が少ないところだとできることが少なすぎるだろう。かといって中間を選べば危険もなかなかあるができることは微妙なんてことになりかねない。俺はしばらく考えて中都市の近くの森の中にダンジョンを発生させることにした。森の中なら見つかりにくいだろう。
『これで初期設定は終わりです。現地に着いてからの行動はこちらの本を参考にしてください。また、到着後5日間でダンジョンが開放となります。それではがんばってください』
俺はどこかに移動しているかのような感覚に襲われた。すこし待っていると移動が終わったようだ。とりあえず本に書いてあることを一つづつ試していこう。
『自分のステータスは心の中でステータスと唱えることにより、見ることができます』
俺は心の中でステータスと唱えた。すると俺の前にまたウィンドウが開いた。
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名前:稲妻 司郎(変更可能) 17歳(女)
種族:雷龍族 Lv1
HP 780 MP 340
ATK 184 DEF 145
DEX 47 AGI 219
INT 92 LUC 30
<スキル>
稲妻 龍の咆哮 雷ブレス
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稲妻……指定の位置に雷を落とす。発生がとても早い。
龍の咆哮……相手をひるませる。
雷ブレス……雷のブレスをはく。当たった相手を高確率で麻痺させる。
なんかよく分からんが強いんじゃね?とりあえず名前のところは女でこれじゃおかしいので白に変えておく。自分の容姿が少しだけ気になり本を探してみると日常品はタダで貰えるとのことだったのでとりあえず鏡を頼んでみた。すると本が光り鏡が本から出てきた。俺はその鏡を使って自分を見る。
人型のベースに頭には細い角のようなものが2本あり、後ろには尻尾までついている。そして髪の色は薄い黄色だった。いかにも雷龍って感じな色だ。顔はまあ……自分で言うのもなんだが美少女だ。胸はそんなに大きくないようで安心?する。しかし、背は低いようで見た目きれいというよりかわいいといった感じだった。覚悟はしていたがその容姿を見て、俺は今度は2時間ほど頭を抱えてしまった。
ようやく立ち直った俺はとりあえず日常品をもらえるだけ貰うことにした。白い空間にベッドや椅子、机などが出されていく。俺は椅子に座って本の続きを読んだ。
『ダンジョン内ではダンジョンポイントを使ってダンジョンを成長させることができます。またこのポイントで魔物を呼び出すことができます。魔物は初期魔物と同族の魔物を呼ぶことができます』
「どうすれば使うことができるんだ?」
『メニューと唱えていただき、メニューより操作できます』
どうやら質問に対する答えの機能は失われていないようだった。俺はメニューと心の中で唱える。すると、ステータス画面が消えメニュー画面が出てきた。ふむふむ、初期魔物のスライムは1匹1ポイントか。中都市の近くに設定したおかげかポイントは15000あった。とりあえず試しにスライムを出してみる。
地面からスライムが沸いてきた。なんだか軟らかそうだったので触ってみるとぷにぷにとした感触が返ってくる。なにこれ!ちょう気持ちいい!俺は気に入ってスライムを100匹ほど出そうとしたがまだこの空間しかないので止めておいた。
「これは、ダンジョンを先に拡張したほうがよさそうだな」
俺はそう呟いて、ダンジョンの拡張に取り掛かる。まあ、アドバイスもなにもなかったから既存の知識でなんとなくダンジョンっぽくしただけだけどね。適当に通路を作って所々わき道と小部屋を作って終わりだ。罠もなにもない。しかし、それなりに大きくしたせいかポイントを3000ほど使ってしまった。もう少し慎重に作るべきだったか。まあやってしまったものは仕方ない。作り終えると同時にスライムも100匹ほど出しておいた。
罠は仕掛けようか迷ったが、そんなに有効に活用できそうにもなかったのでとりあえず放置。ほかの魔物を見てみよう。
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召還可能な魔物
<初期魔物>
スライム 1匹1ポイント
ゴブリン 1匹3ポイント
洞窟蝙蝠 3匹1ポイント
<同族の魔物>
小雷竜 1匹2500ポイント
雷龍 1匹30000ポイント
古雷龍 1匹1000000ポイント
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おいちょっと待て。下のほうおかしなことになってるぞ。なんだよ100万ポイントって。
「おい、雷龍高すぎないか?」
『雷龍は超希少種族です。成体であれば雷龍1匹でゴブリン1万匹以上の強さを誇ります。ちなみにあなたの初期設定の種族に龍種は選択できず、ランダムでのみ1パーセント以下の確立でなることができます』
チートじゃねえか。さっきスライム放った意味ねーじゃん。そう考えたら本が返答とばかりに新たな文字が浮き上がっていく。
『魔物の主食はスライムなどの自分より低位の魔物です。故にスライムを放つことはとてもよい判断です。なお、あなたは食事を取る必要はありません』
なるほど。ダンジョン内での循環ってやつですな。俺は追加でもう1匹だけスライムを出して自分の部屋においておく。俺の遊び用だ。あと何かやれることがあるかいちおう聞いておくと、また文字が出てきた。これはあれだな自分で探さずに聞いたほうが早そうだ。
『ダンジョン内の環境を変更できます。現在は土の壁ですが、変更することによっていろいろな個性的なダンジョンを作ることができます』
俺はダンジョン内の環境を変更する画面を開く。最初は土の壁しかないようだ。いや、待てよ。種族特有環境というのがあるぞ。う、2000ポイントか……。まあいいや、やっちゃえ!と種族特有環境に変更するといきなりダンジョン内に雨が降り出した。いま気づいたのだがダンジョン内の様子はいつでも見れるようだ。
『種族特有環境【嵐】に変更しました。ダンジョン内の環境が嵐状態になりました』
嵐とかどんなんだよ。ここダンジョン内だぞ。そんな疑問もものともせずダンジョンは嵐に包まれた。
俺がダンジョンの環境を変え終わってどうするか考えていると突然アラームが鳴った。
『侵入者が現れました。これよりダンジョン内での変更は行えません』
え?まだ、ダンジョン開放もしてないんですけど……。
『侵入者の情報を見ますか?』
どうやら侵入者の情報を見れるようだ。当然見ることにする。
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侵入者:チート勇者マサユキ Lv28
チート能力:先手必勝
先手必勝……解放前のダンジョンに侵入できる。
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はあ?解放前のダンジョンに侵入できる勇者って……。待てよ……そうすると他にも俺みたいなやつがやってるダンジョンがあるかもしれないってことか。てかチート勇者ってなんだよ!これ、ゲームじゃなくて異世界だろ?
『チート勇者は神様が暇つぶしで投入した人の一人です』
おい。あの神他にも俺みたいに投入してるのかよ。てかどうするんだよ。まだスライムしかいねえぞ。しかも何気にレベル高いし……。とりあえず様子を見てみるか……。
「くっそ。まさかダンジョン内が嵐とは……。濡れちまったじゃねーか。生まれる前のダンジョンなんて攻略余裕だしさっさと魔王倒して帰ろう」
そう呟きながらスライムをすべて一撃で倒していった。あれ、心なしかスライムの動きが鈍いというか勇者に反応してないというか……。どういうことなんだ本。
『スライムは嵐の中では活動できません』
……。
「そういうことは先に言えええええええええええええええ!!」
俺は悲鳴をあげる。まあスライムで倒せるとは思ってないけど……。少しくらいはダメージを与えれないかなと思っていた。
「ん?あっちから叫び声みたいなのが聞こえたな。あっちに魔王がいるのかな?」
やばい。いまの悲鳴で居場所がばれたっぽい。ど、どうする?なんの準備もしてないぞ!あ、そうだ小雷龍を出して迎え撃てば……。
『侵入者がいる間はダンジョンの操作は行えません』
そうだった!え、じゃあ詰んだ?せっかく生き返ったのにもう死ぬの?俺がいい策を思い浮かぶはずもなく勇者は俺のところへ到着する。
「お、いたいた。じゃあさっそく悪いけど俺の経験値になってくれない?早くもとの世界に戻りたいんだ」
もとの世界に戻る?
「どういうことなんだ?こっちの世界に転生したらもう戻れないんじゃないのか?」
勇者は答える。
「おまえ転生者か?まあいい、教えてやる。どうせ俺の経験値になるんだろうからな。どうやら神が暇というだけで俺達をこの世界に呼び出すのは相当苦労しているようなんだ。まあ、命を弄ぶようなものだから当然だな。だからそれぞれにある条件を満たしたらもとの世界に生き返れるようにしたらしいんだ」
なんだと!もとの世界に戻れるのか!
「条件は何なんだ?」
「それは俺も分からなねぇ。だが、レベルは上げといて損はないということだ。条件がレベルに関することだったりするかもしれないからな。まあそういうわけだから転生者さん、悪いけど死んで俺の経験値になってくれ。どうやら帰れるのは一人だけらしいからな!」
そういいい終わるなりチート勇者は剣を構えて襲い掛かってきた。俺は必死に避けようとしたがさきほどの話しのことを考えていたせいか一瞬反応が遅れる。もう、避けられない……。俺はそれが分かってああ、死ぬのか……。と思った。不思議と焦りはなかった。
ガンッ!と剣の衝撃が首に走る。……しかし、なぜか痛くなかった。
「なんで……死なないんだ……!」
チート勇者が驚きの表情を浮かべている。あ、そういえばさっき本が雷龍は超希少種族とか言ってたな。ということは俺も相当強いってことか……。よし……俺は余裕な笑みを浮かべて
「あれ?それが攻撃かな?さっき俺を殺すとか言ってたのにその程度かな?」
と、言い放つ。勇者は攻撃に対して余裕な俺を見て思わず後ずさる。
「じゃあ、そろそろ終わらせようか……。俺を殺そうとしたんだから当然殺される覚悟もできているよね?雷ブレス!」
「やめ」
勇者がなにか言ったようだがそれを待つような俺ではない。殺らなければ殺られるんだ。俺の口から黄色い雷を帯びた息が吐き出される。勇者はそれを避けることができずに麻痺をする。どうやら攻撃技ではないようだ。ダメージを食らった様子はない。しかし、勇者は自分が麻痺して動けなくったことにより表情がどんどん青ざめていく。
「ひっ!く、来るな魔物め!」
そんなこと言っても死を早めるだけなのにね。俺はゆっくりと手を天にかかげ唱える。
「稲妻!」
勇者は自分の真上から降ってくる稲妻を見て恐怖を感じたかもしれない。しかし、俺が見たのは既に消し炭になってしまった勇者の残骸だけだった。
マサユキを倒すと俺はレベルが上がったようだ。頭の中にやたらとうるさい音楽が流れる。どうにかならないだろうかと思ったらすぐに鳴り止んだので、これからは鳴らないようにしておく。本をなんとなく見ると無機質な音声が流れた。
『おめでとうございます。ダンジョンレベルが上がりました。あなたのレベルが上がりました』
まだ、ダンジョンは開放されておらず、あのような勇者もそうそういないと思い俺はのんびりとステータス画面、そして新たに追加されていたダンジョン情報の画面を開いた。
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名前:稲妻 白 17歳(女)
種族:雷龍族 Lv8
HP 1020(+240) MP 560(+220)
ATK 301(+227) DEF 225(+80)
DEX 50(+3) AGI 287(+68)
INT 130(+38) LUC 34(+4)
SP 11
<スキル>
稲妻 龍の咆哮 雷ブレス
<称号>
勇者殺し
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__________________
ダンジョン名:
ダンジョンレベル:1 階層:1
召喚可能魔物new
ダンジョン環境:嵐
ダンジョンポイント:16274
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どうやらあの勇者を倒したことによりレベルが上がったようだ。ダンジョンレベルが1なのは……もともと0だったのかな。ダンジョンポイントも増えている。敵を倒すと増えるようだ。ダンジョン名はまあ、後々考えよう。すぐに必要なわけではなさそうだからな。俺のステータスにはSPという項目が増えているな。
『SPは1レベル上がるごとに1貰えます。また、5の倍数のレベルに上がったときに5貰えます。SPを10消費することによりあなたが習得可能なスキルの中からランダムで1つ獲得できます』
俺が考える前に本が答えてくれた。だんだん本の性能が上がってきている気がする……。まあそれはおいといて、せっかく10あるのでスキルを取ってみようと思う。ランダムなので少し楽しみだ。
『スキルを獲得しました。スキル〔料理上手〕を獲得しました』
料理上手……料理が上手くなる。
うわぁ。いらねー。戦闘スキルじゃないのも混ざっているのかよ。とりあえず無視して次に進む。召喚可能魔物が増えているのでそれを見ようと思う。
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召喚可能魔物
<新召喚可能>
ゴースト 1匹100ポイント
地中クラゲ 1匹150ポイント
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なるほど。あの勇者は解放前のダンジョンに空間をすり抜けてやってきたらしいので、壁をすり抜けたりできる魔物が増えるのか。ということは勇者を倒せば倒すほど召喚できる魔物が増えるということでよさそうだな。とりあえず本に聞いたところ2匹とも嵐の中では行動できないそうなので召喚はやめておく。嵐を戻せばいいのじゃないかと思うが、そうすると雷龍族が召喚できなくなるらしいのでまだ嵐にしておく。
ふと、勇者がいた辺りを見るといつの間に落としたのか。木の剣が落ちていた。やられなかったのは俺が強いのではなくあいつの装備が弱かったからかもしれない。俺はそう思いダンジョンの作成にもっと力を入れなければと感じた。
まず最初にダンジョン内に戦える魔物がいない状態なので小雷龍を3体ほど出しておく。これだけでポイントを7500も使ってしまった。この3匹は固めて自分の部屋の前に置くことにする。その後、放置しておいた罠を見て、隠し扉と導雷針を何個かづつと仕掛け扉、それにスイッチを買った。ポイントは合わせて3000ポイントほど。まず仕掛け扉を自分の部屋の目の前に置いておき、仕掛け扉を開こうとすると導雷針が発動し、雷が落ちるように設定した。導雷針は嵐の中でのみ使えるようだ。そして、ダンジョン内に適当に隠し扉を設置しその奥に仕掛け扉を開くためのスイッチを置く。他の隠し扉の奥には動けないスライムを入れておいた。
これでだいぶ時間は稼げるだろう。後はダンジョンの開放を待つだけである。現状のポイントではこれくらいしかできない。残ったポイントは不測の事態が起きた時用だ。俺は部屋に置いておいたスライムで遊んだりしながら過ごした。そうして3日が経ったときまたしても本から無機質な音声が流れた。
『おめでとうございます。スライムが変異して、嵐スライムになりました』
嵐スライム?俺はスライムの様子を見てみた。するとスライムの中になにか風のようなものが渦巻いていた。本に説明を促すと、嵐の中でも行動できるスライムだと教えてくれた。ってか魔物って変異して別の魔物になるのかよ、先に言えよ!と思ったがいつものことなので何も言わずに作業に移る。隠し扉を買い足し、まだ召喚していない魔物を数匹づつ召喚して、適当に放り込む。これでいつかは変異するはずだ。ついでにスライムは隠し扉から開放しておくことも忘れない。スライムは勝手に増殖するらしいので小雷龍の餌になるはずだ。
そんなことをしているうちに2日経った。とうとうダンジョンの開放だ!
ダンジョンを開放して3日ほど経った。まだ勇者どころか冒険者すらも来ていない。ダンジョンを開放した場所が森の中のせいか野生の魔物はちょくちょく入ってくるが嵐のせいですぐに動けなくなるので全部、嵐スライムに食べさせている。野生の魔物を倒すことによってもダンジョンポイントは貰えるようで、少しだがポイントが増えた。
そういえば最近自分の召喚した魔物のステータスを見ることができると知った。いまはこんな感じだ。
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嵐スライム Lv7
HP 48 MP 8
ATK 18 DEF 30
DEX 1 AGI 15
INT 10 LUC 3
<スキル>
吸収……敵を吸収し養分として蓄える
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小雷龍 Lv1
HP 300 MP 80
ATK 87 DEF 62
DEX 19 AGI 99
INT 40 LUC 10
<スキル>
雷ブレス
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スライムはまあ想像通りの弱さだが小雷龍は結構強い。これが3匹いるんだから最初の勇者にもこいつらだけで勝てるんじゃないかと思う。スライムのレベルが上がっているのは野生の魔物を食わせたからだろう。とりあえず冒険者とかが来なくて暇なので拾った木剣で剣の練習をする。完全に我流だが、俺のスキルは近接には向いていないのでやっておいて損はないだろう。
そんなことをしていると久しぶりのアラームが鳴った。侵入者だ!情報を見てみようとしたが見ることができなかった。同じ転生者のステータスしか見れないようだ。ダンジョン内を見てみると侵入者は盗人みたいなのが3人だ。宝石などを抱えて満足そうな顔を浮かべている。しかもダンジョンの入り口で止まって追ってがいないか確認しているようだった。完全に迷惑である。
「いやー大量大量」
「今回は楽勝でしたね、親分」
「俺を誰だと思ってるんだ!大盗賊ブルンド様だぞ!俺がいれば盗めないものなどない!」
「さすが、親分。ところでこの洞窟はなんなんでしょうね。前はこんなとこなかった気がしたんですが」
「噂に聞くダンジョンとやらかもしれんな。最近出来たのかもしれん。よし、入ってみるか。もしかしたらお宝があるかもしれん」
どうやら盗賊はダンジョンに入ってくるようだ。このまま放置しとけば勝手に死ぬかなと考えて、この世界のことをあまり知らないことを思い出す。これは情報収集をしたほうがいいな。となると、あいつらのうち一人を捕まえて聞き出すとするか。スライムにやられたら聞き出せないし、めんどうだが俺が直接行くことにする。
「盗賊かな、ちょっと止まってもらえるかな」
俺が盗賊たちの前に姿を現すと盗賊たちは少し驚きの表情を浮かべてから、さっき親分と言われていたやつが
「おお、さっそくお宝発見だ。龍族の女なんてそうそうお目にかかれないからな。高く売れるぜ」
と子分に囁いていた。いや、普通に聞こえてるんですが。
「けど、親分。龍族って強いんじゃないですか?」
「あんなガキが強いわけないだろ!見とれ、俺がすぐに捕まえてきてやる」
そう子分に言うなりナイフを引き抜いて俺に襲い掛かってきた。子分の言うこともちゃんと聞けばいいのに、と思いながらブルンドのナイフをかわす。正直あのチート勇者に比べればすごく遅い。しかし、ブルンドはそれに気づいていないらしく、
「チッ、まぐれで避けやがったか。まあいい、次は当たるぜ。早く降参したほうがいいんじゃないのか?」
と言ってくる。それに対して俺は
「はぁ、分かった分かった。殺さないでおいてやるからさっさと出てけ。あ、誰か一人は残れよ?」
と返す。するとブルンドは怒り狂って
「ガキがああああああ!なめてんじゃねえぞ!」
と言い、さっきとほとんど同じ動きでナイフを振り下ろしてくる。短気はいやだね。俺はそのナイフを余裕で避けて稲妻を唱える。稲妻はブルンドに当たってブルンドは消し飛ぶ。まあ襲い掛かってきたんだから、しょうがない。交渉できそうにもなかったしな。
その間残りの二人は何をしていたかというとどこからか沸いたスライムと戦っていた。1匹だけど結構苦戦していた。そんな二人もスライムを倒し終えて、ブルンドがやられているのを見ると、
「や、やばい親分がやられた!逃げるぞフラン!」
と言って逃げようとしたので雷ブレスを放って逃がさないようにする。しかし、運よくフランと呼ばれた男のほうは麻痺にならなかったようだ。追いかけてもいいが、まあめんどいので放置する。目的の一人確保は達成できたしな。残った盗賊のほうを小雷龍に俺の部屋まで運ばせておく。麻痺が解けたら、情報を聞き出すとするか。
フランは必死に逃げていた。もちろん、あのダンジョンの情報を伝えるためである。ダンジョンの最初の発見者にはそれなりの褒章が与えられる。フランにはもう残りの二人のことなどどうでもよかった。フランはもともと二人が嫌いだった。むしろ離れられてラッキーなくらいである。そして、フランは追っ手が来ないことを確認するとゆっくり歩き始める。
そうして中規模都市グランディアにフランはたどり着く。ギルド証を提出しながら、盗みを働いたのは小さな村なので入れるのは間違いないと思いつつ門兵の許可を待つ。どうやら今回も無事許可が降りたようだ。こういうときにギルドに入っておくのは助かる。
俺はグランディアに入ると国王陛下への面会を求めた。ダンジョンの報告は陛下にまず伝えるというルールがあるのだ。俺は国王の前に連れて行かれる。
「さて、そなたの言う新たなダンジョンとはどのようなダンジョンなのだ?私も忙しいのでね、簡潔に述べておくれ」
「はい、国王陛下」
俺は陛下の前でひざまずく。正直こんな奴の前でひざまずくのは嫌だが、金のためなので仕方ない。
「私が発見したダンジョンは東の森の奥地にありました。ダンジョンの特徴は嵐です。そして……」
「そしてなんだ?」
俺は一瞬言うかどうか迷ったがこの王の前で嘘など吐く必要はないと考え、王が待ち望んでいたであろうことを言う。
「あのダンジョンには龍族の少女がおります」
「ほう」
この王は魔物の収集が趣味である。その中でも魔人と言われる人型の魔物を最近は集めているようだ。すぐに欲しがるだろう。
「よくやった。下がっていいぞ。後日調査団を出す。その情報が正しいという確証が得られた時、褒美を与えよう」
これでほぼ褒美は確実だろう。もしかしたらしばらくは遊んで暮らせるくらい貰えるかもしれない。俺はそんな期待をし、宿屋に入っていく。
翌朝、王の動きはまだない。しかし、ギルドに行ってみるとダンジョンの攻略に関する依頼がすでに出ていた。昨日の夜、すぐに兵を動かしたのだろうか。動きが早い。俺は依頼を見て、なにもなかったかのように、ギルドを去る。いつか攻略されなかったらあの少女を捕まえてやると決心して、フランは人ごみの中に消えていった。
俺は盗賊の一人が麻痺が直るまでステータスを確認することにした。麻痺している盗賊はとりあえずポイントで牢獄を作っていれておいた。監禁とかの趣味はないので聞くことを聞けたら帰そうと思う。俺はステータスと念じる。
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名前:稲妻 白 17歳(女)
種族:雷龍族 Lv9
HP 1080(+60) MP 590(+30)
ATK 312(+11) DEF 241(+16)
DEX 51(+1) AGI 294(+7)
INT 137(+7) LUC 34(+0)
<スキル>
稲妻 龍の咆哮 雷ブレス 料理上手
<称号>
勇者殺し
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あまり変わっていないようだ。まあ、盗賊の弱そうなリーダー一人倒しただけだしな。俺は次にダンジョン情報を開く。
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ダンジョン名:
ダンジョンレベル:2 階層:1
召喚可能魔物new
ダンジョン環境:嵐
ダンジョンポイント:9200
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ダンジョンレベルが2に上がってるな。案外上がりやすいのかな。本の説明を読むと階層を1つ増やせるようだ。後で増やしておこう。そういえば、ダンジョン名をまだ決めていなかったな……。まあいいか。このダンジョンが有名になったら通り名で自動的につくらしい。あんまりネーミングセンスないしな。とりあえず放置。召喚可能な魔物が増えていたので見てみると盗人ゴブリンだった。ゴブリンと何が違うのだろうと召喚してステータスを見分けたら、スキル、盗みがあるかないかだけの違いだった。
俺はそこまで確認して、そろそろ麻痺も切れてるだろうと思い、牢獄へと向かう。盗人ゴブリンを小部屋に入れるのは忘れない。そろそろ適応するやつができそうだ。そうして、牢獄へ着くとやはり麻痺は治っていた。しかし、俺を見るとおびえたように牢獄の奥へ逃げていってしまった。
「そんなに怖がるなよ」
「ひっ、よ、寄るな魔物め」
まあ、これが普通の反応だろうな。だが、俺はこの世界のことを知らなければならないのだ。
「まあまあ。少しばかり俺の質問に答えてくれよ。正直に答えてくれたら逃がしてやるからさ」
「……本当か?」
え、こんなに簡単に信じちゃっていいの?まあ帰してあげるけどさ。
「ああ、本当だ」
俺はこいつからこの世界のことをたくさん聞いた。聞き終えて、開放するときにお礼として料理を振舞ったらなぜかすごく感謝された。なんでも、こんなにおいしいものは食べたことがないそうだ。食材は日常品として、タダで貰えるのでまた来たら特別に振舞ってやると言ったら絶対また来ますとまで言われたので、ついでに盗賊を止めて、冒険者にでもなれとも言ったら素直になると言っていた。案外根はいい奴なのかもしれん。最後にこのダンジョンの噂を少しでいいから広めてくれと言って出口まで返す。これで定期的にこの世界のことを知ることができるだろう。俺がこの男から聞いたことをまとめるとこんな感じだった。
まずこの世界はアスタリアというらしい。そして俺がいるこの場所はグランディアという国家の東の森の奥深くである。また、ギルドというものが各国にはあり、ここ数十年まともに活動はしていないそうだ。しかし、最近になってダンジョンというものが世界に無数に発見されるようになった。ダンジョンからは時折、魔物が出てきて人を襲うようになったので、いまは世界共通の認識としてダンジョンは見つけたら潰すという方針になったそうだ。
魔物に関して聞いてみるとほとんどがスライムやらゴブリンやらで龍族などは極一部にしか生息していないらしい。しかもそのほとんどがレッサードラゴンなどで雷龍などほとんど伝説上の生き物らしい。俺が、人の姿をしているのはと聞くと龍などの高位の魔物は変身して、外見を変えれると言っていた。おかしいな、俺には変身のスキルがないため人型でしかいられない。
盗賊を帰したあと俺は第2階層を作り始めた、といっても第1階層を2階層目にして追加した階層をすぐに入ってこられるようにするのだけれど。第1階層は環境は嵐にしないで蝙蝠を数千匹置いた。そして2階層に降りるための階段の前に扉をつけて開く条件を蝙蝠の全滅にしておく。これでしばらくは開けないだろう。できればボスモンスターの討伐とかにしたかったが現状ボスになりうるモンスターはいないので仕方ない。そんな設定を終えると人が来たようだ。騎士みたいなのが30人ほど……。まずい、一人一人なんか強そうだしここまで来られたらやられると思ったが騎士達は調査に来たようで蝙蝠を振り払いながら扉の前まで来て開かないのを確認すると帰っていった。蝙蝠はどこにでもいるのか、全然倒そうとしていなかった。2階層目を先に作っておいてよかったと思う。
というか騎士達が来たということは明日から冒険者も来るかもしれない。しかし、倒せなければポイントにもならないのでゴーストなども配置しておく。これで万全だろう。扉はいちおう蝙蝠全滅のままにしておいた。戦力が整うまではこうしておいたほうが安全だろう。そうして、俺は明日はどうしようかと思いながら寝た。
騎士達が来た後、なぜか初心者っぽい冒険者がよく来るようになった。騎士達が来たときは1階には弱い魔物しか置いてなかったからだろうか。あの後追加したクラゲやゴーストにどんどんやられてく。しかし、あまり殺しすぎると強いやつが来るかもしれないので適度に返しておく。ついでにポイントで買った安そうな宝石などを宝箱に入れて設置しておくとそこまでたどり着けたものは満足そうに帰っていく。初心者にとってはいいものなのかもしれない。魔物ばかりに狩らせていても俺のレベルが上がらないのでたまには俺が出向くことにする。そうした結果俺のレベルは10に上がった。
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名前:稲妻 白 17歳(女)
種族:雷龍族 Lv10
HP 1270(+190) MP 680(+90)
ATK 340(+28) DEF 250(+9)
DEX 53(+2) AGI 302(+8)
INT 145(+8) LUC 35(+1)
<スキル>
稲妻 龍の咆哮 雷ブレス 料理上手 竜化
<称号>
勇者殺し 初心者の敵
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竜化……竜形態になれる 能力が倍になる
レベル10になったせいかとんでもない能力を手に入れてしまったようだ。どうやら人形態だと能力が半減するらしい。竜形態になってみたが、すごく大きい。ダンジョンが崩れるかと思った。なので自分の部屋の前に大部屋を用意しておく。そして、ついに他のモンスターの嵐適応型が完成した。さっそく1階を嵐に変えて投入してみると次の日から初心者みたいな人が来なくなった。代わりに結構強そうな人が来るようになりポイントも溜まるが魔物を殺されて消耗も激しいので1階の中央付近にコロシアムみたいなのを作る。ついでに横に小さな部屋を作り家具を置いて普段はそこにいるようにする。魔方陣を買って2階層の奥の部屋に俺だけが使えるように設定して完成だ。ちなみにこれを作るのに溜めたポイントをほとんど使ってしまった。
俺はコロシアムで人形態で相手を待つ。扉の開く条件をこのコロシアムで勝つことにし俺に1撃入れれたら勝利だ。いちおうこのコロシアムでは誰も死なない設定にしておいた。何故そんな設定にできるか分からないがこれで自分が不死身の状態を作ることはできないらしい。さらにとてつもなく高く、闘技場全体に貼るだけで25000ポイントも消費した。そうして、中堅プレイヤーと思しき者達を相手しながら1ヶ月ほど経った。途中やたらと強いやつがソロで挑んできて竜形態で本気で戦い、ようやく勝利することができた。できればもうあんな戦いはしたくない。
俺は溜まったポイントを30000ポイント使って雷龍を召喚した。人形態になるように命じるとメスの龍だった。名前は黒とつけて二人で戦えるようにしておく。階層もだいぶ増えてきた。そういえばダンジョンの通り名がついた、雷鳴轟く嵐のダンジョンだそうだ。正直そんなたいそうな名前がつくダンジョンにしたつもりではないのだがいつの間にかついていた。最近ではコロシアムのこともあってどちらかと言うと冒険者の腕試し的な場所として使われている。仲のいい冒険者もずいぶん増えた。まあそれでも仲良くせずに奥へ進もうとする馬鹿はいて、そういうやつがダンジョンのポイントに変わっていくのだが……。ダンジョンも整備して、雷龍も何匹か出してそろそろ古雷龍の召喚を考えていたところにその知らせはやってきた。
黒が息を切らせて走ってきた。いま、コロシアムは黒の担当時間だというのにどうしたのだろう。
「白様!大変です!いま来た冒険者に聞いたところこのダンジョンに国が攻めこんでくる準備を整えているそうです!さらにそのほとんどが他国から集めた上位の冒険者らしいです」
「慌てるな、どのくらいの数で来る?」
「それが……、200人ほどらしいです」
うわぁ……。多いなぁ。最近騎士を見かけないと思ったらそういうことだったのか……。
そうして俺達は迎え撃つ準備を始める。