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第二話 魔王の従者side


魔王様がお眠りになってから2000年。


魔界は荒れ、人間共は勝手に魔族を奴隷にするなど散々なことをしている。



2000年前の大戦争の原因は、人間が洗脳装置を作って魔界を侵略しようと争いを持ちかけてきたことだ。



それまで魔王様は魔族と人間が共存する世界に憧れて、種族差別をしない優しくよく笑う方だった。


だが、とある国の王が生物を隷属させる洗脳装置を作って他の国にも勧めた。


最初は自分たちに従わない人間や家畜などに使っていたが、ついに魔族にまで手を出してきたのだ。


弱い魔族から洗脳していき、ついには田舎の中級魔族たちにまで手を伸ばした。



心優しい魔王様はそれにショックを受け、俺達の言葉を聞かずに人間の王たちに話をつけに行ってしまった。


そして帰ってきた魔王様は悔しそうな顔をして乱れた呼吸を整えていた。


人間共が魔王様に罠をしかけたのだ。



魔王様との話し合いの場に装置を大量に設置して、魔道師が装置を見えないようにする。


そして入ってきた魔王様が席に座った瞬間、全ての装置を作動させ魔王様を隷属させようとしたんだ!


二つで中級悪魔を隷属させてしまう装置を何十台も向けられた魔王様は耐えて帰ってきた。



魔王様は美しい。


恐ろしいほど顔が整っていて、特に紅玉のような瞳がその美しさを際立てていた。


淫魔でもこれほど色気が漏れている者はいないと思えるぐらいの色気を持った魔王様は、今までそういった意味でも狙われていた。



だから魔王様を欲しがるのも無理はない。


魔界にいる貴族の女だけじゃなく、男も伴侶の座を狙っているのだから。


それは人間界の奴らも同じで、話し合いの場では欲のこもった目で魔王様を見ていたのを覚えてる。




***




戦争が始まって、洗脳装置によって人間側で戦ってる仲間たちを見て魔王様は悲しんでいた。


最初は優勢だった魔族側も、洗脳装置によって人間側の奴らに取り込まれていき、最後はほとんどの魔族が人間側になってしまった。


魔王様や上級魔族なら人間や同胞に洗脳することも簡単にできる。


だか、魔王様はそれを許さなかった。



優しすぎる魔王様は、最後の最後で自らを犠牲とする決断をし、自分の持っている全ての魔力を使って洗脳された魔族を解放、そして洗脳装置を破壊し、洗脳装置に深く関わっていた全ての人間を殺しデータを抹消した。


そして、力を使いきった魔王様は地底ニェドラーにて眠りについたのだ。


最後に、




『共存は叶わぬ夢だった、所詮魔族と人間は交えられない運命だったのだ。絶対に許さない、俺の仲間を傷つけたアイツ等を!』




そう言って。



俺達魔族はその言葉に涙を流した。


欲深き人間のせいで魔王様は悲しんでいる。


俺達魔族は人間を恨んだ。


お前達人間のせいで魔王様が眠りについたんだ。



魔界から王は消え、魔族をまとめる者がいなくなった。


1000年の間は、魔王様が張った結界のおかげで人間は魔界に入ることができなかったが、1000年を過ぎれば結界が解けて人間も入れるようになってしまった。



そして人間により魔界は荒れ。


弱い魔族を捕まえては奴隷にされている奴ら。


いくら防ごうとも全てを防ぎきれない。


魔界の問題はたくさんあるからだ。


魔王様の凄さを改めて実感した。



戦争によって畑も焼け野原になってしまい、肥料もまともに作れないせいで食料も底をついてきた。


今三食まともに食べれるのは上級魔族だけ。


たくさんの被害によって、魔界は破滅的状況に陥っている。



だから、その分魔王様を信仰する者たちが増えた。


魔王城の地底で毎日祈りを捧げる者は後を絶たない。


そして今日も俺は白の出入りが許されている時間を過ぎた夜中に地底に向う。



地底へと続く階段を下りていると、パリンという音が聞こえて、俺は慌てて階段を駆け下りた。


地底に着いて見えた光景に俺は涙を流した。



「魔王様!!」



魔王様が俺を見ている。


それだけで高揚する。



「この日をどれだけ待ち望んでいたか…!やっとお目覚めになったのですね!」



魔王様の紅い瞳が俺を貫く。


そこに昔あった温かいまなざしは無い。


冷たく無表情な魔王様に畏れた。



ああ、変わってしまったのか。


これも全部あの人間共のせいだ。



「久しぶりだな」



本当に久しぶりに聞いた魔王様の声。


心地よく低い色気がある声。


久しぶりに聞いたせいで腰が砕けたところを魔王様が支えてくださった。



「大丈夫か?」



ああ、全部変わってしまったかと思っていたけどそんなことは無かった。


根はまったく変わってない。


それが嬉しかった。



「魔王様、俺は貴方のためなら何でもします。どうかこれからも側においてください」



跪いて魔王様の手の甲にキスをする。



「……俺に着いて来い」



ああ、魔王様からのお許しを得ることができた!


歩き出す魔王様の後を追う。


2000年ぶりの魔王様の後姿は2000年前と変わらず凛としていて、神々しかった。




 

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