Dream6 実を求めて…
再び夢の中へ、そして優斗に異変が!
「な、何これ!?」
優斗の腕の所々に赤い斑点が浮き出した。
「本当にすまぬ。お主が飲んだのは今から数百年前、この世界に突如現れた史上最悪の怪物ゼドゥラルの血液が入った液じゃ」
「ゼドゥラル?」
急に言われたって分からない。何?至上最悪の怪物って。
次第に頭が混乱してきた。
「兎に角早く解薬を造らなければお主は大変な事になる」
「で、でもこれは夢の中なんでしょ?だったら夢から覚めちゃえばいいんじゃ…」
「確かに。じゃが、ここはお主の夢の世界…というより、ここは夢の中の一つの世界なのじゃ」
「え、えっ?」
優斗は再び混乱してきた。
「つまり、今わし達がいるのは夢という無限の枠の中の一つにおる。他にもたくさ~んある。皆違う夢を見るからの。じゃが、もし、お主が仮に史上最悪の怪物ゼドゥラルになってしまえば、お主は人間に戻れない且つ、この世界、そしてお主等が見ている夢の世界が滅び、人々は夢を見れなくなる。夢だけではない。お主等が普段生活している世界にまで影響を及ぼしてしまうのじゃ」
「そ、そんな…」
理解出来た優斗は愕然とした。
「そいつはヤバイじゃないか!じぃさま、その解薬の材料は」
聞いていたクアナは聞く。
「滅ぼす実じゃ」
「滅ぼす…実」
「そうじゃ。滅ぼす実はここから北へ数百キロ先にあるヨバク山脈の一番高い山エーエニ山にしか生えない木の実じゃ」
「そこに行ってその実を採って帰ればいいんだな?」
「そうじゃ。しかしそこまで行くには多くの敵がいるぞ」
「構わねぇ。んな奴、俺等でぼっこぼこにしてやる。行くぞ優斗!」
クアナはドアを開け、走っていった。
「あ、あぁちょっと…」
「ちと待て、お主!」
じぃさまは優斗を止める。
「これを着けていきなさい」
じぃさまは優斗の耳の中に何か入れる。
「これは通信機じゃ、何かあったら喋ってくれればわしに届くから」
「分かりました」
優斗はクアナの後を追っかけ行った。
「よし、それを背負って行くぞ!」
クアナは登山リュックを背負っていた。
背負って見ると結構重い。
「何入ってるんの?」
「これから行く上で必要な物だ。あと、ほれ」
「あ、ありがとう」
クアナは優斗に向けて剣を渡した。
「よし、それじゃあ行くぞ!」
テッドを研究所に預け、クアナは壁にあるスイッチを押した。すると床が上がった。
「ほら、優斗。あれがヨバク山脈だ」
地上に上がり、クアナの指す方を見ると、半分から上が雪で覆われた山が連なっていた。まるでアルプスみたいだ。
「あの山脈目指してちょい早めで行くぞ」
クアナと優斗は山脈の方へ歩いていった。
研究所から出発して数時間。景色は何も変わらず、一本の道が果てしなく続いている。
「ねぇ、クアナ」
歩きながら優斗はクアナに話し掛ける。
「何だ?」
「クアナはさっき言ってた…え~と」
「ゼドゥラルか?」
「そう、それ!クアナは知ってる?」
「知らない。というか見た事無い。ただ昔じぃさまがそいつの事を良く言ってた。けど詳細は分からない」
「へぇ~」
「でもなんか嫌だな。隣にゼドゥラルになる奴がいると…」
冗談気にクアナは優斗の顔を見る。
「そ、そんな事言わないでよクアナァ」
「ハハハ、冗談さ」
笑いながら遠くを見ていると
「なんだか雲が怪しいな」
山側の雲が黒く、景色も霞んで見える。
「きっと雪だな」
「雪の中に実なんかあるの?」
「滅ぼす実は一年中成らしてるってじぃさまが言ってた」
「へぇ~」
優斗は納得する。
「ある程度まで歩いたら、テントを張ろう」
「OK」
あれから二時間後。辺りは砂からちょこちょこ岩が見え、少し雪が積もっている。
「よし、今日はここでテント張るぞ」
リュックを降ろし、テントを広げ、四方を杭で止める。四角型の緑のテントになり、中は二人が寝れるくらいの空間がある。
「優斗、何か燃える物を拾ってきてくれ」
「お、OK」
優斗は半径100m内で枝を持てる限り拾った。
「これだけあればいい?」
「充分だ。枝を数本そこに置いてくれ」
優斗は数本交差させながら置いた。
「さ、火を熾すぞ」
クアナはリュックから液体の入った瓶を取り出し、一滴枝に落とす。
「よし。優斗、ちょっと退いてろ」
優斗は言われるがままに後ろへ数歩下がった。
「ハッ」
掌を枝に向け、声を発した直後、掌から赤い球が現れた。そして赤い球を摘み、枝に落とすと、
ボッ
火柱が一瞬立ち、火は微かに燃えた。
「枝を入れてってくれ」
優斗は枝を火の中へ入れていく。すると火は威力を増してきた。
「よーし。これで多少暖まるだろ。そんじゃ、飯にすっか」
リュックから例の缶詰が出てきた。
「うっわ、まじかよ」
頭の中で思いながら、缶詰を見る。
「これは大丈夫だ。今回は違うから」
缶詰とスプーンを強制に渡され、蓋を開ける。前回緑だったが今回はオレンジ色だった。
「確かに…なんか食べれそう」
「だろ?ほら、食ってみ?」
一口掬ってみる。ぷるんぷるんしている。
「ゼリーか?」
ゼリーならと安心し、一口。
「ん?何も味がしない…」
「そう?」
クアナも一口。
「結構うめぇぞ」
「そうかなぁ…」
噛んでも噛んでも味がしない。でも前のドロドロよりはマシか…
優斗は何とか全部食べた。
全部食べ切り、優斗はテントの中に入り、用意しておいた寝袋に入る。辺りはすっかり夜になっていた。
外ではクアナが先ほど出した液体を小皿に一滴垂らし、掌から出したさっきより小さめの赤い球を落とす。すると火が現れ、ガラス蓋で蓋をした。
小さな灯りを照らし、クアナもテントの中に入り、寝袋に入る。
「明日は登山入り口に入る。あの山脈には多くの厄介者がいる。充分気をつけろよ」
「分かった」
「よし、じゃあ今日はここまでだ。おやすみ」
「おやすみ」
クアナは蓋を開け、息を吹き、火を消した。
そして寝ている間、優斗の体は徐々に蝕られていくのだった。
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