Dream4 怪しい宿(後半)
クアナが誘拐された事を剣の力で知った優斗。そんな優斗も睡眠薬が入っている夕食により、厨房奥の部屋に閉じ込められる。優斗は脱出且つクアナ救出の為、優斗は沙漠の時以上の力を発揮する。そしてクアナが欲しいというアレとは…
「クアナ遅いなぁ」
優斗は次第に心配になってきた。もうあれから1時間が経過した。いくら何でも長すぎる。確認で行きたいけど、俺は男。流石に女風呂には行けない。
「どうしよう…」
優斗は暫く考える。その時、たまたま剣を見ると、剣が黄色く点滅していた。袋から取り出し、両手で剣を持つと持ち手から黄色い線が優斗の額に当たる。すると脳に映像が浮かぶ。映像は厨房を映していた。
「あっ」
暫く見てると数匹が全身タオルを巻いたモノを運んでいた。
「何運んでるんだ?」
優斗は気になりつつも映像を見た。
「う、うん?」
優斗はタオルとタオルの隙間を見つけた。良く見ると腰の辺りが緑色に見える。
「もしかして…クアナ?」
更に良く見ると、身長的にもクアナに見える。そして女としての証拠、胸の部分は膨らんでいる。
「やっぱりクアナだ」
タオルで巻かれたクアナと思われるモノは二つある内の一つの部屋に入れられた。
「厨房だな」
優斗はクアナの居る場所を確認した。そしてここで映像は途切れ、剣は光を発しなくなった。
ドンドン
戸をノックする音が聞こえ、後ろを振り返ると雌ワニだった。
「お客様、ご飯が出来上がりましたよ。あら、まだもう一人の方はお帰りになってないのですか。ならお先にお客さんだけでもご飯、召し上がりますか?」
「いや、まだもう一人お風呂から帰ってきてないので、来たら行きます」
「そのような事でしたら、私がお呼びしましょうか?」
「すいません、お願いします」
「かしこまりました」
雌ワニは先に去った。
「アイツ等め…取りあえず、剣だけは持っていこう」
優斗は剣を革袋に入れ、1階の食堂へと向かった。
食堂に入ると、テーブル席で何匹かがご飯を食べていた。
「優斗様」
厨房から顔出した魚人が手を招きながら呼ぶ。
「優斗様達の食事はこちらになります」
手招きされる方へ向かうとテーブル席から畳が敷いてある部屋に移動した。テーブル席からは死角となっている。
「今日のメニューはご飯と味噌汁、鯖の塩焼きでございます」
魚人が料理を運び、料理を説明しながらテーブルに置く。見た目は結構良い感じ。
「料理は日本とあまり変わらないんだ」
優斗はそう思いながら、ご飯を一口。
「うっ、なにこれ」
小声で呟いた。いつも食べているご飯と全然違う。優斗はお口直しに味噌汁を一口飲んだ。
「うわっ、味噌の味全くしないし。この世界の味噌汁とご飯は一体どうなってんだ?」
小言で言いながら恐る恐る鯖も一口。
「あ、鯖は美味しい」
優斗は鯖以外を我慢しながら食べていた。しかし食べている内に優斗に異変が生じた。
「何だあ?急に眠気が…」
フラフラしながら目を覚まそうとコップを取ろうとする。しかし眠気は更に増す。
「ヤベェ…も、もう…」
バタン
優斗は後ろに倒れ、グウグウと夢の中へ入ってしまった。
「よし、運べ」
眠った事を厨房側から確認した魚人は何匹かで優斗を運ぶ。
「おい、剣はどうする」
魚人は剣を取る。
「こんなボロイ剣別にあったって意味がない。ついでに持ってってやれ」
剣を運んでる奴に持たせた。クアナがいる部屋の隣部屋に入れられた。それと同時に雌ワニが厨房に現れた。
「どうだ?」
「ザリリウム隊長、ただいま人間一人確保しました」
「フフフ…宜しい。後はコイツ等を刑務所に連行するだけ。今日は最高だよ」
「そうですね。隊長」
雌ワニと仲間は部屋の方を見ながら笑みを零した。
4時間後。
「ん~」
優斗は目を覚ました。天井見れば電球1個だけ、周りを見ると赤レンガで囲まれていた。
「ここは何処だ?」
優斗はクラクラしながらも壁に沿って歩き、ドア付近まで来ると壁の向こう側で話し声が聞こえた。
「ふー食った食った」
「今日は久々に豪華な飯だったぜ」
「こんな日が毎日続いてくれりゃあなぁ」
「ったく、本当だぜ」
男達の声が聞こえる。優斗は更に男達の話を聞く。
「でよ?アイツ等どうするよ?」
「分かんねぇ、決めるのは隊長だからな。でもよりによってアイツがここに来るとは思わなかったぜ。だってアイツは歴代最悪の犯罪者なんだろ?」
「犯罪者?」
優斗は更に耳を傾ける。
「あぁ、史上最悪の犯罪者カルベラント・クアナドリス、通称クアナ。懸賞金2億4500エント」
「2億4500エント…一気に金持ちになれるじゃん。こんなボロからお去らばだ」
「シー、あんな大きい声だすな。隊長に聞こえちまうだろうが」
「わりぃわりぃ」
「そういやアイツはまだ寝てるのか?」
「ちょっと確認してこいよ」
「俺かよ。おまえ行けばいいじゃん」
「えー、おまえ近いからおまえ行けよ」
「分かったよ」
一匹が立ち上がる。それを聞いて優斗は急いで元の場所に戻り、寝るフリをした。
ガチャ
木のドアが開く。優斗は目を閉じ、じっとする。
「まだ寝てるみてぇだな」
ガチャ
ドアは閉められ、それを確認した優斗は目を僅かに開ける。
「ここから出ないと」
優斗は立て掛けてあった剣を音を立てないようゆっくり持ち上げた。
「あの時のように光ってくれ」
前回の沙漠の時みたいに赤く光るよう念じた。すると剣から赤い炎が現れた。
「よしっ」
優斗は剣を構え、集中する。すると炎は激しく燃える。
「オラアァァァ!!!」
剣を上に高く上げ、下げると同時に叫ぶと、赤い炎はカッターのようにドアを簡単に切り、厨房の奥の壁まで及んだ。優斗の目の前の景色は殺風景化していた。
「……」
厨房で楽しく話していた怪物達は口を開いたまま動きが止まった。
一方優斗は全身が真っ赤に燃えていた。
「クアナは何処にいる!」
優斗の目は獲物を狩るような目をし、真っ赤になっていた。
「な、なんだコ、コイツは」
「何ビクビクしてんだ!たった一人だろ、やっちまえ!」
魚人の合図と共に、5匹の怪物は優斗に襲いかかる。
「クアナは何処にいるかって聞いてるんだよ!」
優斗は再び剣を横に振った。すると切れ目が横に行き、それを受けた5匹は切れ目に押され、壁に激突した。優斗はゆっくり5匹の方へ歩いていく。
「まままままま待った待った」
魚人は慌てて言う。優斗はその声を聞き、止まる。
「クアナは何処にいる」
「わ、分かった。お、おい、早く解いてやれ」
数匹の怪物はクアナのいる部屋に入り、紐を解き、タオルを外してクアナは自由を取り戻した。その時…
「オラッ!」
「グハッ」
クアナは瞬時に一匹の頭を蹴った。そしてその後三匹の鳩尾や頭を狙って殴ったり蹴ったりした。その結果三匹は血を数滴吐きながら気絶した。
「さぁ残るはおまえだけだ」
「か、勘弁してください」
最後に残った魚人は土下座した。
「クアナ!」
我に戻った優斗は言う。
「優斗、良くやったな。流石だぜ」
クアナは親指を立てた。
「さぁて魚人、グリニトリウムは何処にある」
「グ、グリトリウムは……」
魚人は顔を上げるが困惑した顔になった。
「クアナ、おまえが探しているのはこれかな?」
奥から声が聞こえ入ってきたのは何度も会っている雌ワニ、ザリリウム。ザリリウムは袋をこちらに見せる。
「やはりおまえか、ザリリウム」
「よく私の名前をご存知で」
「そりゃそうさ。おまえは悪の中では有名中の有名だからな」
「ありがとう。おまえほどではないがな。さて、おまえはグリニトリウムが欲しいんだろ?」
「そうだ。早く渡せ!」
クアナは獲物を狩るような目でザリリウムを睨んだ。
「焦るなクアナドリア。おまえにとってはこれは重要かもしれない。だがおまえにこれを渡すわけにはいかない。私はおまえのアレが見たいからな」
「アレ?アレとは何だろう」
優斗は剣を雌ワニのザリリウムに向けながら考えていた。
「残念だが、これは渡さないというかやらない」
「やらぬなら力づくで!」
クアナはチーターのようにザリリウムに近づいたが、それと同時にザリリウムはテレポートし、クアナは壁に激突した。
「クソッ!ザリリウムめっ!!」
クアナは相変わらず鋭い目で睨むが、優斗にとっては一体何がなんだか分からなかった。しかし今日はクアナが今まで見せなかった表情を見た。そして疑問に残る幾つかの事。一つはクアナはグリニトリウムという物が欲しかった事。そして「クアナが犯罪者」そして「クアナのアレ」という事。
「よし、ここを出るぞ」
「お、OK」
そんな事を考える暇も無く、優斗達は急いで旅館から去った。
ポイント・感想よろしくお願いします。