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Dream Story  作者: 夜舞崎 結季
10/10

Dream10 ゼドゥラルの威力

何やらじぃさまは企んでいます。そして優斗は再びゼドゥラルに…

「目が覚めたか?」

 あれから何十時間か経った夜。優斗はゆっくり瞼を開けると、目の前にはじぃさまが椅子に座って、こっちを見ていた。顔を横に向けるとクアナが背を向けて寝ていた。

「どうしてここに…」

 優斗は自分が何故研究所にいるのか分からなかった。俺は確か山にいた筈…

「おまえはゼドゥラルになったのじゃよ」

「ゼドゥ…ラル」

 天井を見ながら優斗は喋る。

「そうじゃ」

 するとじぃさまは椅子から降り、棚にびっしりと埋まっている本の中から一冊の今にも契れそうな厚い本を取り出した。

「これを見てみなさい」

 じぃさまはとあるページを開いた。左ページを見ると、滲みが点々とあって見にくいが、龍の絵が載っていた。鱗のように頑丈な皮膚、厚い尻尾と鋭い牙と爪、翼は鳥のように羽毛のようなものが見える。これに俺がなったって言うのか?

「これに…」

「そうじゃ。お主はゼドゥラルになったのじゃ。そしてお主はゼドゥラルになって意識を失っていたクアナをここまで運んできたのじゃよ」

「ボ…ボクがクアナを?」

「そうじゃ。最初お主が来た時は吃驚した。お主の意識は無く、ゼドゥラルの意識が甦ったかと思って、わしは食われるんじゃないのかとな。けどお主の記憶は若干残っていた。お主の優しい心が残っていたからこそクアナは助かった。本当に申し訳なかった!」

 じぃさまは急に土下座をした。

「どうしたんですか」

 優斗は起き上がる。

「謝らなくてもいいですよ。そう言えば実は…」

「実はここにある。お主のポケットに入っておった」

 実はじぃさまの机の上に幾つかあった。

「良くやったぞ」

「あ、ありがとうございます…」

 優斗は少し戸惑った。

 ちょっと待てよ…俺いつの間に手に入れたんだ?確か雪崩れに遭ったんだから採ってないんじゃ…

 疑問に思ったが、記憶が無かった時に採ったのだろうと優斗は認識した。

「これで…ボクは戻れるんですよね?」

「あぁ今作っておる。それまでゆっくり寝ておれ」

 じぃさまは本を本棚に入れると、部屋を出て行った。

「これでコイツとはおさらば出来るんだよな」

 両腕を見て、真っ赤になった腕を見ながら優斗は自分に言い聞かせるように言う。



 一方じぃさまは研究室にいた。

「第一段階終了じゃな」

 ドアを閉めた直後、ニヤッと笑みをするじぃさま。実験台に行き、右手でフラスコを持ち、中の黄色の液体を振りながら言う。 

「もうじきじゃ…この世界はわしのもんになるのじゃ。後はアイツを殺すだけじゃ」

 じぃさまは後ろの壁に貼ってある一枚の紙を見る。紙には国王なのだろうか、王冠被った髭の長いおじさんが刷ってあった。

「アイツにわしは何十年間クソみたいに使ったことか。次はわしが使ってやろうぞ。チルキリル」

 どうやら紙に映ってる人の名はチルキリルというらしい。

「見てろよチルキリル。貴様の命、そしてこの世界はもうじき終わる」

 振っていくうちに色がオレンジ色に変わり、じぃさまはフラスコを置く。




 その頃クアナは優斗が寝た事を確認するとゆっくり優斗の方に顔を向ける。天井を見ながら寝ている優斗の顔を見た途端クアナは悲しくなったような顔で見つめていた。視線は優斗の腕に。マグマのように真っ赤と黒い斑点を見て、クアナは何か申し訳ないことをしたなと後悔し始めた。

「本当に…本当に優斗をこんな姿までにする必要があるのかしら」

 クアナは起き上がり、部屋を出る。長い廊下を歩き、2つほど角を曲がった正面には白い鉄のドアが現れた。ここはじぃさまの研究室だ。ドアノブに暗証番号があるためじぃさま以外入れない。しかしクアナはじぃさまにどうしても聞きたいことがあり、ドアをノックする。

ゴンゴン

 幾らノックしても反応がない。研究中か?

ゴンゴン

「駄目か」

 諦め、後ろを向いた時、

ガチャ

 ドアが開いた。クアナは研究室に入る。色んな試料が並ぶ中、数十メートル先にはじぃさまがスポイトで液を取り出していた。取り出した液体を別の試験管に入っている赤い液のい中に入れる。

シュボン

 黄緑色の煙が吹き出ると、試験管内の液体は黄緑色になった。

「おぅクアナ」

「なぁじぃさま…一つ聞いていいか?」

「なんじゃ?」

「本当にこれでいいの?」

「何がじゃ?」

「優斗だよ、優斗」

「なんじゃ、その件か。いいかクアナ。何度も言うが、わしらが今行っている事は全て正しいんじゃ」

「でもよ…優斗をゼドゥラルにまでさせる必要があるのか?」

「あたりまえじゃ。わしらは夢の世界にいる。夢は簡単に世界を変える事が出来る。じゃが、今までわしは何十年間もアイツの下で苦しめられたんじゃ。そして今回、やっと夢が変わってわしは、遂にあの苦しみから脱出できた。また夢が変えられ、あそこには戻るなんてもう懲り懲りなんじゃ」

「だったらじぃさまがチルキリルを倒せばいいじゃないか。優斗は関係ないでしょ!」

「馬鹿言え!」

 じぃさまは急に怒鳴った。

「おまえはあいつの権力を知らない。あいつは色んな手口でこの国を支配しとるんじゃ。デモですら起こさせないほどな。アイツ(チルキリル)を倒すためには幻の破壊者ゼドゥラルしかないんじゃ。わしゼドゥラルの体液を作る事に成功した。しかしゼドゥラルの体液を注入し、変身させれるのは人間のみじゃ。だから今回優斗じゃだっけ?あいつに協力してもらうんじゃ」

「でも、いくら何でもこれ以上は…だってじぃさまは、優斗を元の人間の姿に戻せるの?」

「大丈夫じゃ。ちゃんと治す薬はちゃんとある」

「約束してよ。チルキリルを倒したら、優斗をすぐ治してよ!」

「あぁ、分かった。いいから早くここから出なさい。わしは最終段階に入るから」

 そう言うとクアナは研究室を出た。

ガチャ

「本当にじぃさまは約束してくれるのかなぁ」

 ドアに寄り掛かり、天井を見ながらクアナは一息吐き、廊下を歩いていく。




 数時間後。目を覚ました優斗は何も喋らず、ただ両腕を見ていた。

「まるで病人みたいだ」

 肌色だった皮膚が今ではマグマのような色…自分の腕じゃないみたいだ。

「俺は一体いつまでこの夢の中にいるんかね~」

 優斗は無意識に溜息を吐いた。その直後!

「うっ!」

 急に心臓を掴まれたような激痛が優斗を襲う。

「うわぁぁあああああ!!!」

「なっ」

 優斗の声にクアナは急いで優斗がいる部屋に入る。

「どうした!」

「ク…クア…」

 左手で心臓部分を押さえ、首を上げ、クアナを見ながら右手で助けを求めるかのように掌を指し伸ばす。優斗はかなりの量の汗をかいていた。

「おい!どうした!」

「あ…あ…」

 優斗は一生懸命声を出そうとするが「あ」という言葉しか出なかった。しかしその代わりに謎の声が聞こえてきた。

「ココカラ出セ…」

「え?」

 奇妙な声に恐怖心が次第に出てきたクアナ。

「ココカラ…出セ!」

「うああああああああああああ!!!」

 謎の声と共に優斗は空中を数秒間舞った。

「おい!どうしたんだ!そうだ!じぃさまを!」

 クアナはじぃさまの所へ向かおうと後ろを向いたその時。

ビリビリビリ

ボキボキボキ

 服が破ける音、骨が軋む音が部屋中に響く。優斗は1分ももかからないうちに部屋中一杯に成長した。クアナは口が開いたまま後ろに下がり、壁に体があたり、座ってしまった。優斗は成長していく。腰の下辺りから尻尾が生え、足や手はそれぞれ3本になり、牙のように鋭い爪が生える。背中から翼が生え始めるのと同時に顔も次第にドラゴンへと変わっていく。鼻と上唇が前へ伸び、鋭く太い牙が口から数本()み出す。ほぼ二等辺三角形の耳は後方へ伸び、目と鼻の間に角が生える。

ピキピキピキ

 部屋がまるで低張液に浸しかのように膨張し、塵や砂が天井から落ちる。

「グワァァアアアア!!!」

ドンッ

 一鳴きした優斗、いやゼドゥラルは強引に頭を天井に着け、ここから出ようと思いっきり力を入れる。

ゴゴゴゴゴゴゴ

 地面が振動し出す。それは研究室にいたじぃさまも気付いた。

「な、なんじゃ!?」

 研究室を飛び出し、慌てて優斗が寝ていた部屋に行く。

「な、なんじゃあこれは!」

 じぃさまが見た光景。それはマグマのような鱗をしたゼドゥラルの右太股部分だった。

ドカーーーーン

 地表に着いたのか、勢いよくゼドゥラルは空へと飛んで行った。部屋の端ではクアナは意識を失っていた。

「クソ!」

 じぃさまは空を見上げた後、すぐ様研究室へと入った。




 一方ゼドゥラルは空を飛んでいた。

 じぃさまの研究室から東方に進むと、前回宿泊したホテルがある町が見えた。そんな町の中、買い物帰りの途中、一匹のゴキブリの獣人の女の子が指をさした。

「ねぇママ、あれなぁに?」

「何かしら?」

 母親は日差しを手で隠しながら小さく見える飛行物体(ゼドゥラル)を見る。飛行物体は徐々に近づき、そしてゼドゥラルは口に火を含み始める。

「おい、一体何だあれは!」

「何だ?龍か…」

 獣人や宇宙人たちが、歩くのを止め、飛行物体(ゼドゥラル)を見つめる。ゼドゥラルは頬を膨らませ、口一杯に火を含ませると、一気に火を吹き始めた。

「火だ!皆逃げろぉぉおおお!」

 火を吹いたのを確認した直後、住人は逃げ出した。火はあっという間に街に届き、街はあっという間に火の海と化した。

「グワァァアアア」

 一鳴きした後、ゼドゥラルは飛び去って行った。




 そこから北へ270km。三大都市の一つデルンドカイナン。人口は一番多い1600万人。住人は普段通りの生活を送っていた。

「ふぅ~今日もあちぃでゲスなぁ」

「ホント。汗がさっきっから流れてばかりだ」

 巨大ハムスターと巨大バッタが太陽を見ながら話していた。

「全く…今日も真夏日らしいぜ?」

「ほんとかい。乾期は辛いね。全く…」

 バッタはハンカチで顔の汗を拭き取る。

「グワァァアアアア」

 突如鳴き声が街中に聞こえた。住人は一斉に空を見る。勿論バッタとハムスターも。

「な、何だ、あの不気味な鳴き声は!?」

「わ、分からねぇよ」

「グワァァアアアア」

「ほら、また聞こえた」

 バッタは数歩後ろに下がる。

ウーウーウーウー

 突如街中に警鐘が鳴る。

「避難命令発令!避難命令!何者かが接近中!外にいる者は直ちに中へ避難して下さい。繰り返します、避難命令発令!避難命令!何者かが接近中!外にいる者は直ちに中へ避難して下さい…」

 街中にアナウンスが聞こえ、住人は突然パニックになった。

「おい!何だよ何者かって」

「分からねぇけど早く避難すっぞ」

 皆は一斉に建物に避難し始めた。


 一方飛行隊は敵を倒すため、戦闘機に乗って空を飛んでいた。

「敵の尾行に配置せよ」

 スピーカー越しから総長と思われる声が聞こえる。隊員は指令通り、ゼドゥラルの背後に着く。何も知らないゼドゥラルは膨らんだ腹から火を口に送る。口から火が漏れる。

「隊長、敵は口から火を漏らしております」

 飛行隊隊長が総長へと伝える。

「相手はそろそろ攻撃を開始する。慎重に狙っていけ」

「了解」

 飛行隊隊長を乗せた戦闘機は高度を下げ、ゼドゥラルの腹部に当たるよう、細かい微調整をしながら発射準備をする。他にも何十機程の戦闘機も発射準備をする。

「いいかおまえら?」

 飛行隊隊長は隊員に伝える。

「こちら7号機、準備完了です」

「3号機、準備完了です」

「12号機、準備完了です」

 次々と準備完了という声が聞こえる。

「よし、それじゃあ全員構えろ!」

 隊長の声に合わせ、隊員が操縦席の上に付いている発射ボタンを押す構えに入った。その頃ゼドゥラルは火を吹きだした。

「撃てーーーーーーー」

ババババババババ

ピシューーーーー

 射撃や小型ミサイルが一斉にゼドゥラルへと向かう。そして隊長の戦闘機に備わっていたミサイルは見事にゼドゥラルの腹部に中った。

「やったか?」

 黒煙でゼドゥラルの姿が確認できない。風で次第に、黒煙が流れ去る。

「な、何だコイツ…全然効いてないじゃないか」

 黒煙が流れ去ると、ゼドゥラルは無傷だった。そしてゼドゥラルは鋭い目で後ろの戦闘機等を睨んだ。

「こ、これはヤバイぞ…」

 隊長は嫌な予感を察知した。そしてその予感は的中した。ゼドゥラルは旋回し、戦闘機に向け、角から何やら電光を放った。

「ウーウーウー、操作不能、操作不能。直ちに脱出してください」

 突然操縦機から警報機が鳴った。

「何だ!一体どうなってるんだ」

 焦る隊長。

ガクン

 隊長が乗っている戦闘機は操作不能となり一気に下降する。他の戦闘機も全て操作不能となり、下降する。

「クソッ!あいつ何をしたんだ!」

 レバーを押しても引いても何も変化はない。目線には町が見える。

「畜生…チクショウウウウウウウウ」

ドカーン

 隊長の戦闘機は町に入り、爆発した。それにつられるように他の戦闘機も火の海と化した街に溶け込んだ。そしてゼドゥラルは火を町へと吹き、飛び去って行った。

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