3、土曜日を妄想する〜
僕の家は一軒家、閑静な住宅地ってとこで、まあ静かだ。
とは言え、変な人はいるもので、2軒隣のおばちゃんはいつも玄関先に立っている。
カメラを通りに2台設置して、なぜか人が来るの見えると表に出てくるキモいおばちゃんだ。
「こんばんは〜〜 」
「お帰りなさい、今日はお帰りが遅いのね、クラブ始めたの? 」
「えへへ〜、彼氏にパフェごちそうになったの〜 」
「まあ! よかったわね〜 」
そう言うと、サッと家の中に消えて行く。
おばちゃんは、恐らく僕が嫌いで冷やかしに出てくる。
心であっかんべーだ。
「ただいまー! 」
ダダーッと2階に駆け上がり、マイルームに飛び込む。
勉強机の横に、カーテンで仕切ったプライベートラインの向こうに入ると、紙袋をそっと洋服の間に置いた。
「まーちゃん、ナマゾンから荷物来てるよー」
「はーい! 」
階段下りて、キッチンのぞくとスーツにエプロン姿のパパが指さす。
オールバックで無駄にカッコいい。
イケオジだし、きっと女にモテるのに、元ママに離婚されてから女っ気ゼロなんだよなー
まあ、難があるなら性格だろ。
「何買ったの? 」
「お年玉で可愛いエッチな大人のオモチャ買ったの。」
「またそんな物買って! 知らない男について行っちゃだめだよ! 」
「だからこれで我慢してるじゃん。僕もう高2だよ~ 」
「もう〜、18越えたらすぐそんなの買っちゃって。
なんで可愛く育ったのにソンナになっちゃったんだ。
パパりん複雑う。」
「可愛いの好きなだけじゃん。バーカ。」
お玉持って、プルプルされても僕困っちゃう。
だってさ、ママのBLのマンガ見て育ったわけじゃん?
今更ですよ、今更言うな。
箱持って、部屋に戻るとプライベートラインに入ってワクワクして箱開ける。
お花の可愛い髪留めと、ピンクの可愛いディルド、ちょっと大きくしてみたの。
うーん、どうだろう。
今使ってる空色の出して比べてみる。
「あー、ちょっと大きかったかな~、今夜試してみよっと。
後はいつものローションとゴムの消耗品セット。
あとは~ リボン付いた可愛いロリータ系カチューシャ! 」
頭に付けて、鏡覗き込む。
真っ白じゃなくてナチュラルホワイトにして良かった。
うん、可愛い。
いつか使う時を楽しみに、アクセの引き出しにそっとしまった。
「まーちゃん、先にお風呂入っちゃいなー 」
「はーい! 」
そんなこんなでお風呂に入って、パパりんとご飯食べて、居間でソファに座ってテレビ見る。
今夜の煮込みハンバーグ美味かった。
パパりんの料理はなかなかの腕だ。
最初はもの凄く時間かかってたけど、最近はめっちゃ手早い。
土日は僕が作る事もあるけど、だいたいカレーか炒めるだけで完成の冷凍食品のミールキットだ。
土日の方がパパりんが遅いのは、趣味の集まりとかマジウザい。
パパりんがお茶碗洗って隣に座ると、一緒に歌番組見た。
一番人気のグラスレビューの歌が始まる。
ボーカルのココナは、顔も可愛いし、透き通るような声もいいから好き。
足でトントンリズム取ってると、パパりんがパタパタうちわであおぎ始めた。
「この歌手、好きなの? 」
「ん〜、いいよね、ココナの声きれいだし。カッコいいし。」
「パパりんの方がカッコいいでしょ。」
「おっさんくっさ、」
「ひどうい、今日遅かったね。どこか寄ったの? 」
「男にナンパされただけ。」
「え〜〜〜〜! どんな奴? 何かされたの? 」
「リーマン、一緒にお茶してバイバイした! 」
「まーちゃん、怖いときはちゃんとパパりんに言うんだよ!」
「はーい、はいはいはい」「勉強するんだよ! 学生はね! 勉強が〜〜〜! 」
面倒臭いから、さっさと自室に戻る。
ベンキョーベンキョーって言うけどさ、ちゃんとベンキョーもしてるってば。
大学もそこそこ公立駄目だったら、専門学校でいいやと思うわけ。
卒業したらバイトして自分で稼ぐし、好きな事学んで、好きな事仕事にしたいもん。
僕は服飾に進みたいなーって思ってる。
可愛い洋服が好きだから。
ほら、プライベートルームに寝転ぶと、好きな物が僕を囲んでる。
お気に入りのワンピースに、リボンのいっぱい付いたブラウス。
白黒かグレーのゴスロリ系でまとめてる。
服に対して小物は派手めに、バッグはラメ入れて、ギラギラとか、靴もエナメル。
この高いヒール履くために、毎日筋トレも欠かさない。
お小遣いとお年玉と、ドーナツ屋さんのバイトで稼いだので買った、特にこのスカートとワンピは僕のお気に入り。
「くふふ、それじゃ気分上げてこー 」
ベッドに寝っ転がって、イヤホンして、気に入った曲のファイルを流す。
一曲流しながら、お気に入りのマンガめくる。
はあ〜、この好きのすれ違いが何とも言えない。
好き、スキ、ほら、言っちゃいなよ、
次の曲、始まっちゃったよ!
ベースの音が、僕の性感帯を刺激してズンズン鳥肌が立つ。
この曲、昔のやつだけど、ママがよく聴いてたから好きなんだー
お腹の底からカッと熱がせり上がってくる。
はあ、はあ、はあ、はあ、
もう少し、もう少しで好きなフレーズ。
ボンバボンボンボボボボボボンボン、キュウアアアン! ギュアンギュアン!
うっ! あっ! そこっ! はあはあはあ!
やだー、歌が始まっちゃう。
歌いらないから、このギターとベースだけ頂戴よお!
漫画もお気に入りのシーンで気分があがる。
「お願い、お願い、はあ、はあ、はあ、
優しく、優しくして。」
僕はすっかり、マンガの中の主人公だ。
彼の優しい手が僕を翻弄する。
「はあはあはあはあ、早く、早く来て。」
ここで、この歌の決めゼリフー
『 君を、救いに来たんだ 』
あーーーー!
性感帯に効くーーー!
ピロロ~ン
スマホが鳴った。
「えっ、なんで? 」
みんなからキモいってブロックされてるのに。
「え? え~と、え~~~ザンジバルううう??
僕今それどころじゃ無いんだけど~ 」
一応、ラインを見てみる。
『 来週の土曜日、ヒマだから付き合え。
親にはちゃんと言ってこいよ。好きなとこ連れてってやる。
どこ行きたい? 』
「はああああ??? 」
マジ? キモくなかったのかな?
なんだかストーンと気持ちが落ち着いた。
『 バッグと指輪持って来いよ! 』
「ああ、何だそっち目当てか。
えーと、休日知ってる奴が誰も行きそうに無いとこってどこだろ。
ほどほど遠くて、あいつが納得出来そうなとこって…… うん、あれか。」
『 勉強のために、美術館に行きたい 』
『 なんだ、以外と真面目なんだな。わかった、近場のA美術館でいいか? 』
「え~~、それ近すぎだろ、ほら、服飾絵画展やってるとこどこだったっけ? 」
検索して探すと、電車で片道2時間ってとこのB美術館に決めた。
『 B美術館行きたい。あと、どっかでお花見たい 』
なかなか返事来ない。
失敗したかと思ったけど、しばらくしてようやく場所わかったと返事来た。
「も~、年寄り、ググるの遅すぎ~ 」
ハートいっぱい送っておく。
親指下向けた絵が返ってきた。かわいー
「さて、来週だね。正装で行きますか。」
ウキウキして、また、はあはあ始める。
おっさん、どんな顔だったっけ?
「あーん、まだ彼がおかずの域に達してないじゃん。」
ねえ! ザンジバルさん、ねえ。
お願い、して。 してよ、して!
「んっ! あっ! あっ! あっ! 」
僕はとりあえず、来週土曜日の予習を妄想し始めた。




