12、Tバックはダメだって!
結局、メシは駄目だけどパンツ買ってやるって、帰る前にデパートに来た。
僕はTバックやめろって言われたら、次どんなパンツ履こうか悩むんだよね。
ブリーフなんていやだし、トランクスもいやだ。
ザンジバルは男物の下着売り場でエスカレーター下りるけど、もう一階上の女物に行きたくて立ち止まる。
「ほら、カッコいいの教えてやるから。」
「でも、 ヤだもん。
パパりんみたいな白いパンツ履きたくないもん。」
「あー、四季島さんは白か~
いいから来て、黒いのとかカッコいいぞ。」
「黒いの? なんかエッチだね。」
ザンジバルが僕の手を引いて下着売り場に連れて行く。
「ほら、これ。ローライズのボクサーパンツ。
女物もあるんだよ、これなら抵抗ないだろ? 」
見本がパネルに着せてある。
あれ?? なんかカッコいい。
「ほんとだ、カッコいい。
雅史さん、これ履いてるの? 」
「いや、俺は普通のボクサーだな。もうちょっと上まである奴。
サイズは? お前細いからSかな? いや、結構プリンとしてたな。」
モヤモヤ思い出したのか、真っ赤になった。
クスッと笑って、サイズ見てMサイズの黒を手に取る。
うーん、Sでもいいけど、Mサイズでいいかな。
隣にマイクロサイズってのもある。
サイズ微妙なとこで意外と高いな。
僕のお小遣いじゃ、2枚にちょっと足りない。
「あー、マイクロは高校生にはちょっとエッチだからローライズにしとけ。」
「ピチッてしてるのと、ゆっくりしてるのどっちがいいの? 」
「ボクサーパンツはピチッとしてるほうがカッコいいかな。
でも、リラックスしたい時は緩いの履くな~
ほら、買ってやるから、1万で買えるだけ買え。」
「ほんと?! ありがとう! 雅史さん。」
「お前な~~、その雅史さんっての…… なんかハズい。」
「だって、雅史さんでしょう? 買ってくる! 」
「あっちで服見てるから。」
「うん! 」
Sを黒2枚とMの濃いグレー2枚持って、レジを探してお金を払いに行く。
こんなパンツあるの、知らなかった。
男物パンツは見ないようにしてたからなー
だって、写真がキモいもん。
でも、なんかちょっと大人になれるような気がして、ウキウキする。
雅史、最終回で満塁ホームランだよ!
雅史が服を見る仕草をしながら、嬉しそうにレジに行くマリルーの姿を見る。
モノトーンのワンピースがフワリと膨らみ、ヒラヒラと髪が踊る。
可愛いな……
は?
「止め止め、気のせい。
馬鹿だろ、会ったの今日2度目だぞ。
もう会うことも無いんだし、あいつ男だぞ?
ガキも出来ねえ結婚なんて不毛だろ。」
常々同性結婚が話題になるたびに、子供も出来ない結婚に何の意味があるのかわからなくて、そう悪態突いては姉に時代遅れな奴だと言われてきた。
今だって考えは変わらない。
俺は普通に、女と結婚して、子供作って、普通の家庭作って……
「あら、雅史じゃない。」
聞き覚えのある声に、血の下がる思いで振り向く。
それは、先日プロポーズしようとして、待ち合わせをすっぽかされた彼女だ。
相変わらず栗色の髪は綺麗にカールされて、化粧もメリハリのある目元にゴージャスな美人、あの日は帰って泣くかと思ったのに、ショックで涙も出なかった。
でも、だ。
しかし、
あれ? そうだ。俺は彼女からは、別れをハッキリ言われたわけじゃない。
ここで会ったが、チャンス到来。
「輝美、この間はなんで…… 」
言いかけたとき、後ろから派手なスーツ着た男が現れた。
頭からつま先までブランドロゴ付けて、いかにも成金だ。
「輝美、待たせたね。外商の担当者がいなくて…… ん? こちらの人は? 」
「ああ、いえ、お友達なの。
ちょっと、勘違いされて困ってたから…… 」
は?? 勘違い??
ちょっと待て、お前俺に好きだとか言ってキスしたじゃん。
俺はお前にねだられたバック、散々悩んで喜ぶなら仕方ねえって買いにいって、雨ん中待ってたんだぞ?
あっ!
あっ!
この野郎! 二股かけてやがったな?!
「いや、勘違いじゃねえだろ、お前さあ、」
「あたしと付き合いたいなら、外車くらい買って下さらないと。
なにあれ、小さい車。
あたし、ああ言う小さい車って、チョロチョロネズミみたいで酔うのよ。
ごめんなさいね。」
随分ご丁寧に俺のマッツー(MAZDA2)、ディスってくれるじゃねえか。
あれでも4WDの上のグレードなんだぞ。
この野郎、お前なんか乗せるんじゃ無かった。
何だこのキザ男、笑ってやがる、くっそ腹立つ。
「雅史さん、お待たせ! 」
マリルーの声に振り向くと、満面の笑みで大事そうに包みを抱いている。
ちょっと首傾げる姿が可愛い。
なぜか、心の底からホッとした。
「雅史さんのおかげで助かったわ。
私、男物下着にうとくって。
こちら、お友達の方? おばさまこんばんは、素敵なご夫婦ですね。」
「お、おば…… ?! 」
マリルーはピョンと雅史にすり寄ってくると、腕を組んでもたれかかってきた。
「あ、あのバッグ…… 」
輝美がマリルーのバッグに目が行った。
「あ、これ素敵でしょう?
雅史さんがね、ポーンと買ってくれたの。私、高価だからいらないって言ったのに。
可愛くて素敵でしょ! 雅史さん、大事にするわね。」
「あ、ああ。」
雅史が、チラリと輝美を見る。
輝美の顔が、みるみる真っ赤になった。
「あ、あたしの時は…… 」
ギリギリ歯がみする輝美の横で、成金の男がマリルーを見て呆然と顔を赤くした。
「か、可愛い…… 」
やっぱりーーー!!
な?! やっぱマリルー可愛いんだよ。うんうん
「ね、雅史さん、遅くなるから行きましょうよ。
あの、可愛い車で送って下さるんでしょう?
うれしいわ、ライトのキュッとつり目が可愛くて、あの深みのあるレッドが大好き。」
「あ、ああ、行こうか。じゃあ、な。お幸せに。」
輝美と男は、呆然とマリルーを見つめながら、返事も出なかった。
それほどその時のマリルーは綺麗で、可愛らしくて、パンツ抱いた姿は輝いて見えた。




