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して! 〜 ノンケリーマンを攻略する方法  作者: LLX


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10/12

10、僕を大切に思ってくれる人

僕は、ザンジバルと手を繋ぎたくて、その機会をうかがっていた。

信号待ってると、彼がのんびりあくびして手首を持つ手が緩む。


今だ!


サッと手を引き抜いて、手の平返すと手を繋いだ。


「わあっ! 」


ビックリして、ザンジバルが手を離そうとする。

僕は負けじと握り続けた。


「な、な、なんで手を繋ぐんだよ! 」


「色気のないつなぎ方って、なんかやだもん。」


「こんなの、仲いいみたいだろ! 」


「仲いいじゃん、僕ら恋人だし。」


「ウソ言うな! お前だって恋人とか思ってないだろ! 」


「うるさいなあ! 恋人に恥かかせて何が面白いんだよ! 」


「お前恋人じゃねえし!  」


ふうん、そんなこと言うんだ。

顔真っ赤にした相手に~


「じゃあ、僕って何なのさ。」


「部下の息子。」


「ふうん、」


面白く無い。


僕はパッと手を離して、車が来るのも構わず赤を渡って車の方へ歩き出した。


「あぶなっ! おい! え、えと、ま、 マリルー! 」


マリルーなんて、僕の名前じゃない。


彼は未だに僕の名前さえ知らないんだと思うと、胸が痛くて悲しくなってくる。


僕を大事だと思う人は、この世のどこにいるんだろう。

パパりんは、僕を大事だと思っているのかも怪しい。

そりゃあ定時で帰るけど、ご飯作ってくれるけど、

小6でママと別れてから、僕をどこにも連れてってもくれなくなった。

車を手放すとき、ママいないから、もう使わないねって言った言葉がショックだった。


僕なんか関係ない。ママがいたからドライブしてたんだ。

あんなに楽しかったドライブは、パパりんとママ、2人だけのドライブだった。

はしゃいで懸命に2人の気を引こうとしてた僕は、ただの邪魔な騒音だったと思い知らされて、悲しくて身体中から力が抜けた。


パパりんは僕を見て無い。

休日はすぐいなくなる。

エサとトイレの世話しかしないペットと一緒じゃん。

熱出して学校休んだ時も、中学生だからってあれはないよ。

タクシーで病院に行きなさいってパンとお金だけ置いて会社に行って、結局病院の先生に電話で怒られた。

ほんとに馬鹿、馬鹿野郎だ。


バーカ! バカ、バカ、僕なんか、なんで生きてんのかこれじゃわかんな……


パシッと手を握られた。


振り向く僕が泣いてるの見ると、ザンジバルが少し驚く。

視線を泳がして、何言っていいのか探してる。


「車…… そっちじゃないから。」


そう言って、ポケットからハンカチ出して僕に渡すと、手を繋いで歩き出した。


「悪かったよ。…… 名前、なんて言うんだ? 」


「海って書いてマリン。

ママがキラキラネーム付けちゃって。」


「いいじゃないか、マリンか。それでまーちゃんなんだな。」


「違うよ、パパりん、この名前嫌いなんだ。

お爺ちゃんもお婆ちゃんも、誰1人僕の名前は呼ばないよ。

恥ずかしいんだってさ。」


「なんだ、それでまーちゃんか。クソ野郎だな。」


「だって、パパりん、ザンジバルと同じ種族だから。」


「何だよ、それ。」


「変なとこばかり気が利くのに、人の気持ち考えるのが下手くそな ダサ男族。」


「悪かったな! 」


ドアを開けて、僕を座らせると自分も乗り込んだ。

もう帰っちゃうのか。

短いなあ、こんなに綺麗な1日なのに。

今日だけのシンデレラなのに。

寂しい気持ちを知らないザンジバルは、とうとう家へと車を発車した。





車の中で、しばらく黙ってた。

窓から見る景色は、色が陰って重く見える。

来るときあんなにキラキラしていた海は、どんより白波立てて、キラキラが消えてさび色の空を写してる。

信号で止まると、ザンジバルがラジオを付けた。

丁度音楽が鳴って、昔の歌が流れる。

ザンジバルが、合わせて鼻歌歌った。


『 ラブリー ラブリー デンジャラス、

氷のようなヤイバを手に、君のために、血を流す

Only love will save you 』


「くっさい歌、古すぎ~ 」


「ばーか、このグループ流行ったんだぞ~

でも、あっという間に引退して、余計人気が上がったんだけどさ~

引退は引退だもんな。その後なーんも出ない。」


「ふう~ん」


「なあ、兄弟とかいないの? 」


「いないよ、だってママは僕1人でキャパオーバーしちゃったんだ。」


「離婚したんだったっけ? 」


「そ、ママはまだ遊びたいギャルで、遊びたいのに遊べないから、いつもイライラしてた。

ママはパパりん大好きで、でも家事が下手だったから、パパりんは一生懸命家事してたんだ。

僕が小学校に入学して、ママは毎日オシャレして町に遊びに行くようになったんだ。

高学年になると、僕はパパりんが帰るのを待つ毎日だったよ。」


ああ、僕は何でこんな事喋りはじめたんだろう。

ママの話なんか、誰にもしなかったのに。


「ふうん、若い奥さんだったんだな。」


「逆、2才上だよ。パパりんは17、ママは19で結婚したから。」


「高校生で結婚か〜 」


「パパりんは通信制の高校だったんだって。もう中卒でお勤めに入ったらしいから。」


「中卒で勤め?! 家が貧乏だったとか? 」


「そんな感じ、だから僕にはちゃんと学校出て勉強して欲しいんだよ。」


「17と19ねえ…… はじけてんなあ。だからお父さん、若いのか。」


「パパりんは誕生日が12月なんだ。

だから、ママは一つ違いだって言い張ってたけど。

だから、若いからさ、いっぱいまだやれることがあるんだよ。

だから……

僕とパパりんはさ、油断しちゃったんだ。

外出すると、凄く機嫌が良かったし。

でも、小6の時、学校から帰ったら、あっさり離婚届置いてバイバイって出て行っちゃった。

パパりん、衝撃だよ。

ああ、やっぱり~~って。

でもさ、これがママのためだからって、二人で頑張ろうねって。」


「ひでえ母ちゃんだな。今どこにいるんだ? 」


「知らない。年賀状だけ来るけど、住所がないんだ。

生きてるよー! ピースピース! って、毎年書いてある。

時々海外のハガキなんだ。

何してんだろ、ギャンブルかな? あはは! 」


「なんだそれ! あははは! 変な母ちゃん。」


変じゃない、きっと、遊びとかじゃ無くてママは自分のやりたい事してる。


「変じゃないよ、ちゃんと仕事してるんだと思う。

僕は遊びに行きたいんだと思ってたけど、ママの視線はもっと真っ直ぐしてた。

きっと、パパりんのために辞めたお仕事に戻りたかったんだ。

ほんと、ママはさ、それでも僕を小6まではきちんと我慢して育てたんだよ?

中学の学生服姿見て、ビューティフル!って、ギュウッと抱きしめてくれた。

もうさ、十分だよ。

どっかで幸せなら、それでいいやって感じ。」


「ははは…… 物わかりいいガキ。」


「でしょ?! ねえ、いい子って頭なでて! 」


「はあ?! 」


「ねえ、おねが~い! 」


えいって頭を肩に寄せたら、あー、もう~とか言いながら、いい子いい子してくれた。

こんなに、自分の話聞いてくれる。

いつの間にか心の中にいっぱいたまっていた物を、僕は雅史に吐きだして、気持ちが軽くなっていくのを感じていた。


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