1,出会って1分でファミレスデート(仮
小悪魔のような君は、粋に棒縞のゆかたを着こなして、夜空に派手な音を上げて花が開く下で、花火なんかどうでもいいように、プレゼントした朝顔のうちわであおぎながら、俺のほうに視線を流す。
さらりと真っ直ぐな髪が頬に落ち、俺の視線はどこを見ていいのかわからなくなる。
好きなのか嫌いなのか、どっちでもいいような俺の態度は気持ちの裏返しで、
きっと…… きっと俺は……
出会った時から好きなんだ。
金曜の夕方、夏の学校帰りのその日。
ザンザン降る雨は、世界をまるで洗い流しているようだと思う。
湿度がガーッと上がって不快感MAXで、他に通行人もいないようだし、傘でも回そうかとくるくる回す。
「もうすぐ夏休みか〜、バイトしよっかなー かったるいなー 」
くるくるくるくる
僕の透明傘は、ぐるりと黄色の千鳥の模様が入っているから、くるくる回すと傘の中ですずめがいっぱい飛んで行くようだ。
学校帰りだから、差し詰めすずめの学校かな。
新しく買った黄色のレインブーツは、以外と快適だ。
紺色の制服のズボンに良く映える。
まあ、高校でこんな派手なレインブーツ履いてるの、僕だけだけど。
なんかでっかい水たまり見つけて、タッと走ると思い切り飛び込んだ。
バッシャンッ!
「あっつ、」
横で声がして、ハッとそちらを向いた。
ショップのウインドウ前で雨宿りしてたサラリーマンが、座った目をこちらに向けている。
「あっ! ごめんなさい! 濡れました? 」
「濡れました。」
視線を下げると、紺色ピンストライプの高そうなズボンがびっしょり泥混じりの水で濡れている。
やっちゃった! どうしよう。
「濡れましたね、どうしましょう。」
「どうしたいの? どうしてくれるの? 」
サラリーマンは、何かを待っていたのか、時計を見るとため息を付く。
髪を73に分けて、カバンとリボン付いた紙袋持って、この暑いのにピシッと高そうなスーツを着てる。
30台くらいかな? いや、老けて見えるのこの髪型のせいだよね。きっと20代後半?
うん、ちょっとカッコいい
「ごめんなさいで許してくれます? 」
「許さん。このスーツ、新品だ馬鹿野郎。」
「えーー! じゃあ、やっぱ身体? 」
横向いて、もじもじチラリと夏服学生服のシャツの襟元めくってみせる。
「児ポで破滅させる気かよ。とんでもない奴だな。」
神妙な顔のサラリーマンさんが、ブフッと吹き出した。
もう一度時間を見て、道の先を見て諦めたように首を振る。
「じゃあ、その辺で迎え来るまで時間潰すから付き合ってくれ。」
「えっ、ホテル? 」
「アホか、ファミレスだ。何分付き合える? 」
「んー、2時間くらいならおけ! 」
「そんなにいらん、30分だ。」
「じゃあ、サラリーマンさん。」
「何だそれ、えーと、ザンジバルだ。」
「何それ、本名? 」
「アカウントネームだよ、お前は? 」
「マリマリマリルーです、よろー」
「なんだそれ、ガキか。」
「ガキだから汚しちゃったわけで~ 」
ザンジバルさんが、雨に濡れながらファミレスへと歩き始める。
急いで追いかけると、手を伸ばして彼の頭の上に傘を掲げた。
「何だこの小学生みたいな傘。いらん! 」
「え~、だって濡れちゃうじゃん。」
「俺はいらん、余計なことするな。」
「ふうん、」
すっげ、出会って1分でファミレスデートに誘うくせに、変に奥手なんだ。おもしろ!
僕は何となく、またくるくる傘回して後を付いていった。
年は20…… いや、 20台後半かな。
いい時計してるし、カバンに財布もブランド品。
何より靴がくたびれてないし、このツヤ、皮だね。デザインがシャープで安物じゃない。
こいつは上物じゃん。
でも雨なのに革靴とか気合い入ってるなー、デートかな?
「お前さ、のこのこ知らない奴について行くと、内臓売られるぞ。」
「だって、ザンジバルさん、悪い人じゃ無さそうだし、汚しちゃったし。」
「ふん、」
「それにちょっとカッコいいし。」
「援交はしないぞ、ガキ。俺はストレートだ。」
ファミレスに着くと、その辺に座れと、ガラガラの席を指さす。
やっぱこういうシチュエーションって、窓際だよね。
奥の窓際に行くと、面倒くさそうにあとを付いてきた。
「ここ、ネコのロボットがいるから好きー 」
「ネコったって、棚に載せて来るだけだろ? 」
「お取り下さいニャン! って可愛いじゃん。」
「はっ、何でもかんでもニャンニャン言えば可愛いとか。」
「年寄りくっさ! うざー 」
「うるせえガキ、パフェでいいだろ? マンゴーパフェ。」
あー、なんか目が据わってくるんだけどー、このおじマジウザい。
勝手に僕にパフェ頼んで、自分はドリンクバーでアイスコーヒー入れてきて飲み始めた。
「ねえ、ザンジバルさん。」
「うるせー、勉強でもしろ。」
「ちぇっ、」
面白くないのー、
DKとファミレスデートだって言うのに、冴えない奴ぅ〜
僕はpadで撮った黒板の写真出して、ノートに写し始める。
するとピコピコ、ネコロボが持ってきてくれた。
ちょ! 早すぎィ!
「お取り下さいニャン! 」
「にゃんにゃん! 」
僕は美味しそうなオレンジ色のマンゴーが乗ったパフェを、早速手にしたにゃん!




