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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第八章 践祚編

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5.初めての旅行(1)(幕間)

「宣、本当に大丈夫か? 為時と変わってお前が馬車にしても良いんだぞ?」


 やっと東の空が白らんできた頃、私達はいつもと違って朝から静かにいそいそと皆動いていた。

 そう、今日は初めての「社員旅行」なのです。本当は殿下と二人が良かったけれど、流石にそれは無理なので、側近だけを連れての旅行の決行日。


「凛花、しんどくなったら言えよ? 為時と交代するからな」

「はい。でもそこまで遠くでは?」

「まあな。斥候も出るしな」


「殿下ご用意が整いました」

 裕進様の声を受けて、全員が騎乗する。

 為時様だけ、数名を従えて敢えて少し派手目な馬車に乗る。軽く道中用の荷物を積んでいるだけで、必要物資は全て現地で整えてくれている。

 何かの時の、囮に為時様がなる。それでも彼も元は猛将と呼ばれた男。周りも偽装しているが全て軍の精鋭揃いだ。


「凛花なかなか良いぞ? 男()姿も」

 そう、私と結は少年、いや子供の男の子の変装をさせられていた。

 殿下も全てを黒装束を纏い、護衛役に。少し上官の主役は裕進様が。

 問題は……

「宣、無理するなよ?」

 惟光様が声を掛けるが、支宣様は緊張しているのか無言だった。


「行くぞ!」

 殿下の号令で一気に馬が走り出す。

「駿蘭ちゃんよろしくね!!」



 一行は順調に駆け、残り一キロ程に差し掛かったところで、本日お世話になる領主様の軍の方々が迎えに見えた。


「この度は、我地に御逗留頂き誠に~~」

「いや、今日はそういうのは……」

 惟光様が領主様に言う。

「ああ、坊ちゃん! 大きくなられましたなぁ」


 あ、この方確か為時様の甥子さんって言ってたわよね? 

 本家の嫡男だと、やっぱり坊ちゃんになるのか……



 一行は何事も無く? 無事? 到着した(一名を除いて)


「宣大丈夫か?」

「結、水を!」


「だから無理するなって言うたであろう?」


「ゲホッ、ゴホッ…… はや、はや、す、ぎゲホッ……」

「もう、何やってるんですか! はい! これ」


 ──バチン

 結の平手が支宣様の背中に入った。


「ゴホッ…」


「汚い、宣よ」


「この、女が!」

「は? 文句あるの?」


「なあ、アレは? どう捉えたら?」

 殿下が私に聞いてきた。


「どっちなんでしょう? でも惟光様は?」

「は?」

「え? 知らないのですか?」

「は? 何が?」

「え? え? はあ?」


「なんだ? 何かあるのか?」

 殿下が凄く食いついてくる。

 いやいや、貴方達しょっちゅう一緒にお風呂に入ってません?

 話しとかしないの?

 男の人って恋バナとかしないのかなあ?


 って……

 ふと、殿下の顔みた。

 ナイナイないわ。

 自分達の話しをされたら、とんでもないことに気づいた私は、笑って誤魔化した。


「まあ、色々若者にもあるんでしょう?」


 殿下は首を横に振っていた。

 この方、他人の恋愛事情とかに全く興味なさげよね? 


「どうぞ此方へ、狭い所ですが」

 そう言って私達は為時様所有の別荘に通された。


 あら、意外とちゃんとしている!

 流石、代々左大臣を勤めた名家だけはあるわ。


 別荘本邸と、周りに何棟か従者用のコテージみたいな物も完備されていた。


「あ、俺、凛花と二人であっちが良いわ」

 そう言って既に従者用の小屋に向かう。


『駄目に決まってます!』

「何を言っておるんですか!」

「大人しく本邸に!」


「為時早くないか?」


 ん? だよねえ?


「あまりにも遅いから、馬借りて来たわ!」

『は? 何考えてるんですか! 父上!』


「阿保か……」


 と言うことで、私達は無理やり本邸に押し込まれました。


「何やってるんだ? お前ら?」


「俺伽番す、だから隣で」

「俺護衛だから いや隣は俺だろ?」

「私、侍女だもん。だめです私が隣です!」

「私達は別棟で良いわよ? ねえ? 貴方」

「ああ、貞子さんと二人ならどこでも」



「ん? 何話しているの??」


「部屋決め会議中です」

 支宣様が答える。


「は? 何処の?」


「此処の?」


「何で? お前らが?」


『ここが一番だから?』


「貞舜、つまみ出せこいつら」


「まぁまぁ殿下、今日は無礼講でしょう? 元より」


 ワナワナワナ……

 そう、無礼講で構わないと言ったのは自分だったことに、この時彼は後悔していた。


「あ! じゃあさ、みんなで一緒に寝るってどう?」

 結が突然凄いことを言い出した。


「お前頭おかしいだろ?」

 支宣様が言う。


「あん? へなちょこのくせに!」

「何だと?」


「やめなさい二人とも……」

「御方様、だってこいつが!!」

「こいつとか言わない!!」


「支宣もです! 結に謝りなさい」


 私は支宣を睨む。


「……すいませんでしたーーー」

「こら!」


「ほら、結も!!」

「言い過ぎましたーーーーーーー」


「結!」

 もう本当に仲が良いのか悪いのか……


「昔は()()でよく転がってたよなぁ、為時によく叱られたけどな」


「来世は幸せになって欲しいですね……あ、別に変な意味ではないですからね」

「ああ、分かってる」


 殿下と惟光様の三人とは、安岐様のことだ。


「…………」

 支宣様が微妙な顔を。


「仕方ないだろ、お前まだ幼児の時だから」

 殿下が支宣様の頭をこづく。


「痛いっす!」


「みんなで一緒に寝ようっか」

 私はみんなの顔を見ながら言った。


「うんうん」

 結は直ぐに嬉しそうな顔をした。

「俺はどっちでも良いですけど……殿下が……」


「んじゃ決定ね!!」


『おい! 何でそうなる!!』

 あら? 仲良しですのね? 私は息ピッタリの殿下と支宣様を見た。


「では、先に湯に行ってきますね? 結行きましょう」





 ◇



「なぁ、あの娘、ちょっと凛花に似てないか?」

「何であんなじゃじゃ馬が! 御方様となんてとんでもない」

「じゃじゃ馬って御方様……」

 殿下と惟光が顔を見合わせる。


「あんな女何処が良いのやら、まあ兄上の好みに文句は言いませぬが」


「おい!」

「は?」

「え?? 知らなかったんですか??」


「え?? 惟光があの娘に??」

 支宣は無言で首を縦に何度も振る。


「え? お前ああいうのが()()なのか?」

「趣味って……」


「ちょっと俺には分からんかも、すまぬが ()()は抱けぬわ」

「殿下!!」

「あ、俺もないわ」

「宣!」

「あれでいて結構気がきくところもあるのですよ?」

「うーーん……だとすると裕進がお前の兄に??」

『それはないわ』

「だよなあ? 悪い奴ではないのだがな。って 裕進は??」

「あ、父上と別棟に行きましたよ?」

「あいつ影薄いなぁ……あいつ。何とかしろよ。弟よ?」

 そう言って殿下が兄を見た。


「まだ、違いますから!」

「なぁ? 本当のところ宣はどうなんだ? あの娘は?」

「あ! 俺も聞きたい! それ! 俺に遠慮してとかはやめろよ?」

「そういう()()は御座いません」

「趣味って……」

「なぁ、お前まだ凛花を?」

「うーん、好きは好きですけど、愛しているとかは違うのは変わらないですよ?」

「ようわからん。って あいつら風呂長くないか?」

「女性ですし」

「俺より先に入るか? 普通?」

『無礼講でしょう?』




「お待たせしました」

「ただいまーー」



「行ってくるわ」

「はい。行ってらっしゃいませ」


「って何でお前らも付いてくるんだ!」


「護衛ですから」

「伽番ですから」


「関係ないわ! 阿呆!」





「で、何で一緒に入ってるんだ?」

『ここが一番だから?』

「人んちの風呂だ! 阿呆!」


「ところで並び順どうします?」


「何の?」


「だって雑魚寝でしょ? 殿下と御方様は隣同士として、御方様の隣はあの女でしょ? で、あの女の隣は? なら? 兄上行きますか?」


「………」


「惟光くんや。なんなら君達二階でも良いぞ?」

「あ! それが良いのでは?」


「ちょ!!」





 ◇


「待たせたな。ってお前ら……」

「寝てる?」

「何だこの女は!」


 男子諸君が風呂から戻ると、既に女子二人は眠りについていた。

 が、しかし、じゃじゃ馬娘は布団に大の字になっていて、未来の皇后の腕に抱かれていたのだった。


「この女引き離せ」

「ですね」

 支宣が結の布団ごと端に寄せた。


「俺らも寝るか……明日朝早いし」


「明日って釣りっすか?」

「うん。昼飯な、頑張りなさい自給自足な宣」


「……」


 そして、男子三人組も仲良く一緒に布団を並べて眠りについたのでした。




 ◇



 ──ガチャリ



 後を追う用意をしかけたが、弟が無言で首を横に振った。

 その後を追うように御方様がそっと殿下を追うのを確認した。


「眠れないのですか?」

「あ、いや起こしたか? 悪かったなあ?」


「いえ? 綺麗な星空ですね?」

「ありがとうな。俺の為に」

「いえ? 私が行きたかったので」

「あと五ヶ月かあ……自由も」

「あら? 変わりませんよ? きっと貴方は」

「為時が早死にしたらいけんしな」

「帝だから駄目! はないのですから」

「ありがとう。吸い込まれそうな星空だな」


「貴方にね?」


「お前にな」



 何方からともなく、私達は手を繋いで、夜空の星をその後も眺めていた。




「帰るぞ、明日は早いしな」

「はい」



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