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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第八章 践祚編

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1.蹴球(幕間)

 あれから、裕進様は為時様付きっきりで「右大臣中将中尉」としての心得を教わっていると聞いた。

 せっかくの裕進様の良いところまで消えてしまわないか? が多少心配ではあるが、取り敢えず任せた以上は彼の成長を待つことにした。


 そんな中、裕進様の提案で武官見習いを新たに採用することになった。本来は十五歳から武官試験を受けることは可能だ。

 ただ、結や信のようにそれ以下でも有能な芽があるかも? と、一番の目的は雇用の拡大だった。農民や商人の三男以下の子らの就職口の斡旋が大きかった。


 十三歳以上とし、十五歳までの二年間は「見習い」として採用され、ちゃんと給金も出る。

 食事も三食保証し、望めば読み書きや算術も無料で教わることが出来る。

 その代わり下働きなどが課される。


「ねぇ? ならば御料地の一部を開墾させて、御料米や、酪農などをさせては如何でしょう? そうしたら全ては無理ですが、武官達の食料の自給自足になりませんか? 買っていた金を給金にも充てれますし? 子らが将来、軍に入らなくとも、農業や酪農経験あれば、また職の幅も広がりましょう?」


 私は御前会議の報告会で、裕進様の報告を受けて今後の軍部の経営について今話していたので、提案してみた。


 ん? 


 何か駄目なことでした? 皆の反応が……


「お前ってやつは……」


 え?? これ駄目?


「宣、候補地は?」


「一番近くて農地に適しているとなれば、この辺りになります」

 そう言って支宣様が壁にある地図を指した。


「ここなら、少し歩けば何とか行けるか……」

「いえ、行き帰り走れば鍛錬になります」

 裕進様が恐ろしい提案をした。


「あ、ああ……」

 殿下は私の方を笑いながら見た。

 性格変わった? 裕進様って?? 2キロ以上どう見てもありそうですけどねぇ?


「では、その方向で進めてくれ。惟光、土地の契約書を作成しとけ」


「御意」


 え? オッケーなんですか? って早くないですか?

 いいのか? そんなので?



「競売地の売買契約書の写しになります。既に殿下の署名済ですので、一応概要報告になります」

 そう言って支宣様が皆に写しを配る。


「おい!」


「え? これって」


 殿下も一早く反応した。

 売買契約書には殿下の署名があるので、殿下は既に内容は承知。が、しかし私が驚いたのはそこではなかった。


 そう支宣様が配った写しには二枚目があった。それは「株式」の新設だった。

 現在の大店は全て「個人経営」だ。当然と言えば当然で基本「世襲制」である。

 それに対し株式だと株券を購入し、資金調達が出来れば起業できるのだ。

 出自に関係なく、商才と実力で成功できるチャンスを得ることができる。


 支宣様らしい提案である。


「お前、金貸しにでもなるのか?」

 殿下が支宣様に真面目な顔で聞いた。


「いえ? 私にはそのような度胸も人徳も御座いませんし、人には分相応と言う物が御座いますし」


 いや、あんた絶対向いてると思うけど? 投資家とかやってみたら? 

 と、私は真面目に思った。


「まぁ、門が開けるのであれば、反対はせぬけどなぁ……」



 ──この後、数年後、所謂日本で言う財閥にあたる商家がこの国にも出来たことは、また別のお話。


 この後も、サクサクと色々なことが決定されて行き、本日の御前会議は終了した。





 ◇




「お、おい、あれって?」

「た、多分?」


「噂には聞いたが」

「女?」

「ばかやろう!! 天子様だ!」



 会議終了後、またもや殿下の気まぐれで、我々は今修練場に居た。

 それは、裕進様が見習い武官達に体力作りと仲間意識を強めるために始めた新しい「修練」の見学の為だった。


 裕進様が彼らに始めた修練とは「蹴球」所謂サッカーであった。

 武官見習いは下働きが中心で、剣技は十五歳以上で試験に合格した者にしか教えないのが軍規だった為、それまでの体力作りに裕進様が考えた修練だ。



「ちょ、殿下! 何をやっているのですか?」

 惟光様が止めに入る。


 あーーあ。また始まった。

 支宣様は最早、我関せずを決めている。



「おーーい! 俺も仲間に入れてくれ!!」


「ちょ! っと!! 殿下!!」

「裕進! お止めしろ!! 突っ立てないで!!」

 あまりにも早かった行動に、裕進様は呆気に取られたまま棒立ちしていた。


 修練場で球を追いかけ走り回っている子らを見て、なんとこの御方、御尊顔を隠すこともせず、いきなり上掛けを脱ぎ捨て、絽衣姿のまま修練場に走っていったのだ。


 全く子供なんだから……


 童子達と楽しそうに走り、球を蹴る殿下を見て私は、少し羨ましかった。

 身分を関係なく、誰とでも気さくに接する帝が居ても良いのでは? と。


 為時様が見たら発狂しそうですが……


「支宣様もたまには行ってらしたら?」

 私は支宣様に声を掛ける。

 妙に大人かと思えば、子供ぽいところがある支宣様。

 まだ十六歳ですもの。

 今からそんなに国を背負って行かなくて良いと思いますよ?


「わたくしは……別にそのようなことは……」

 恥ずかしがり屋さんなのね? そうよねぇ小さい頃からずっと一人で……




「でんかーーーーーー!! 支宣様が行きたいって!!」

 私は遠くにいる殿下に声を掛けた。



「ちょ! 凛、あ、御方様!!」

「ほら、行きなさいって」


「宣ーーー早うこんか!!」



 結がそっと近くに近づいてきた。護衛が全て「蹴球」に行ってしまったからだろう。


「ねえ? 私達も行く?」

 私は結に聞いた。


「お、御方様……流石にそれは……殿下が……」


「あら? それはおかしいわ? 自分は良くて、わたくしは駄目! ってねえ?」


「それとこれとは……」

「いいから行くわよ! 結!」



 そうして私達も修練場へと向かった。



 このあと、為時様にこっぴどく説教されたのは言うまでもなかった。

 そして結は兄からも拳骨を貰ったそうな。

 ごめんよ結ちゃん。












 ◇以下幕間になります。お暇な人のみお立ち寄り下さい◇


「だからーー何でお前らと一緒なんだって?」光

『ここが一番だから?』


「お前ら今日こそぶっ殺すぞ?」光

「お背中流しましょうか?」宣


「って宣が、あんなに走ったの俺初めてみたわ」兄

「お前走れたのな?」光


「いや、走るぐらいなら私にだって……」宣


「って、話し逸らすな、何でお前らまで付いてくるのだ?」光

『ここが一番だから?』

「金とるぞ? 今度から」光


「あ、良いですよ? 全然、別に金にそんなに困ってませんし」兄

「あーーーーやだやだ、これだからお坊ちゃん育ちは」光

「それ、貴方が言います?」兄

「俺、苦労してるもん」光

「いや、()()()()苦労してないじゃないですか!」兄

「仕方なかろ? 奴が罪滅ぼしに寄越しただけで」光

「奴って……」宣


「個人資産おいくらぐらい?」兄

「お前なあ……左大臣家の坊ちゃんの言う言葉かよ」光

「宣知ってるのか?」兄

「おおよそなら」宣

「は? お前いつ調べた?」光


「殿下のって所得税あれ払ってないですよねえ?」宣

「お、お前……」光


「え? 脱税?」兄

「殺すぞお前!」光


「金山だけでゆうに予算の半分近くありますよねえ?」宣

「嘘? あれ殿下の個人名義?」兄

「奴のだ。で、この前譲渡されただけだ」光

「あれは、個人とは言え、保険みたいなものだろ」光


「左大臣家ってお前の全取り? 為時いなくなったら?」光

「恐ろしいこと言わないでくださいよ」兄

「あーー私は別に良いですよ? 金に執着ないし、困ったら殿下に食わせてもらいますし」宣

「何故そうなる?」光


「ここが一番だから?」宣

「父上がちゃんとお前のことは考えてるから安心しろ」兄

「……」

「だそうだ、宣くん」

「……」


「でるぞ! 暑いわ!」


「ここ露天にします?」宣

「それ良いな!」兄


「お前ら勝手に人んちの風呂の改装計画立てるな! 阿呆! 帰って早く寝ろ!」光


「あ、今日俺伽番す」宣

「要らんて言うたろ?」光


「父上が煩いんで……」宣

「要らんわ。帰れ」光

「それに今日はもう寝てるぞ? あいつ」光


「惟光も帰って良いぞ?」光


「仕事ですから」兄

「まだ寮にいるのか?」兄


「住むとこなくなったんで」宣

「実家帰ってやれよ? 為時喜ぶぞ?」光


「今更でしょう……」宣

「家建てたら良かろ? なら」光


「要らないでしょう?」宣

「惟光、連れって帰ってやりなさい」光

「ここの隣に建ててやって下さい」兄

「嫌だ」光


「御方様に頼もうかなーー」宣


「殺すぞ?」光


「出るぞもう。って帰れよ? お前ら? 絶対帰れよ?」光


「伽番ですって」宣

「護衛っす」兄

「どっちも要らんわ! ぼけ!」光



 数日後、露天風呂を別に増築され、

 詰所(東宮御所の夜勤者用)が増築されたのはまた別の話し。

 そのまま年明けには御所になるため、まだ建設途中ではあるが、どんどん建物が増えて行き完成が遅れるのは、言う間でもない。


 因みに、御所の総責任者は太政大臣である。

















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