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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第七章 はじまりの刻編

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20.夏の嵐(1)

 今日は風もあり、爽やかな日になりそうねぇ。

「では、行って参ります。あとはお願いしますね?」

「承知しました」


 結と共に私は職場へと向かう。




 ◇



 ──トントントン

「失礼致します。御料理番殿が至急殿下に御取次をと申しておりますが」


「ん? 宣」

「はっ」


 支宣は? と思いつつ主の代理で執務室の外に出た。


 執務室の中は警備上の問題や極秘案件などの書類もある為、基本的には幹部以外は入室を認めてない。


 殿下行きの箱を飛び越えてでも、至急と言ってきた御料理番に支宣は少し危惧した。

 毒や食中毒、害虫や病気などを心配したからだ。


「何事でございますか? 御料理番殿?」

「此方が来月用にと回ってきた物ですが……」

 そう言って男が支宣に「注文表」を渡す。

 支宣は手に取るが一瞬で顔色が変わる。


「有難う御座います。助かりました! 果物と蕃茄(トマト)の追加を出来るだけお願いします」

「この時期ですので……できる限り此方でも動いてみます」

「ご迷惑をお掛けします」


 ──ガチャリ


「何だったのだ?」

 支宣はこの後の展開が分かっていた為、気が重かった。

 が、時は一刻を争う事態な為、仕方がない。


「此方を」


 短く答え、先程預かった「注文表」を主に見せる。こう言う時は必要なことだけを言う方が被害が少ないことを彼は学習済であった。


 七月とは言え、晴天ではあったが今日は比較的風もあり過ごしやすい朝だった。


 そんな中で案の定、雷が落ちた。



「支宣! 今直ぐ惟光と為時を呼べ!!」

「裕進様は?」


「後で良い!!」

「御意」


 予想通りの展開に支宣は既に、ドアの直ぐ近くで用意していたのだ。

 外の秘書達も、朝から落ちた雷に、何事? と思って敢えて距離を取って遠くにいた。




 ──トントントン

「支宣です」


 主の入室許可を待たず、支宣は二人を連れて中に入る。入室禁止の札もちゃんと掛けておいた。


「緊急案件と伺いましたが?」

 何も知らない兄が殿下に声を掛けた。


 そしてこの後の展開が予測出来た支宣は寒さ対策に上衣の前を深めに合わせ直し、呼吸を整え万全の用意をしていた。



「御料理番殿()からの()()()()じゃ!! お主らはうちの軍を潰す気か? あん?」


 そう言って殿下が「注文書」を投げた。

 雷雨が落ちるまであと数秒。

 支宣は心の中で数を数えた。

 自分予想では後、十五。


「こ、これは……」

 手にした惟光は絶句した。隣で覗き込んだ為時も同時に硬直した。


「答えろ!!」


 寒っ。そして、早!

 十二を数えると同時に雷雨となった。

 一段と温度が下がる。支宣は少しづつ後ろに後退していた。

 彼は寒がりであったのだ。


「惟光よ? 裕進は上げて何ヶ月になる? 為時よ? お前の役目は何じゃ?」

「答えろ!!」


 本日二回目の雷雨が落ちた瞬間だった。

 嵐に変わる予感がした支宣は、衣を夏用にしたことを後悔していた。


『申し訳御座いませんでした』


 左大臣家当主と嫡男が平服した。




 ──「おはようございます。ん??」

 いつもと雰囲気が違う秘書達をあとにして、その原因となりそうな部屋に向かう。

「何人も入るべからず」

 あら? お人払い?



「あ? 答えになっておらんだろ!!」


 聞いた問に、違う答えを述べた兄と養父に支宣はこの後の展開を予感した。


 ちょ、何事?!

 ドアの外にまで、怒号が聞こえてきていた。私は許可を得ず急いでドアを開けた。


 そこには小さく平服する二人の男性の姿が。

 支宣様に目配せする。彼は首を横に一回だけ振った。


「わたくしの指導不足で御座います」

「わたくしの怠慢で御座います」


「そんな戯れ事必要ない!! これをどうするかを聞いておるんだ! 雁首揃えてそれだけか? あ? 仮にも左大臣を務める者よのぅ? それとも何か? 余が武官達の食の面倒まで全て見るのか? 申してみよ!!」


 流石に放置するには忍びなく、支宣が割って入る。

「只今、御料理番殿に蕃茄と果物をあたらせておりますが……」


 私は惟光様の手にあった「注文書」を取り上げ中身を見る。


「支宣様、至急、文和堂に連絡してプリンと氷菓を来月一ヶ月間毎日人数分入れれるか確認して。それと、長谷部や三木さん他の有力商家に西瓜や梨や瓜の贈答をいくらか分けて貰えないか聞いて。あと「胡瓜」を大量に発注して頂戴。砂糖や蜂蜜の追加もお願いします!」


「凛花!!」

 殿下の怒号が飛んだ。だが今はそんなことを論議している暇はない。


「御叱りは後程ゆっくり聞きます。今は対応を急ぎましょう」


 私は左大臣家の二人を立たし、支宣様と手分けして動くように申し付けた。


 二人きりになった部屋で殿下に臣下の礼をとる。


「出過ぎた真似をしました。どんな処分も受けます」




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