19.仲間
──「浴衣会」の開催にあたり、私は殿下に一つ提案した。
日本で「お盆」にあたる八月中旬を開催日とし、その年に亡くなった方含め、ご先祖の供養をすることを。
安岐様の悲劇をこの国は忘れてはいけないと思ったからだ。
「ところで、花火師ってこの国に居たりします?」
「おい!」
殿下に頭をこつかれた。
やっぱり駄目でした? この話し。
「お前なぁ。分かってるよなあ?」
「……すいません」
「宮で二人だけの時言えよ。そういうのは」
「………でした」
光様に全て話してしまったことで、緊張感? いや注意力? が欠けていたのだ……
「一応職場だからなぁ? 誰が聞いているかわからんのだし」
私は一瞬天井を見た。
「あ、そっちは問題ない」
「え?」
「異常や殺気がない時は声が聞こえる範囲にはいないぞ?」
「えええええええ?」
初めて知った!!
今日一番の衝撃事実だわ!!
「ちょっと待って! その話だと誰かが聞いているかも? なのに、あんな……」
しまった!! やぶへびだわ……ってもう遅かった。
「あんな? ってのはどんなだ?」
こういう時の彼は、とても意地悪になる。
「今日は絶対駄目ですからね!!」
「ん? 何が駄目なんだ? 言ってみろよ?」
「………ズルい」
「ハハハッあまりにも可愛いからついな」
「んもう!!」
「怒るでない。まぁ座れって、で? その花火とやらを紙に書いてみろ」
私は拙い絵を描き殿下に伝える。
「なるほどなぁ……うーーんこの手の話はなあ……」
『あ! 居た!』
互いに思い出したのだった!
「もう終わるだろ? 定例会議」
最近は後進を育てる為もあり、通常の「定例会議」には殿下は参加していない。
そこで議題に上がって、要相談になった物を「御前会議」に回すことにしたのだ。
その甲斐あって? 最近は遅めの出勤や、こうして二人だけの時間が増えたのだった。
執務室のドアの外が賑やかになって来た。
会議が終了して皆が戻って来たようだ。
──トントントン
「失礼します」
惟光様をはじめとした幹部が入ってきた。
「どうだ?」
裕進様が書類を殿下に渡す。
御前会議にかける案件だけに丸がついてあった。
「なぁ……これ御前会議要るか?」
「重要 皇太子殿下生誕祭」
あーー九月ですからねぇ。生誕祭って……悪魔か!!
『要ります!!』
「よいよい、そのような。って近い! お前ら! 暑苦しい!! 離れんか!!」
愛されてますね? 殿下。
ってそういえば二十歳におなりになるんだっけ!! それは開催するべきだわ!
「良いじゃないですか? せっかくこうして皆さんが言ってくださっているのですから?」
「いや、いらんって、凛花だけで良いわ祝ってくれるなら」
「決定と言うことで、皆様宜しくお願いしますね?」
「おい!!」
少し照れくさそうにしている殿下を見て、私は嬉しかった。
最近こういう御顔をよく見れるようになってきたと思っている。
安岐様の件以来、少し思いつめたような頃があったので心配していたが、もう大丈夫なようですね?
貴方?
良い仲間に恵まれましたね? これも一重に貴方の御人徳ですね。
「誕生日ってそんなに嬉しいのか?」
真面目な御顔で殿下が聞いてきた。
「理由は何であれ、貴方と出会えたことに私は神に感謝しておりますので。ちゃんとお祝いしましょうね」
そう言って私は彼の肩に手を添えた。
これからは、必ず毎年お祝いしましょうね。
私は彼の方に目を向ける。
「次は支宣様の誕生日会もやりましょうね」
私は殿下にしか聞こえない声で小さく呟いた。
「過保護よな」
そう言った彼の御顔は優しい笑顔だった。
どちらも親の愛を知らずに育った二人。立場は違えど何処か似ている彼らに、良い仲間が出来て良かったですね。と心から思った。
「ところで、凛花っていつだ?」
「ん? 十一月で御座いますが?」
「では、その日も祝わねばだな」
「楽しみにしております」
「あ!!」
私は殿下の顔を見た。
「あ、忘れるところであったなぁ」
誕生日のことは大事だけれど、私達が皆の帰りを待っていたのは、皆と言うかある一人をだが。
「信、少し話がある、ちょっと奥へいいか?」
「何でございましょう?」
先程殿下に私が描いた絵を、もう少し分かりやすく絵と図解にした物を信に見せた。
「なるほど……確か東方の国でそのような物があると聞いたことが、あ! そう言えば、源外と言う者が、そういう変わった物を色々作っていると聞きましたが? ちょうど来週、勉強会が御座いますので、彼を知る者にたずねてみましょうか?」
「それは助かる。頼めるか? 信」
「御意」
「で、信? その勉強会って??」
私が身を乗り出して信にたずねたら、殿下が私の袖を引っ張った。
そして首を横に振る。
ですよね……駄目ですよね?
ちょっと気になるんですが……
「あ、御方様が興味があるような話の会かは? ちょっと……」
いや、信が行く勉強会って……凄い気になるんですけど……
殿下の顔を再度見たが、無言で首を横に振っていた。
ですよね……
流石にねぇ……
何か良い手を考えましょう。
「絶対駄目だからな?」
す、鋭い!
「駄目ぇ?」
「駄目!」
「むぅ」
「問答無用、駄目なものは駄目!」
「大福二つ!」
「諦めろ、絶対変わらんから」
「……」
「宣、つまみ出せ!」
「御意」
「菓子買ってやるから諦めるんだな凛花ちゃん」




