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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第七章 はじまりの刻編

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17.過保護

 ──結局昨夜は殿下の押しに完敗した私だったが、それでもちゃんと朝食作りをしたかったのだ。


「無理せずとも良いぞ?」

「あ、おはよう御座います」

 しかし寝起きの、この色気は身体に悪過ぎです……貴方。


「別に毎朝作らずとも良いのだぞ?」

 殿下が心配そうな顔で私を見ていた。

「そう思うなら、ご協力を?」

 ちょっと私は意地悪な顔で殿下を見上げた。

「なら、紀恵に全て任せても良いのに……」

「殿下!!」

「怒るなって……その気持ちは嬉しいよ。ただ、お前が無理するのが心配なだけだ」


 そう言う彼の顔は本当に辛そうに私の頭を優しく撫でる。

 何となく彼の気持ちは分かる。身内が居ても居なかった彼にとって私の存在は……


「でも私は、これぐらいは妻として貴方にしてあげたいのですが」

「なら、毎朝じゃなくて減らすとかにしろ。これは夫の命令だ。否は認めんぞ?」

 命令と言いながら後ろから抱きついてくるこの御方の優しさに、私は感謝の気持ちを行動で示したかったのだ。


「善処します殿下?」

 私のこの返事に、少し殿下も呆れ気味の様子だった。


「今日は少し遅めで構わんぞ。午前中は軍規の改正会議だし」

「そうですねぇ。では午後からに」

「あ! 午後に南国からの荷が届く予定だ。その時にでは」

「楽しみです!!」


 最近はこうして、殿下の命令で半ば強制的に出勤時間を遅くされることが増えた。

 それも全て、できるだけ私の負担を減らしたいと思う殿下の心遣いだろう。



 急遽出来てしまった午前休み。

 何をしようかしら? と、思ったけれど結局は殿下の浴衣を侍女達と制作することに没頭していた。


 しかし驚いたことに、いつの間にかうちの侍女達にも想い人が居るようで。皆、私に作り方を聞いてきたのだ。

 うん。こういう時間って楽しいよね?


「御方様、此方はこれで宜しいのでしょうか?」

「うんうん。良い感じですよ。きっとお喜びになりますよ?」

「そ、そうだと良いのですが……」


 うんうん。分かるよ。そうだよね? 不安な気持ちは分かるよ!


 あ! 折角なんで浴衣会開こう!!

 って全員分作るのは……長谷部堂!


「結! 急ぎで長谷部堂に連絡とってちょうだい!!

 とは言え……全員分は流石に厳しい。

 うん、女子だけに決定! 基本自分の分は自分で作る。プレゼントしたい者がいる娘は自分で。

 今日の南国の荷開けの後、侍女衆を集めて参加者に反物を選ばそうかしら?


 あ、でも一応、宮内で開催するなら……

 あの御方の許可はいるわよね……


「あとを御願いね?」

「承知しました」





 ◇



 ──トントントン

「凛花です」


 ………


 あ! 今、会議中だった!!


 ──ギィーッ

「開いた! って。これって不用心ねぇ……ってこれ私、不法侵入? まいっか!」

 私は主の居ない執務室に勝手に入り込み、主の硯箱を取り筆を走らす。

 全て手書きなのがちょっと面倒ではあるが、そこは仕方が無い。


「浴衣会の開催について」


 うん。こんな感じかな?



 ◇



「ん?」

 にしては影が動いていない?

 警戒の必要はないってことか? が、しかし念のため。



「何の用だ!」

 執務室が一瞬で張り詰めた空気に変わった。


「って! 凛花!!」


「ご、ごめんなさい……ちょっと早く来ちゃった。ふふ」


「来ちゃった。ふふじゃないわ!」

 呆れ顔と同時に雷が落ちた。


「お前なぁ? 出入り禁止にするぞ?」

「ごめんって。本当にごめんなさいってぇえええ」

 うん。流石にこれは駄目だ。私が悪いです。


「せめて、支宣か誰かに言えよ」

「ですよね。返す言葉も御座いません。はい。打ち首はご勘弁ください」


「阿呆」

 殿下も呆れていた。


「入るなら声掛けるか、入り口に張り紙でもしとけば良かろうに」


「あ!! なるほど!!」

「なるほどじゃないわ!」

「ごめんってぇ……」

「で、次は何だ? 何を思いついたのだ?」

 呆れた顔のまま殿下が聞いてきた。


「流石で御座いますねぇ?」

「犯すぞ?」


「お赦しを……」


 私は例の計画書を殿下に見せた。


「本当にお前って奴は、次から次へと」

 殿下が呆れて、既に扇子で御自身を扇ぎはじめていた。


「駄目ですかぁ? 園遊会も……中止になりましたし。せめて夜に皆で酒を飲むぐらいは……」

 そう、皆で演し物まで色々計画していた園遊会は、皇后崩御、親王病死を受けて中止とした。

 年内はしたがって、園遊会などの宴は控えねばならない。私達の結婚の儀を早められない理由はそこもあったのだ。

 ただ、この国のしきたりでは、新年を迎えた時点で喪は明ける。

 皇太子殿下主催の宴を年内に公に開催することは禁忌なのだ。


 そこで今回は主催は「宮で働く者の集い」として、主催は公人ではないことにした。

 実際酒を飲んで夜空の星を見たり、屋台を出したりと全て侍従達の有志を募る予定だ。


「どうせ、反対してもやりたいのであろう?」

「殿下!!」

「本当にお前と居たら、飽きんな」

「有り難う御座います!!」


「その代わり、一つ条件がある」

「何で御座いましょう?」


「全ての計画、準備に至るまで我々は関与しない。当然お前もだ。全て侍従らだけでやらせる。それなら構わんぞ」


「分かりました」


 厳しい条件ではあるけれど、ある意味当たり前の話だ。

 自分達が飲み食いして集まるのを、政府が計画開催しては意味がない。


「五百で足りるか? 寄付はしてやるわ」


「え?」

 反対されると思ったのに許可してくれただけでも嬉しかったのに、しかもお金まで? 

 何だかんだ言って過保護な旦那様である。


「どうせ、自腹切るつもりだろう? お前のことだから」

「………」

「あとなぁ。この前の三億お前の好きにして良いぞ」

「は?」


「米が早めに収束したからなぁ」

「でもそれは……貰い過ぎです。それに私だけの成果ではありませんし」

「まぁ、お前が何かに使いたい時に使うと良い。その代わりちゃんと収支に書けるようにな?」

「信用してないですねぇ???」


 殿下が少し睨んできた。


「跳ねっ返りだからな」

「ひどーーい!!」


 その後、結を中心に各所の侍従らに「浴衣会開催」の案内を配布した。

 役員を決め、色々と準備をしているようだ。


 花火ってこの国にあるのかしら??

 今度聞いてみよーっと。





















次回は少し大人な回になります。

苦手な方は避けてください。

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