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はじまりの刻 ~Shall we sweet?~  作者: 蒼良美月
第一章 出会い編
8/30

8.甘味は神

「ほら、早く! 次行きますよ? 凛花さん!」


「ま、待ってぇー。右大臣様ーーーーーーー!」



 ゼェハァ、ゼェゼェ、ハァハァ…………


 ヅカレタ シンドイ……

 てか鬼か! あの惟光とか言う男!


 出勤二日目の今日、私は自室の執務室に入ると同時に、直属の上司であるこのイケメン男、いや、脳筋男に手を引っ張られ、猛ダッシュで宮殿内にある各省を()()()()()()()()周っていた。


 この人私が女だってこと覚えてる? いや別に女性だからって特別扱いして欲しい! なんて言ってないですよ? 100メートル走全力走りを、休憩無しで何本やらせる気ですか?

 殺す気でしょうか? 


「あ、()()()()疲れた? 少し()()休憩する?」

「あーでも、昼までに挨拶周りは終わらせときたいんだよね。午後からは早速積み重なった仕事がたっぷりあることだしなぁ」


 今なんつった? 少し()()? 休憩? ()()()()()()仕事? たっぷり?


 もう全力ダッシュの刑が始まってそろそろ1時間ですが? 体罰か何かでしょうか?

 そりゃあそうですよねぇ? 何処の馬の骨かも分からない小娘、しかもド平民の小娘が、いきなり国のツートップ様、しかも源を辿れば皇族のお血筋の御方の補佐官。そりゃ、いじめたくもなりますよねぇ……


 嫌なら嫌ってはっきり言ってくださーーーーーーーーーーーーい!!


「おいおい、惟光君や。凛花は()()ですよ? いくら利発とは言え、君の体力と運動神経に付いていける訳なかろう?」


 ──神の降臨!


 本物の神様が来られたのかと思うぐらい、この時は心から嬉しかった。


「あ、そうだった……すまぬ。俺としたことが……凛花さん」


 昨日の「名前決め」会議からなんとなく三人の? 距離が近くなった? ようで、右大臣中将様は私のことを「凛花さん」と呼ぶようになった。そしてあの、やんごとなき御身分の御方も「凛花」と名前で呼ばれていることに先程気づいた。


「光様!」


 そして私も「光の君」とお呼びしたり、「光様」となったりと、それは「惟光様」も同様だった。

 私達三人だけの時は、互いにお互いの名で呼ぶまでの仲になっていたことに、()気づいたのだった。


 あれ? でもさっき一文字変な文字混ざってませんでしたっけ? 光さんや?

「児」って言いませんでしたっけ? こう見えてわたくし18歳で御座いますのよ?


 私は、無意識に目線を下に向け、自分の低い二つの丘を見た。

 丘? いや草むら?


 ──いいもん。大器晩成型だもん! うん。きっとそう。



「ごめんって。凛花ちゃん。ほら、甘いものでも食べよっか? ほら、少し休憩しよう? 少しね? ほんの少し」


 私がずっと俯いていたら、トイプーが機嫌を取って来た。

 それにしては「少し」を強調しすぎじゃないかい? にいさんや。


 私達()()は部屋に入り、おやつの時間にすることにした。


 今日のおやつは光様が持って来てくださった、焼き菓子だった。

 皇弟である殿下には、毎日10時に宮殿内の「皇族専用料理番」が手作りする「お菓子」が出されることになっていた。「お菓子」は10時と3時の1日2回必ず出されるしきたりだそうだ。


 ただ、この「お菓子」……正直あまり美味しくないんだよなぁ…。

 上品な味には仕上げてはいるんだけれど。華やかさに欠けると言うか味もイマイチで。

「饅頭」や「煎餅」、「焼き菓子」に「飴」等が「おやつ」の定番らしい。

「饅頭」はともかくとして、「焼き菓子」は正直ボソボソしていて、美味しいとは言えないような……


 ──ケーキ食べたいなぁ。プリンや、ゼリーや。



 ! 


 アフタヌーンティー! 


 なんと素晴らしい響き! 私って天才じゃない? 此処は何処? そう宮殿です!


 宮殿のティタイムと言えば! 


 アフタヌーンティーでしょうよ! 


 何で今まで思いつかなかったんだろ?


 そうと決まれば、ゆっくり座ってお茶を啜っている場合じゃないわ!





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