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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第七章 はじまりの刻編

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7.一触即発

「ありがとう御座います。御方様」

「いつも有難う御座います。妃殿下」


「御方様、此方が以前おたずね頂いておりました物になります、如何でしょうか?」

「あら? 良いじゃない。そうそうこんな感じよ。有難う助かったわ」



 朝から、いつもと同じで皆忙しくしていた。その中でも一際人が集まっている一角があった。

 今日は男性陣も多めではあったが、特に普段と変わらない為、皆何もそれには思っていなかったのだが。


 一人、気に入らなそうな顔で扇子をパタパタとしている方がいた。


「何だあれは? ウチは何か? 新しい()でも飼いだしたか?」


「まぁまぁ殿下。皆、御方様のお力に少しでも! と思って自ら率先しておるのですよ? 此方としては仕事が捗り、大変御方様には感謝しております」


 裕進が殿下に言う。


「ふーーーん。それは良いことだな」

 見事な棒読みだった。


「裕進様~~彼方でお呼びです~~」

「相分かった」

 裕進は急ぎ部屋を出た。



「実際、御方様の人気は高いですよ? いつも笑顔ですし、気遣いできますし、優しいですしねぇ、しかも誰にも分け隔てなく気さくにお声を掛けて下さいますしねぇ。そして才女ですし。男にも女にも人気ですが?」


 支宣が珍しく、熱く主に語る。


「お前? 人の女を……何て目で見ているのだ!!」

 殿下が、支宣の頬を摘もうと手を伸ばすが、ヒョイと支宣がそれをかわした。


 ワナワナワナ……


「まぁまぁ殿下。落ち着いて、宣が申しているのは、客観的に見ての御方様の人気度の分析でして、決して女子(おなご)として見ている訳では御座いませんし。ねぇ? な? 支宣も?」


 いつもの戯れ合いが変な方向に進みそうな雲行きがしたので、すかさず兄が止めに入る。

 流石は長年の付き合いであった。


 だが今日は──


「いえ? ちゃんと女子として見ておりますが? 兄上。あ、勿論殿下の奥方様であることは存じております故、禁を犯してまでは流石にありませんが、もし殿下が()()を泣かすようなことがあれば、私は今度こそちゃんと自分の想いを告げるつもりで御座いますが?」


 ──部屋の温度が一瞬にして凍りついた。


 夏の盛りを向かえようとしている七月にも関わらず、静まり返った部屋の空気は一触即発だった。



「宣!!」

 兄が彼の身体を掴み、殿下から遠くへ引き離す。


「惟光下がれ!!」


「でも! 殿下!!」


「余の言葉が聞こえなかったのか? 下がれ!!!」


 惟光は心配気に部屋を後にした。一応人払いの札を入口に掛けておいた。


「支宣? どういう意味だ?」

 言葉は丁寧ではあるが、その目は一切の笑みは既に消えていた。

 彼の言葉により、温度が更に低くなったような感じさえする。


「そのままの意で御座います。ただ、先程も申し上げましたが、あくまでも理想の女性と申しますか、惚れた腫れたとかとは少し違います。彼女が笑っていて、彼女が幸せでいて、彼女が殿下と仲睦まじくして幸せなら私はそれで良いのです!」


 支宣はいつになく、真剣に主に自分の気持ちを訴えた。


「想いを告げると申したのは?」

 彼の目は今だ鋭く、突き刺さるような目で問う。


「それは、あくまでも殿下が彼女を泣かすようなことをしたらの話しで御座います。ただ、私は彼女が欲しいよりも、彼女の笑顔を見ているだけで満足です。彼女も好きですが、殿下と一緒に居る彼女が好きなのです」


「安岐に寄せていた想いに似たものか?」

 殿下は少し冷静になり問う。


 支宣は首を横に振る。

「姉は姉で御座います。母の居なかった私の心の支えだったような……失礼ながら殿下にもお分かりかと?」


「して、何故、凛花を?」


「好きになることに理由は御座いますか?」


 目の前の男の真っ直ぐな答えに俺は一瞬驚いた。

 まだ子供だと思っていた奴が、今は男の目をしている。


「俺は凛花を一生手放すことは決してないぞ?」


「承知しております」


「それを分かっていて?」


「私は殿下のことも大好きですので」


「意味がわからん」

 そう言って彼は、手を掛けていた腰にある物から手を放した。


「一つだけ宜しいでしょうか?」


「何だ? まだあるのか?」

 少し怪訝な顔を向ける。


「愛しておられる者が居て、何故あの時、彼女の元へ? ただ信じて待つ者の気持ちより、ただ御自身が楽になりたかっただけではなかったのですか!!!」



「言うことはそれだけか?」

 感情の全くない冷ややかな声が、広く冷え切った空間に響く。


「出過ぎたことを……ご無礼を御許し下さい」


「出て行け」



 ──図星だった。ずっと自分の中にあった(わだかま)り。

 あの時、無理やりにでも手元に置くことは出来たはずだ。皇籍を離脱し、国を離れ何処か二人で静かに暮らすことも出来た。

 でも俺はしなかった。彼女の悲劇より、彼への憎悪を優先したのだ。


 その償いの気持ちが無かったと言えば嘘になる。

 惟光に言われ、情けを掛けたのではない。単に俺の償いだっただけだ。


 それを全て分かった上で凛花は俺を行かせた。


 愚かな男だな……



 彼は自分の顔を両手で覆い、(うずくま)った。









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