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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第七章 はじまりの刻編

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1.仮面の下にあるもの

「なぁ? 婚約の儀って必要か?」


『必要に決まっております!!』

「殿下の為に行うのではありません。凛花様と、そのご両親の為に行うのです!!」

 為時様のいつにない強い言葉に、殿下もこの時ばかりは反省した。


「なぁ、やるのは良いけど? ()()どうするよ? なら?」


『……』


 異様な空気に包まれた。


「結婚の儀」は基本的に当人だけが神殿に行き神官様によって報告奏上する。先日行われたものとおおまかな違いはない。非公式か公式かは違うが格式やら細かいことは別として、参列者は居ないのが慣例だ。


「婚約の儀」も、基本的には参列者は居ないのではあるが、結婚の儀を行いますよ~~言う報告を互いの両親に挨拶をするのだった。

 両親が既に亡くなっている場合は、祖父母等や墓前でも良いとされる。



 誰も正式には言わないが……何となく私も気づいてはいた。

 殿下の本当の父親が誰なのか?

 あの日見せた殿下の涙のあとと、彼の御方のその後の行動で。 

 口にすることは憚れる内容の為、誰もそのことに触れる者は居ない。


「まぁ良い。神殿で二人でやれば良かろう」


 殿下が明るく言った。


 本当にそれで良いのだろうか? 親として()はそれで良いのだろうか?

 一生名乗りでることはない関係。

 でも、本当に()()がそれで?


 その前に私も言わなければいけないこともあるしなぁ……


 引き伸ばし続けてきた、私の秘密。

 結婚の儀までには言わないとなぁ……


 暖かくなってきた外の光景に目をやり、何処か遠くにあるだろう? 祖国? に思いを馳せていたら。



「出自は関係ない。俺達が起源となる」


 そう言って殿下が背後から抱きしめ、小さな声で囁いた。


 ──もしかして? 


 と、言いそうになったが、次の言葉を飲み込んだ。

 私はズルい女だ。

 今の環境が幸せ過ぎて、それを壊すかもしれないと思うと、毎回言うのが怖くなる。


 季節は既に初夏を迎えようとしていた。


「今日は園遊会での褒章の意匠やら、褒美の品を決めるのであろう? さっさと終わらすぞ? 帰りが遅くなったら、煩いからのう?」


「殿下!!」


 そう、私は殿下にキツくお願いしたことがあった。

 定時は厳しくとも、残業は一日に二時間まで! を徹底してもらうこと。

 そして早く帰れそうな日は、早めにその分帰ること! を。


 特にこの犬兄弟,、殿下の為なら夜中まででも仕事しそうなので本当に心配だ。

 と、うちの侍女もではあるが……


 園遊会で良い縁でもこの子達にあると良いんだけどなあ。


 !!


 無ければ作れば良いのではないですか!!

 なんでこんな簡単なことを、今まで思いつかなかったんでしょう?



「凛花さん? 次は何をはじめようと?」


 うん。流石は殿下。そろそろ行動パターンを読まれてきたかな?


「ちょっと……殿下をお借りしますねぇ?」

 そう言って私は殿下の袖を掴み、奥の部屋へと引っ張って行く。


「え? あ? 凛花? まだ日が高いぞ? まぁ別に俺は構わんが? 会議中だぞ??」

「何言ってるんですか!!」


 お前の頭は()()()しかないんかい!!

 膝蹴りを食らわせたい気持ちになったが、そこはとどまった。


「実は殿下……ゴニョゴニョゴニョゴニョ。ゴニョ、ゴニョゴニョ~~~~ゴニョゴニョ~~」

 私は殿下の耳に耳打ちする。ちょっと説明に長くなる。


「凛花、ちょ、待て、やめ、」

 殿下が頬を抑えていた私の手を払いのけ、仰け反った。

 あれ? 怒った?


「お前なぁ……男の耳元で息を吹きかけ続けて、顔を抑え……首に手を回すって……誘い過ぎだろ……」

 そう言った殿下の瞳は少し憂いを帯びていた。


 はっ! やばい!!


 この体制!!


 背の低い私は、通常に椅子に座っただけでは当然殿下の耳に届かない。だから、伝えたい! 一心でなんと私は殿下の膝に乗り、殿下の首をロックし、そしてあろう事か顔に手をあてて、耳元で長く状況を説明し続けていたのである。


 当然そんなことをしたら、相手はお年頃の健全男子である。理性とは別なところで正直に反応しておられた。



「責任とれよ?」

 殿下の声が低く響く。たまに見せる本能を表に出した顔だ。

 仮面を脱いで化身と変わる瞬間。

 色気と狂気が混じり合う、何とも言えない魅惑の顔。


「こ、ここでは無理でしょう?」

 私は、小さな声で「正論」を説く。


「断れるなら声をあげてみよ」


 殿下が私の髪を強く引っ張り、壁にそのまま押し付けた。


 ──カチャリ


「で、殿下……」

「声をあげて助けを呼ぶか? それとも鍵を開けて逃げるか?」

「出来るものならやってみろ」

 そう言って殿下が激しい口づけをしながら、空いた手は既に下方へ。



 声をあげてしまいそうになる私に殿下がそれを何度も塞ぐ。


「あ、」


「いい顔だ」


「やっ」


 殿下の吐息がより一層激しくなる。


「で? どうするって? 侍女と、官達の出会いの場を用意しろと?」

 殿下は余裕な顔をしながら、私の耳元で続きを聞いてくる。


「そ、そ、あっ」


「答えになってないぞ?」



「力抜け、楽にしてやるから」



 そのまま私は殿下の言葉に屈せられた。





「立てるか? それとも続きを寝所で?」

 殿下は笑いながら言った。


 こういう時の殿下を刺激してはいけないことは既に学習済だった。


「御心の思うままに」


「先に帰ってろ。宣に後を任せてくる」


 そう言って何事もなかったかのような涼しい顔をして、部屋を颯爽と出て行った。

 部屋に残る伽羅の薫と色香に、私は既に身も心も染まってしまっていた。


 やはり、両親の話しをしたからかしら……

 あの後から殿下の様子は少しいつもと違っていた気がしていた。


 彼の中に流れる禁忌の起源。

 その全てをずっと一人で背負ってきた彼の想像を絶する苦難を、私は救えることができるのだろうか?






──「宣、後を頼む」

「分かりました」

背を向けて、部屋を去ろうとした主に向かって珍しく声をかけた。


「差し出がましいとは思いますが、そろそろお話されては如何ですか? 御一人で抱えこまず、もう十分でしょう? 御自身をもう少し御大事にされたら? 彼女なら受け入れてくれますよ」


「罪の烙印を背負うのは一人で良い」


そう言って彼は振り向くこともせず静かに去った。






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